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04. 駄目じゃないよ

2018/02/03 Sat 12:54

ツイッターでお世話になっている方との小話を書きたいなと思いまして。
お題にレッツトライアル。

書けそうなものから順不同に。随時書いていきます。


お題サイト:Kiss To Cry


午睡七題
 綺麗なものほど、目には見えないよ

01. 穏やかな空気を持つひと
02. 前髪を梳くしぐさ
03. 嬉しそうな顔が見たいから
04. 駄目じゃないよ
05. とりわけ大切な理由
06. 重ねてきた手
07. 一日分の報告会だね


*****



「ナルちゃん! おそーい!」

 店の扉を開けると、ガヤガヤと騒々しい客の声がいっぱいに広がっていた。
 しかしそれを物ともしない、よく通る声が自分に向けられる。

 うげ、と鳴瀬昌明は顔をしかめた。何人かの客がこちらを注視する。
 何だかな。注目を浴びるのが嫌なタチではないが、おっさん共の視線を受けるのはあまり気が進まない。居酒屋にしてはオシャレな部類なので、そこまでおっさん率が高いわけでもないのだが。
 店員とのやり取りもおざなりに、昌明は声の発生源へ足を向けた。

「仕事だったんだよ。少し遅れるって連絡してたろうが」
「もう始めちゃおうかと思ってたよー!」
「別にいいけど」
「ダメだよみんな揃ってなきゃ!」

 勢い良くというべきか、元気良くというべきか。
 そう言って隣の席をパシパシと叩いてきたのは、秋竹アンナ。女子大生だ。
 その席に素直に腰を下ろし、周りを見る。

「お仕事、お疲れ様です」

 目の前に座るのは、いかにもおっとりとした女性。楊織姫。

「私、こういうところは慣れてなくて……少し緊張しますね」

 織姫の隣に緊張した面持ちで座るのは、清堂皐月。中性的な顔立ちで確認したことはないが、やはり女だ。多分。何となく勘が告げている。

 共通点など何もなさそうに見える四人だが――実際、共通点らしいものは何もない。
 ただ、奇妙な事件に巻き込まれた――中には突っ込んできた――だけといえば、だけである。
 そんなメンバーだが、アンナが「飲み会しようよ!」と声を掛けて今に至る。
 どちらかというと苦い思い出、もしくはトラウマになる人がいてもおかしくない事件だったろうに、そのメンバーでわざわざ顔を合わせるとは。女とはたくましい。

「じゃあみんな揃ったし飲み物頼もっか! ナルちゃん何飲む?」
「乾杯ならとりあえずビールでいいわ」
「では私は……迷っちゃいますね」
「これはノミホウダイ、というやつなのでしょうか」
「そうだな。このメニューの中なら何でもいいぞ」
「いっぱいあるんですね!」

 早速ながらワイワイと賑やかである。
 ふむ、と早々に注文を決めた昌明は改めて顔ぶれを見た。
 なんというか。ハーレムである。
 しかもみんな、昌明の好みは一旦横に置くとしても客観的にレベルが高いだろう。周りの男共が昌明を不思議そうに――時に妬ましそうに――見てくるのが肌で分かる。気にしないけれど。むしろそういう視線であれば優越感で気持ちがいいものだけれど。
 別に誰一人として「自分の女」ではないが、優越感に浸れるものは浸っておく。その方が精神的にお得だ。

「お仕事、大変みたいですね」
「あ? ああ……」

 注文を店員に終えたところで、織姫にニコニコと話しかけられた。昌明は曖昧にうなずく。大変には違いない。医者はどうしたって多忙だ。
 先に用意された水で喉を潤しながら、昌明は肩をすくめた。

「まあでも、大変なのはみんな一緒だろ。皐月なんて朝とか早いんじゃねぇの」
「ええ、確かに朝は早いです。ですがそれも祈りのためですし! 苦ではありませんよ!」
「私は結構時間取れるよー!」
「お前は呑気にたい焼き食ってたくらいだしな」
「ぶー」
「美味しかったですね、あのたい焼き」
「はい。また食べたいくらい」
「……マジかよ……」

 あのたい焼きがコトの原因だったというのに。忘れているのか何なのか。すごい度胸である。
 一筋も二筋もいかない女性たちに、昌明は苦笑した。
 それを見たアンナが首を傾げる。

「ナルちゃん?」
「あ?」
「忙しいのに呼んじゃって、ダメだった?」
「あー……」

 一瞬言葉を濁せば、織姫と皐月も少しばかり申し訳なさそうな顔をしてこちらを見てくる。
 何だかな。
 ある意味とても贅沢なこの状況に、昌明は緩く首を振ってみせた。


駄目じゃないよ
 「野郎なら断ってたけど」「ナルちゃん、わかりやすいなー!」
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