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06. 重ねてきた手

2018/02/01 Thu 21:07

ツイッターでお世話になっている方との小話を書きたいなと思いまして。
お題にレッツトライアル。

書けそうなものから順不同に。随時書いていきます。


お題サイト:Kiss To Cry


午睡七題
 綺麗なものほど、目には見えないよ

01. 穏やかな空気を持つひと
02. 前髪を梳くしぐさ
03. 嬉しそうな顔が見たいから
04. 駄目じゃないよ
05. とりわけ大切な理由
06. 重ねてきた手
07. 一日分の報告会だね


*****


 永塩喜八郎の店に感じるのは、いわゆる「実家のような安心感」というものではないだろうか。

「永塩さん、ただいまー!」
「おうおかえり放蕩息子」

 扉を開けて声を掛けると、即座に返事が飛んできた。
 喜八郎は強面からか不愛想な印象も与えかねないが――実際のところは相当フランクの部類だし、ノリもいい。ついでに割と雑である。ただ、その雑な扱いを受けても不快にはならないので、秀としてはむしろ面白ポイントでしかない。
 今回も予想外の返しに思わず吹き出しながら、秀はカウンターの席を陣取った。

「お前、最近来る頻度が増えたな」
「あはー」
「忙しいのか?」
「まあ多少は。でもここに寄れる程度には楽になってきたんすよ。仮眠スペースで寝なくていいし」
「自分で作ったりはしねーのかよ」
「帰って一人で飯食うのやなんですもん」
「まあ金払ってくれりゃ何でもいいがなぁ」
「払います払います。日頃のお礼を込めて弾みましょっか?」
「いやそれはいいわ」

 言いながら水を渡される。一口飲むつもりが、気づけば一気に半分くらい飲み干していた。どうやら喉が渇いていたらしい。気づかなかった。

「で、何食う?」
「永塩さんのオススメでおねしゃーす」
「お前はまたテキトーな……」
「それが一番バランスも考えられてっかなぁって」
「バランスっつーか、食いたいもん作るぞ俺は」
「いやいや、オレは永塩とーさんを信じてますよ!」
「こんなデケェ息子はいねぇ」
「そんなつれねーこと言わないで。放蕩息子が帰ってきたんすよー」
「ハイハイ。とりあえず野菜から食え」
「うぃっす。あ、そうだ、差し入れでお酒持ってきたんで良かったら」
「でかした。ツマミも作るか」
「わーい」

 持ってきた日本酒を渡し、代わりに出されたサラダを受け取る。大根のサラダ。シャキシャキ歯ごたえが心地よい。美味し。

「あとはそうだな、あったかいもんにしろ。ほらこれ」
「おー。スープだ美味そう」
「そんな不規則な生活じゃ身体もたねーだろ。肉も食え肉」
「わー」
「そういや魚もいいのが入ったんだったわ」
「え」
「刺身だろ、それから昼に仕込んでた煮つけが」
「あの」
「それから」
「ちょ、ちょちょちょ。永塩さん!」
「あ?」
「さすがにそんなには食えないっすね!? オレの胃袋破裂しちゃう」
「まあ食えなかったら俺が食うしな」
「相変わらずっすね」
「うるせ。ほれ」

 ぶっきらぼうに茶碗が差し出された。ほかほかの白米だ。ツヤツヤしていて美味しそうだった。しかし量が多い。料理の種類は多いのに、こういうところはザ・男の料理という雰囲気が醸される。
 ともかく茶碗を受け取ろうとし――手が触れ合った。
 おぉ、と秀は奇妙に感心した声を上げる。

「永塩さんの手、なんか料理人! って感じっすね」
「そうか?」

 鍋を振るったり、包丁を握ったり、食器を洗ったり。考えただけでも大変だ。ずい分としっかりした手は、そういった経緯が刻み込まれているようで。
 楽しくやっているようなのも、だからといって手を抜いているわけではないのも、秀からすれば尊敬に値する。
 自分はまだ研修医という身なので尚のこと。
 それにきっと、彼は自分がとても苦労した、頑張った、という意識は薄いのだろう。当たり前のように続けてきたのだ。それが人によってはどんなに大変なことか。
 ふは、と笑いがこぼれる。秀はコップを突き出した。乾杯の意。

「永塩さん、かぁーっくいい」
「は? 水で酔ったか?」
「褒めたのにひどいっすよー!」
「脈絡がねぇんだよ」

 ぶっきらぼうに言いながらも、何やかんや、乾杯に付き合ってくれる。
 そういうところもやっぱり「実家のような安心感」なのかもしれないなぁ、と秀はケタケタと笑ってしまった。


重ねてきた手

 「美味いっすー」「俺も食うわ」「ほんとにフリーダムっすね」



(練習?を)重ねてきた手、ということで1つ……ええ、ええ。お題の趣旨とはきっとズレていますが。捻くれていますが。ええ。許して。
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