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ツイッターでお世話になっている方との小話を書きたいなと思いまして。
お題にレッツトライアル。

書けそうなものから順不同に。随時書いていきます。


お題サイト:Kiss To Cry


午睡七題
 綺麗なものほど、目には見えないよ

01. 穏やかな空気を持つひと
02. 前髪を梳くしぐさ
03. 嬉しそうな顔が見たいから
04. 駄目じゃないよ
05. とりわけ大切な理由
06. 重ねてきた手
07. 一日分の報告会だね


*****


 じゅぅ、と小気味の良い音がする。煙に混じって肉の焼ける匂いが立ちこめる。網の上に並ぶ肉はいい焼き目だ。野菜も彩りが良い。
 食欲のそそる様々な感覚に、ぐぅ、とお腹の虫が鳴いた。
 とたんに皿にいい感じの肉が放り込まれる。

「あっちゃん!! これもういいですよ!!!」
「お、マジっすね! いただきまーす」
「どうぞ召し上がれ!!」
「えーちゃんも食ってくださいよー? あ、飲み物足りないっすね。持ってくるっす」
「ありがとうございます! あっちゃん気が利きますね! じゃあオレはもっと肉焼いちゃいますね!! ちゃんと見張っておきますよ!! 焼きすぎると固くなっちゃうから、あ、ホルモンは隅でじっくり焼く方がいいらしいんでそれもやっちゃいますね!! あっちゃん他に焼いてほしいのありますかどんどんいきますよ!!!」
「待って、待ってください、ちゃんと食うから、とりあえず今焼けたやつから食いますから」
「本当ですか!!!」
「マジです大丈夫です」
「良かったですね!! よく寝てよく食べる子は育ちますよ!!」
「オレこれ以上育つんすか!? いやできるなら育ちたいですケド!」
「あっちゃんなら大丈夫ですよ!! 可能性は無限大ですよ!!」

 怒濤の会話だ。周りの客が心なしか目を丸くしている。

 ――現在、休日の夕方。
 秀は、ニコニコとトングを持って手際よく肉をひっくり返している佐津英哉と焼き肉屋に来ているのだった。
 何でもない会話から、気づけば焼き肉を食べることになっていた。今ではどうしてそうなったのか思い出すことも難しい。ノリだ。勢いだ。恐ろしい。楽しいから問題はないけれど。
 英哉こと「えーちゃん」おすすめの店は、実際、とても美味しい。
 いくつかおすすめはあるようだが、今回はバイキング形式だった。食べ放題だし飲み放題だ。がっつりである。
 飲み物を注いで戻ってくると、皿にはこんもりと肉と野菜が乗っていた。案外バランスがいい。こんもりすぎることを除けば。

「ぶは、ちょ、多いんすケド!」
「あっちゃんお帰りなさい!! 焦げちゃいそうだったので取っておきましたよ!! 大丈夫ですオレはあっちゃんの胃袋を信じてますからね!!」
「オレそこまで強くねーっすよ!?」
「残すならオレが食べるから大丈夫ですよ!!!」
「頼もしい!」

 ケタケタと笑いながら席に着く。皿に盛られたカルビを一口頬張ると、タレによく絡んだ肉と脂が溶け合う感触。せっかくなので味が消える前に白米も一口。タレと米の甘みが肉の脂っこさを打ち消してさらに箸が進む。美味い。
 英哉も美味しそうに頬張って食べている。

 英哉は、非常に気の良い、元気な青年だった。
 気さくでフレンドリー。いつでも、何に対しても裏表が感じられないほど真っ直ぐな性根。勢いが強く声が大きすぎるのが時と場所によっては玉にきずかもしれないが――それだって元気な証拠だ。元気は良い。大人になっても元気でいられるのは、案外、難しい。
 そんなわけで、秀は彼に高い好感を持っていた。秀も良く言えば賑やか、悪く言えばうるさい・騒々しいと言われるタイプの人間なので、親近感とも言える。
 まあ……。

「あっちゃん! 次は何を食べましょうか! ここはですね裏メニューがありまして、キムチとかも実はかなり凝ってるものがあるんですよ! お店の人があまり教えられない内緒のメニューだって言ってたんですけどね! これは是非あっちゃんにも食べてほしいと思いまして!」
「えーちゃん、えーちゃん。秘密の裏メニューが現在進行形でスゲー勢いでバレそうっす」
「え!? それは困りましたね!?」
「お店の人もこっち見てますし」
「でもみんなで食べたらもっと美味しいですよ!! 幸せですね!!」
「ぶは、ふ……っ、確かに。そりゃそうっすね」

 素っ頓狂だが彼らしい言葉に思わず吹き出す。本当に明るい。彼とのやり取りで何度秀の腹筋は打撃を受けただろうか。
 ――とはいえ、だ。
 秀はふと英哉を見る。彼は美味しそうに牛タンを頬張っているところだ。意外と肉厚で美味しそうな牛タンである。

 たまたま波長が合うだけかもしれないが、秀が彼から感じるのは勢いだけではなかった。
 彼には時折、驚くほど優しい空気を感じることがある。
 特に考えているわけではないのかもしれない。ただ肌で感じているだけ、なのかもしれない。
 もっと言うなら、きっと彼が【そうしたいからそうしているだけ】なのかもしれない。
 それでも。

「あっちゃん! 美味しいですか!」
「チョー美味いっす。美味いし楽しいし、幸せ」
「それは良かったです!!!」

 何だかポカポカするような。フワフワするような。そんな気持ちにさせられるから。
 秀はそんな彼の温かいところに救われるし、羨ましいと思うのだ。


穏やかな空気を持つ人
 まるでお日さまのような

「お客様、申し訳ありませんがもう少しだけお静かにしていただけると……」
「すいません!」
「すいません!!!!」
「えーちゃん! えーちゃんもう少し! もう少し下げて!」
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