FC2ブログ
ツイッターでお世話になっている方との小話を書きたいなと思いまして。
お題にレッツトライアル。

書けそうなものから順不同に。随時書いていきます。


お題サイト:Kiss To Cry


午睡七題
 綺麗なものほど、目には見えないよ

01. 穏やかな空気を持つひと
02. 前髪を梳くしぐさ
03. 嬉しそうな顔が見たいから
04. 駄目じゃないよ
05. とりわけ大切な理由
06. 重ねてきた手
07. 一日分の報告会だね


*****


 天気は上々。眩しすぎず、青空も見える。気温も穏やか。夜になれば多少は肌寒いかもしれないが、今は上着がなくても問題なさそうだ。
 そんな絶好のお出かけ日和の中。

「詩麻さん、あちらから回りましょう」
「いいですね。並びましょうか」

 おっとりした雰囲気を持つ女性二人が、キャッキャと楽しげに話している。空気が華やかだ。そして彼女たちの目線の先には、ジェットコースターやお化け屋敷などがひしめき合っている。
 つまりは遊園地の中だった。
 家族や恋人たちで溢れる中、贔屓目に見てもあそこは一際花が舞っている。

「いいっすなぁー」

 思い切り和みまくりながら、秀はニコニコとひとりごちた。
 そうだな、と隣から声が上がる。

「織姫も楽しそうで何よりだ」

 デレデレな自分に反して凛々しく見守っているのは、楊壮。
 秀の友人で、詩麻と楽しげに話している女性――楊織姫の兄だ。
 今回は有馬兄妹と楊兄妹の四人で遊園地に来たのだが……。

「壮、今日は服装ちげーのな?」
「む」
「気合い入りまくり? みたいな?」
「そういうわけではないんだが……」

 壮が苦笑し、自身の格好を見下ろす。
 性格も古風なところがある彼は、普段は和服、着物のようなものを身に纏うことが多い。それもデザイン性に富んでいて秀は感心するのだが――今日はとてもラフだ。
 ラフ、といってもよく見れば何やら細かいところが凝っている。きれいめコーデというやつだろうか。一見見過ごしてしまいそうだが、実はめちゃくちゃ練られているに違いない。
 普段の和装も似合っているが、新鮮だった。驚くほど綺麗な顔をしている彼も、こうして見ると同い年の青年なのだなと気づく。
 ――とはいえ、簡単にデニムシャツな秀としてはこれ以上考察してもよくわからない。
 潔く判断し、会話に意識を戻す。

「まあ、遊園地にいつもの服じゃ大変だもんなぁ」
「そうなのか?」
「あり? 壮、遊園地は初体験?」
「なかなか機会がなくてな」
「相変わらず世俗から離れてんね」

 うはは、と思わず笑ってしまう。
 田舎から出てきたらしい侍スピリットに溢れた彼は、コンビニやファーストフード、ファミレス、ゲーセン……そういった俗世間に疎い傾向があった。まあ、教え甲斐があるというものだ。いちいち反応が面白いし。

「でもじゃあ、それで服を変えたワケじゃねーんだ?」
「これは……、織姫が用意したもので……」
「ははあ」

 少しだけ気まずそうに、もしくは照れるように目をそらした壮に納得の声が上がる。
 なるほど。
 妹に弱いのは、どこも同じらしい。
 なるほどなるほど。気持ちはわかる。とてもわかる。わかりみが深い。

「兄さん、どうしました?」
「早く並びましょう!」

 楽しげに声を掛けてきた妹たち。
 「おー!」と元気に返し、秀は壮の手を引いた。いきなりでつんのめりそうになった壮だが、きちんと持ちこたえている辺りはさすがだ。
 顔を上げた壮に思い切り笑顔を向けてやる。

「妹ちゃんたちが待ってんぜ! 楽しもーぜ!」
「妹たちよりシュウの方がはしゃいでそうだな」
「楽しんだ者勝ちっすよー。それにオレらも楽しんだ方が、妹ちゃんたちも喜ぶぜ?」
「……なるほど。それもそうだ」

 あまり表情が動かない彼も、妹のことになると、存外やわらかい。
 そうして二人は妹たちの元へ駆け出した。


嬉しそうな顔が見たいから
 お兄ちゃんたちは、頑張っちゃうんです
スポンサーサイト
TRPG | コメント(0) | トラックバック(0)
コメント

管理者のみに表示