小ネタ2

再びのフォロワさんとの盛り上がり小ネタをぽい。
やはり腐向け注意。
というか完全身内向けなのでなので。

なんだか掃き溜め場になっていますね!


*****


 いつから、どこから、だったのか。
 それはもう押し込めた気持ちに追いやられて、朧気にしか覚えていない。
 最初は、放っておけなかっただけだったように思う。常に警戒してピリピリしている子猫のようなどと考えていた。
 それはあまりに痛々しくて、しかし、それをどうにかしてやる手段を持ち合わせているわけでもなかったので――ただ、放っておけなくて、時に嫌がられても話しかけて距離を詰めて、それで。
 それだけで良かったはずなのに。
 どこから間違えたのか。最初から間違っていたのか。気づけば、詰めた距離の先に重い重い扉が待ち受けていた。
 友達と、それ以上の境界。
 秀は悟る。
 その扉を開けてくぐることは、許されない。踏み越えてしまえば、もう、戻れない。
 だから、目を背けた。扉に背を向け、座り込んだ。決してそれ以上先へ行かないように。行きたいとすら、思わないように。いっそそのまま、朽ちて消えてしまうのを待つように。
 そうやって、秀は自身に芽生えた気持ちに強く強く蓋をした。

 ――それなのに。


「うそ、だ」

 目の前で龍星が発した言葉に、考えるより先に言葉がこぼれた。
 空っぽな言葉を返された龍星は、いつものじっとした眼差しのまま、わずかに眉間にシワを寄せる。少しだけ不機嫌そうに見えた。ジトリとしているのはいつものことだけれど。

「嘘じゃありませんよ。……まあ、恋愛的な意味ですから、嘘だと思いたければそれでいいですけど……」

 彼の綺麗に整った部屋の中、彼はこちらの反応を見逃すまいと視線を送り続けてくる。
 目の前の彼が口にしたのは、紛れもない告白、だった。それも自分に向けられた。

 秀は混乱する。そんなまさか。あるはずがない。ありえない。
 だって、そんなのは、彼が自分を好きだなんて、そんな――そんな自分に都合の良すぎることが起こるはずがないではないか。

 黙りこくる自分に、龍星がもう一度口を開く。どこか言い聞かせるように。
 プライドの高い彼には珍しい、深い心の内を。

 そして、





「……あれ」

 ふいに背中の重みがぐっと増えて、秀ははたと声を上げた。読んでいた本を傍に置いて、ぎこちなく振り返る。振り返ると同時に背中にいた重み――龍星がもたれかかってきたので、慌てて受け止めた。

「龍星? ……寝てる?」

 先ほどまで背中合わせで六法全書を読んでいた彼が、いつの間にか寝落ちたらしい。スゥスゥと穏やかな寝息が聞こえてくる。
 珍しい。普段、彼はいつも自分より遅く寝て早く起きる。確かに疲れが溜まってきていたようだけれど。

(……少しはリラックスしてもらえるようになったんかなー)

 もしそうなら嬉しいのに。
 勝手な想像で頬を緩め、秀はよいしょと立ち上がった。一旦寝室に向かい、枕とタオルケットを二つずつ持ってくる。
 本当はベッドまで運べればいいのだが――起きている彼を持ち上げることはできるだろうが――寝ている人間をこの体勢から持ち上げてベッドまで運ぶのは、さすがに骨が折れる。

(まあ、このカーペット、スゲー寝心地いいし)

 さすが龍星が選んだだけあるというべきか。
 そう適当に言い訳し、秀は彼に枕とタオルケットを整えてやった。ついでに自分も寝転がる。
 ひょいと顔を向ければ、無防備な龍星の寝顔。


 ――秀は、彼の手を取ってしまった。
 きっと、鍵をかけたまま開けてはいけなかったのに。扉を開け、その向こうへ踏み出しては、いけなかったのに。
 せめて。むしろ。開けた先で待っていてくれた彼の手を、引き戻してあげなければいけなかったのに……。
 ただ、自分が欲しくて、差し出されたものがとても愛おしくて――我慢できずに、突き進んでしまった。


「……ごめんなぁー」

 寝ている彼の髪を、くしゃりと撫でる。
 ふわふわとした彼の猫っ毛が秀は好きだった。それがこんなにもすぐ近くにある。今まで触れられなかったものが、今のおかげで、こんなにも。
 そんなことに満足してしまう自分は、バカだろうか。
 この先きっと、後悔することはたくさんあるのに。
 それでも、今この瞬間が、とても愛おしくて、手放しがたいだなんて。

「……好きだぜ。好き。大好き」

 寝ているのをいいことにそっと囁き、秀はそのまま目を閉じた。
 ――明日もまだ、この幸せが続きますように。
 願わくば、できるだけ長く、長く、ずっと。


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