そして何も始まらない

お友達の陽雨さんとお話していて……とても訳の分からないものができたので、ちょっと、殴り書きました。
メモとして置いておきます。
本当に意味は分からないし、中身もありません。あしからず。




*****

 ガサリと物音が聞こえ、銀木優はとっさに身構えた。
 聞こえたのは台所の方だった。ビニール袋がこすれたような音だった気がする。
 掃除はきっちりする性分だ。だから虫や、ましてやネズミのようなものがいるとは思えない――思いたくない。
 だが、確かに自然では発生しないような物音が聞こえたのは事実。
 優は眉を寄せ、何となく音を立てないようにこっそりと近づき――。

 ひょっこりと、何かが出てきた。
 手のひらサイズの、人の形をした、まるでマスコットのような――。

「す……秀……!?」

 ソレは自分の友人の姿にそっくりに見えて、優は動揺する。
 警戒していたのも忘れて思わず駆け寄った。

「え、秀どうしたんですか、そんなちっちゃくなっちゃってっ……あれ、でも少し違う……?」

 人が縮んだにしては、随分とデフォルメされた姿だった。それこそマスコットと呼ぶのにふさわしい。丸々、くりくりとしたフォルムは人を和ませそうだ。
 ソレはきょろきょろと周りを見た後、優に視線を向けた。
 ぱちくり。
 瞬き、あんぐりと口が開き、そして、

「おっきい優ちゃんだヨォ!?」

 妙に甲高い、そして訛りともやや違う独特なアクセントで絶叫を上げた。


***


「え、た、確かに私は優ですけど……」
「おっきい優ちゃん? ちったい優ちゃんはぁ?」
「え?」
「ちったい優ちゃんどこぉー?」
「え? え?」

 不可思議な生き物から発せられる言葉に、優は再び混乱する。
 ソレは何度も「優ちゃぁん!」と、もはやそれが鳴き声かのように続けていた。少し必死そうだ。はぐれたのだろうか。しかし「ちったい優ちゃん」とは何なのか。

「あの……秀?」
「しゅー君はねー、しゅー君だよー!」
「しゅー君? それがお名前ですか?」
「しゅー君だよぉー!」
「……」

 会話がひたすら怪しい。
 しかし全く意志疎通ができないわけでもないらしい。

 優はそっとソレ――しゅー君とやらを持ち上げた。
 大きさに見合ってとても軽い。触感はむにむにしている。

「ぐぎぇー」
「あ、すみません」

 奇妙な悲鳴を上げられ、優は慌てて力を緩めた。
 ――見れば見るほど、デフォルメされた友人に似ている。確かにそのままではないのだけれど。
 もしこれが同一人物だったなら……いや、やめよう。考えるだけで頭痛がする。

「しゅー君は一体どこから……」
「しゅー君!」

 ふいに、自分とは違う者の声が響いた。

「しゅー君ダメだヨォッ! ちったい優ちゃんはここだヨォ!」
「ちったい優ちゃんだぁー!」
「ええ!?」

 やはり独特のアクセントでキンキンと叫んでいるのは、しゅー君と同じようなフォルムの、しかしどこか自分に似た生き物。
 アホ毛と言われるものまで似ている。何だこれは。

「あ、あなたがちったい優ちゃん? ですか……?」
「ちったい優ちゃんはぁ、ちったい優ちゃんだヨォッ!」

 やはり頭が痛くなりそうな応酬だった。

「ちったい優ちゃんー!」
「あ、こら、ちょっと」

 手の中にいたしゅー君がじたばたと暴れ出したので、優は慌てて押さえ込んだ。この高さから落ちたらいくら何でもひとたまりもないだろう。
 落ち着かせ、改めてちったい優ちゃんの横に置いてやる。するとしゅー君は「ちったい優ちゃんだねェ!」とテンション高く――常に高い気がするが――飛びついた。

「しゅー君! この部屋、いい匂いがするヨォッ!」
「するねェ!」
「え?」
「この匂いはぁ」
「においはぁー?」
「パンケェェェェェェェキ」
「!?」

 突如叫んだちったい優ちゃんが、しゅー君を置き去りにしてテーブルの上を突っ走る。
 彼女の目先は、皿に乗ったパンケーキ。
 優の遅めのお昼ご飯だった。材料が余っていたのと賞味期限が切れそうだったので作ったやつだ。
 ちったい優ちゃんの動きはめちゃくちゃ素早かったが、食べ物に対する執念では優も負けていない。
 とっさに彼女をつまみ上げた。

「離してヨォォォォォ!」
「ちったい優ちゃんー!」
「ええと……」

 優は困惑する。何だこれ。何だこの状況。

「……パンケーキ、お好きなのですか?」
「好きだヨォッ! ご飯も好きだヨォッ」
「しゅー君もねェッ、好きだよぉー!」
「……」

 優につまみ上げられたままじたばた暴れるちったい優ちゃん、それを助けようとしているのか精一杯腕を伸ばしているしゅー君。ただし全く届く気配はない。
 優はしばし考え――考えようとし――結果的に全く何も現状は変わらなかったので、とりあえず、彼女たちのパンケーキも焼いてやることにした。
 まずはお腹を満たしてから考えることにしよう。そうしよう。


そして何も始まらない(タイトル)


******



なんだこれは。
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