がまん、しないで下さい

なかなかどうして浮いては沈み、浮いては沈み。
それでも周りに支えられながら今日もなんとか生きております。
コメントや拍手をくださっている方、本当にどうもありがとうございます。
本当に本当に。
そんな人たちのためにも、きちんと元気になって大暴れしたいものでございます。

そんなわけでこんなわけで、今日もお題をば。


お題:きみがため

き 切りとった秘密
み 見つけてあげられた
が がまん、しないで下さい
た たくさんの最後
め 珍しいこともあるものだ


お題配布サイト:Kiss To Cry


今回はいまだに練っている途中で書けていない2章が前提となっています。
こいつぁひでぇや
我ながら早く書けよと。全くもう。

そんな不親切すぎる本文は追記から~。



*****


 カランと目の前で扉が音を立て、咲坂凛花は顔を上げた。
 雑多な印象を与える店の奥から女性が出てくる。何か購入したのだろうか、やや大きめの袋を胸の高さで抱えていた。
 通り道を塞がないよう、凛花は慌てて端によけた。店から出てきた彼女は特に気にした様子もなく通り過ぎていく。
 ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐった。

(お客さん……?)

 目の前の建物は、凛花のアルバイト先でもある骨董屋だ。
 本格的な営業をしているわけではないのか、そこまで客数は多くない。
 しかし何かとやることはあるようで、凛花の先輩になる有馬秀なんかはしばしば「人使い荒いんすよほんと」とぼやいている。
 彼のぼやきはあまり意味のあるものではなく、深刻な気配どころか、いっそ楽しそうにさえ聞こえるのだが。

 ともかくそんな店なので、客がいたことが何となく驚きだった。
 気を引かれながらも、凛花は改めて店の中へ進んでいく。
 普段は穏やかな香(こう)が漂う店内だが、先ほどの女性のものだろうか、やけに甘く濃厚な匂いが満ちていた。

「香水かな……、……!」

 独りごちた凛花は、ハッとした。

「秀さん!」
「うん? 凛花ちゃんお疲れー」
「あのっ」

 呼ばれた秀が、棚の奥からひょっこり顔を出してきた。商品の整理でもしていたのだろう、手にはいくつかの物体――凛花にはガラクタにしか見えない――が抱えられている。
 思わず凛花は駆け寄った。

「えっと……大丈夫ですかっ?」
「へ?」
「いえ、その……匂いが」
「ああ」

 不思議そうに瞬いた彼は、合点がいったというようにヘラリと笑う。

「さっきまでお客さんいてさ。その人の香水がケッコー強くて……ごめんな、今換気しようとしてたとこだから」
「そうじゃなくて。いえ、私はいいんですけど。でも秀さん……」
「オレ?」
「……苦手でしょう?」

 ――彼は、ある特定の匂いを受け付けないという。
 その匂いは、厳密には違うものの、百合の花と酷似している。
 今充満している香水も、百合をイメージしたもののようで、ひどく甘ったるい。
 だから凛花は気になったのだが……。

 言葉に悩み、結局ストレートに言うしかなかった凛花に、秀はもう一度パチリと瞬いた。

「大丈夫っすよー。アレそのものじゃねーんだしさ? そんなんいちいち気にしてらんねーって」
「でも……」
「何々? 凛花ちゃん、心配してくれちゃった?」
「そりゃしますよっ」
「え」
「あんな倒れ方されたら誰だって心配しますからね」
「あ、あはー……その節はどうもご迷惑を……」

 痛いところを突かれたのだろう、秀が誤魔化すように笑みを取り繕う。
 はあ、と凛花は大きくため息をついた。

(……この人、変なところで見栄っ張りなんだよな……)

 彼は普段、自分を下に見せることに何ら抵抗がないどころか、むしろ積極的に下がりにいくことも多い。だというのに、大事なところでは譲らない。その境界線は未だ凛花には分からないところだ。

「……大丈夫なら、いいんです」
「うんうん、なんかごめんな?」
「とりあえず私も店番に入るんで……あ、そうだ、これ」
「うん?」
「調理実習で作ったクッキーなんですけど……あげる人もいないので、もし良かったらみんなにどうかなって」
「へー! スゲーじゃん!」
「別に無理に食べなくてもいいんですよ?」
「え、何で。食う食う、スゲー食うよオレ」

 あははと笑って受け取ろうとした秀が――ふいに手を引っ込めた。

「……秀さん?」
「あっは、悪い。オレ、今手が汚れてるんだったわ。そっちのテーブルに置いといてもらっていーっすかー?」
「秀さん」
「ちょ、凛花ちゃんも汚れるから。待って離しいたたたた凛花ちゃんギブギブ手がもげちゃう待ってタンマタンマ」

 慌てた秀の言葉が悲鳴に変わっていく。しかし凛花は離さなかった。
 じとりと睨む。
 ひくりと彼の表情がひきつる。

 はぁぁ、ともう一度ため息。
 凛花はおもむろにお菓子の袋を開けた。クッキーの甘い匂いが広がってくる。
 それを一つつかみ、

「凛花ちゃ、むぐ!?」

 秀の口へ突っ込んだ。

「……、……、えっと」
「紅茶のクッキーです。どうですか」
「あ、ハイ。美味しいっす」
「そうですか」

 淡々と返しながら、凛花は彼を奥へと押し込んでいく。
 ちなみに奥の方は居住スペースも兼ねている。店主である晃太郎の出入りは少ないため、ほぼ妖怪の入り浸りスペースとなっているが。

「とりあえず、私は換気してきますので。秀さんは手を洗ってそれを食べててください」
「お、おう?」
「別に秀さんのためじゃないです。お客さんだって強い匂いにはビックリするでしょ?」
「まあ、そうな……?」
「食べ終わったらお仕事も再開しましょう」
「食べ終わったらって」
「……ちゃんと味わってくださいね」
「……」
「……黙らないでくださいよ!?」

 たまらず叫んだ凛花に――

「ふは」

 思わず、といったように秀が吹き出した。クツクツと笑いを噛み殺そうとしているようだが、結局堪えきれずにめちゃくちゃ肩が震えている。

「うは、ふははは、ぶふ……ぶくくくっ」
「笑いすぎですからね!?」
「や、ごめ……っ」

 彼のツボは浅い。
 浅すぎてどこに笑う要素があったのか、凛花には分からない。

「オッケオッケ、分かった、分かりました。ありがたくいただきまっす」
「……はい」

 涙を拭った秀が――本当に笑いすぎである――受け取った袋をかさりと揺らす。
 わずかに広げて覗き込み、小さく息をついた。

「あは、元気出そうないい匂いっすわ」
「残したら承知しませんからね」
「はいよー」

 軽すぎる返事と共に、彼は大人しく奥へ消えていく。
 それを見送り、凛花は両腰に手を当てた。
 彼の微かに震えた手を思い返し――何度目かの溜息。

(……ほんっと、素直じゃない)

 それから踵を返し、小走りで窓を開けに向かうのだった。


がまん、しないで下さい
(そう言ったところで効果なんて)


*****


素直じゃないのは、お互い様なんですけどね。
でもまあ、より素直じゃないのは、有馬君の方かなあとは思います。

つい、女の子の方を強くしてしまう傾向があります。
年下の強い女の子がたくましく支えてくれるのって、いいなぁ、と個人的に思うのですね。
可愛くてかっこいいなぁって。

ただまあ、いつかどこかで、その内、かっこいい有馬君を書いてあげたい気持ちもあるんですよ。
年上の余裕というかね。包容力というかね。
どうしても不安定なところが多い彼ですが、やるときゃやるんですよ。多分。きっと。
実際はキャパシティも小さめの有馬君ですが、でもまあ……やるときゃやるんですよ……やってほしいんですよ……。
意地を見せてほしいんですよね。うん。
カッコいい有馬君……課題だなぁ……(遠い目)

でもやっぱり、最終的な力関係は凛花ちゃん>有馬君かもしれませんね。
凛花ちゃんも色々と経験値が足りないので振り回されることも多いですが、彼女にはイケメンに育ってほしいという親心。
それを表現するためにも、執筆……せねばな……。

ここまで読んでくださった方は、ありがとうございました。
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