切りとった秘密

2017/03/05 Sun 21:28

こんばんは。あずさです。
めこめこにヘコたれながらも、ふいに浮上したりして、何とか生きながらえている日々ですw
そんなぼへ~っとした人生ですが、ちょいとお題をば。
いつものごとく、のんびりまったり消化していこうと思います。
一応、妖怪ネットワークどっとあや縛りで。

……うん。本編書けよっていう話なんですけどね。
それは重々分かっているんですけどね。

生きていくためにはこういうのも必要なんです……(?)



お題:きみがため

き 切りとった秘密
み 見つけてあげられた
が がまん、しないで下さい
た たくさんの最後
め 珍しいこともあるものだ


お題配布サイト:Kiss To Cry


本文は追記から。

全然関係ないんですけど、児童対象向けに倭鏡伝をリメイク……リメイク??したい欲求に駆られています。
全部じゃなくて、一話というか、読み切りというか……。
それは冬までにできるといいな。



*****


 叔父の晃太郎とは昔から気が合った。重ねた会話の数だけならば、きっと実の父よりも多いだろう。父が無口だからというのを差し引いても――晃太郎は、気さくで接しやすい大人だった。
 晃太郎と秀を繋いでいたのは、やはりと言うべきか、妖怪だ。
 晃太郎は妖怪を見ることはできないが、秀の祖父から話を聞いた彼はことさら妖怪に憧れを抱いたらしい。非科学的だと聞き流していた父に比べて、随分と柔軟な態度だった。
 だから、祖父と同じく妖怪を見ることができる秀を、晃太郎はいたく気に入ってくれていた。

「秀」
「……おじさん?」
「秀、これから妖怪のことは秘密にしよう」

 祖父の見舞い帰り、晃太郎の家に着いた途端の一言だった。
 当時中学生だった秀は、とっさに理解ができなかった。しかし理解する前に肌で感じる空気というものはあったのだろう。秀はあえて茶化すように晃太郎の背を叩いた。

「何言ってんの、おじさん。オレ、別に誰にも言ってないケド」
「うん、そうだな」
「じいちゃんとおじさんだけだよ、そんな話すんの。あ、あと詩麻かな」
「うん」

 頷いた彼は、大きな手でぐりぐりと頭を撫でてきた。
 普段なら「やめろよー」なんてケラケラと笑って手をどけさせる秀だが、今ばかりはいくらかの違和感を覚えた。
 ――豪快なところのある彼にしては、随分と慎重な手つきだ。
 まるで、何かを堪えるような。

「これからは、おじさんと詩麻だけにしような」
「おじさんと、詩麻だけ?」
「そうだ」
「……じいちゃんは」

 晃太郎も、詩麻も、秀の味方だ。秀はそれを知っている。
 だけど、二人ははっきりと妖怪の姿を認識することができない。
 本当にありのままの世界を知っているのは、秀と祖父だけだった。
 その祖父に――秘密にする?

 晃太郎が静かに目を細める。
 頭を撫でる手に力が入ったのが分かった。

「おじいちゃんは……少し、疲れちゃったみたいでな。だからあまりお話するのは良くないと思うんだ。ちょっと休ませてやろう」
「……」
「何もずっとじゃない。それに俺はいくらでも聞くぞ。今まで以上にたくさん聞かせてくれ。な、秀、いいだろう?」

 わかるだろ、と。彼の手は必死に伝えてくる。訴えかけてくる。
 今時にしては珍しい柱時計の音が静かに響く。
 ――ふ、と秀は笑った。

「分かってるよ。やだなーおじさん! オレだってもう中学生だかんね?」
「……秀?」
「じいちゃんが疲れてんの、分かってるよ。しばらく入院ってのも。病人にごむたいを働いたりしないって」
「お前、ご無体がどういう意味か知ってるか?」
「あっは、わかんねーや」
「だろうな。ノリで適当なことばっか言いやがって」
「あでででおじさんこそ力任せにすんなって! いたいけなオレの頭が!」
「何だいたいけな頭って!」

 ギャハハと晃太郎が笑う。
 それはいつもの豪快な彼らしく、つられて秀も肩の力を抜いた。

 ――分かっている。
 祖父が疲れて――憑かれてしまったことも。
 妖怪が、見えなくなってしまったことも。
 秀は確かに、分かっていた。

「それに、うん、今までもだケド」
「ん?」
「オレ、秘密ってちょっと好き」
「へえ……?」
「なんかワクワクするじゃん? ほら、秘密基地とか?」
「そりゃまた随分と懐かしいな」

 あっさりとした秀の態度に晃太郎もどこかホッとしたようだった。
 話は他愛のないものへ移っていく。

 こうして、秀の秘密は狭い世界の中に閉じこめられた。
 そのことに窮屈さを覚えたことはない。
 妖怪はどう足掻いても自分には身近で、変わっていて、愉快で目まぐるしいのだ。
 奇妙な感傷に浸る暇などどこにあるだろうか。

 それが当たり前だった。
 それで問題などなかった。
 だけど。
 だから。


「その人から、離れて」

 ――見知らぬ少女がいきなりこの世界をこじ開けてきて、実のところ、秀は本当に驚いたのだ。
 そして確かに、世界が、広まったのだ。


切りとった秘密
(君はたやすくそれを破って)






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