01 バックミラーに映った影

息抜きがてら(息抜きばっかじゃねぇかというツッコミはご勘弁を)書いたものを放り投げておきます。
いつもの探索者メンバーでホラーに遭ったら。
夏なのでね。ね。

と思って書いてみたら全然ホラー要素がない事態になりました。
おかしい。


幻想系, 選択式
怪談のお題
お題配布サイト:霜花落処


*****

 運転席には伊吹宙、助手席には有馬秀、その後ろにはドナルド・ドゥードゥー。
 少々珍しい組み合わせの一行は、ちょっとしたドライブに出掛けていた。
 ドライブといっても完全な遊びではない。一応、ドゥードゥーの仕入れの手伝いという名目がある。
 何やら仕入先と手違いがあったようで、本来なら運んできてもらえるところを自分から取りに行かなければならなくなったらしい。しかしドゥードゥーには車がない。
 従業員のセバスチャンに頼むしかないだろうとドゥードゥーが話していたところ――それを聞いた宙が、その日は暇だからと自ら名乗り出たのだ。元々運転は好きなので苦でもなかった。
 それに便乗したのが秀だ。彼もたまたま休みだったらしく、「じゃあオレも」と手を挙げた。
 貴重な休みに人の手伝いだなんて奇特な奴だなと思ったが、本人がそれで良いというのなら良いのだろう。特に断る理由もない。
 そんなわけで三人は宙の自動車に乗り込んでいるというわけだった。

「いやー大漁でしたねー」
「お得意さまだからな」
「それにしても、魚か……」

 宙は少しばかり後悔していた。
 荷台にはクーラーボックスに敷き詰められた大漁の生魚。
 ――仕入れるものが何なのかもっとしっかり聞いておくべきだった。
 宙は生食が好きではないし、何より、車の中がそこはかとなく生臭い。後でしっかり消臭せねば。
 しかし、ドゥードゥーのやたらとホクホクした顔を見ているとあからさまに文句も言いにくい。
 はあ、と溜息を一つつきスピードを上げた。

「もうすっかり暗いなぁー?」
「秀は明日は仕事だろ。俺もだけど」
「あっは。そーそー。一日がスゲー早ぇ」
「今更だけど本当に良かったのかよ。もっとやることあったんじゃないのか?」
「んー? いや、これはこれで貴重な経験だったかなぁって。そういや、ドゥードゥーさんってみやたん先輩以外にもけっこー腰低いんすね?」
「そりゃあ、大事な取引先だからな」
「宮田にはもっと乱暴でいいのに」
「いやしかしそこは宮田さんだからな」
「ぶは」

 やいのやいのと会話が進む。
 基本的に秀が黙っていられない性質(タチ)なので会話が途切れることはほとんどない。
 普段ならそのテンションについていけないこともあるが、こと運転中においては、眠くならずに済むのでありがたかった。
 しかもどこで仕入れたのか、お得情報もひょっこりついてくるのである意味便利だ。
 色々聞きながら、へえ、今度また来てみようかななどと思う。

「あ、この辺だとさー。……、……あ」
「あ?」
「ん?」
「いや、何か言い掛けたろ」

 調子良く話していた秀が変な間を開けたので、宙はチラと視線を向けた。
 よそ見運転をするわけにもいかないのですぐに戻したが――何だろうか。
 ヘラリと笑ったその顔はいつもの秀と変わらないようにも見えるのだが――。

「オレ何か言ったっけ? やべ、忘れた」
「シュウ、認知症か?」
「ちょ、ドゥードゥーさんひでぇ! 嫌っすよ! ……あの、ところでドゥードゥーさん、隣」
「隣? 何だ?」
「……あーっと」

 視線をウロウロさせた秀が、軽く頬をかく。ヘラリとまた笑って。

「塩が」
「塩? あぁ、魚の保存用に振っておくつもりだった塩か?」
「こぼれてます」
「「えっ」」

 思わず宙も声を上げた。
 見れば、どこかの拍子で蓋が開いてしまったのだろう。
 白い粉が座席にまみれていた。

「……」
「ほ、本当だ。すまない宙」
「……もういいよ……」

 どうせ消臭もしなければならなかったのだ。
 悪気がないのは分かっているし、いっそ洗車に出してしまった方が何かと早い。

「あ、あはー。ごめんなお宙。オレもすぐ気づかなくて」
「いや、それはお前のせいじゃないけど」
「でもまあ、良かったよな」
「は?」

 意味が分からない。
 座席が塩まみれになってしまったことの何が良かったのか。
 しかし、秀はヘラヘラ笑って「音楽かけていい?」などと話を変えてしまう。
 結局よく分からないままその日はドライブを終えたのだが――。



「宙。車に幽霊がいたんですって?」
「は?」

 後日、幼なじみ兼恋人の銀木優がそんなことを言ってきた。
 彼女は秀と同じ病院で働いている。

「秀に聞きました」
「は? ちょっと待て。意味が……」
「この前のドライブでバックミラーに女性の影が映っていたそうですよ? ちょうどドゥードゥーさんの隣だったとか。塩がこぼれた途端にドロドロに溶けたんですごいビビったと言ってました」
「ちょ」

 待て。一体何の話なのか。

「よく考えたら近くに有名な心霊スポットがあったことを思い出したそうです。お宙にもドゥードゥーさんにも見えてないっぽいから泣きそうだったわー、なんて笑いながら言ってましたけど……宙?」
「……」
「顔色悪いですよ」
「……わざとだろ」
「そんなことないです」

 しれっと言ってのける優に、溜息を一つ。
 ――そういえば途中、秀の態度が変だったなと思い出した。

「……宮田みたいにその場でぎゃあぎゃあ言われるのも嫌だけど」
「はい?」
「中途半端な優しさってのも怖いもんだな……」

 せめて、優にも口止めしておいてくれれば良かったのに。
 そんな八つ当たり気味なことを思いつつ、宙は肩を落とした。


*****


後から知るのも結構心にキますよね。

ちなみに
お宙くん:見えない。チキン。
ドゥードゥーさん:見えない。チキン。
有馬くん:見える。ポーク:チキンが1:2くらい←

だから有馬くん自身、二人を気遣って言わなかったという面もあるにはあるんですが……
「いやそこにいますよねヤバイですよね」って言いたい気持ちもあったんですが、二人に「見えない」って言われて自分だけ見えているという事実を突きつけられるのも怖くて、言えなかったという一面もあったり。
ヘラヘラ笑ってるけど、結構内心では彼も荒ぶっていたと思います。
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