リプレイ風小説:DolL④

さて、時間が空いてしまいました、リプレイ風小説。
それでも何とか第三弾も最終回を迎えることができました。
よろしければお付き合いくださいませ。


今までの⇒
冬薔薇に捧ぐ:
(元シナリオ:あずま様
死の旋律   :
(元シナリオ:ますじ様
DolL      :、④(これ)
(元シナリオ:おぎーノ様


ではいつもの注意事項。

追記に放り込んでおきますが、リプレイということで、当然ながらシナリオのネタバレにもなります。
プレイヤーとしてこのシナリオでセッションするんだという方がいましたら、お気を付けください。

あくまでもなんちゃってです。
記録があるわけでもなく、うろ覚えなまま改変等々をふんだんに盛り込んでお送りいたします。

それでもよろしければ、どうぞ、お付き合いくださいませ。


*****


<DolL④>


 作り上げられた人形は、美しい顔で、しかし悲しげにその表情を曇らせていた。

「私ができてしまったということは、誰かが亡くなったということなんでしょう……? こんな犠牲の上の体なんていらない」

 沈痛なその声音に、有馬たちも戸惑ってしまう。人形を作ればどうなるのだろうとは思っていたが、まさか人形自身に否定されるとは思わなかった。

「……えっと」
「私はこのままこの部屋で朽ちるわ」
「でも」
「あの、……私たち、気づいたら急にこんなところに居て。あそこの人形にあなたを完成させるように言われたんです。……どうしたら私たちが帰れるか、知りませんか?」

 銀木が尋ねると、人形は瞳を伏せた。「知らない」なのか「言えない」なのかも分からない。
 何を言えばいいのか。どうすればいいのか。
 困惑していると、葛木がふと後ろを向いた。彼のぎょっとしたような反応に有馬たちも目を向ける。
 するとそこには――自動人形の姿。

「私のための入れ物をありがとう」
「……え」
「その子を寄越しなさい」

 それは、最初の頃よりも幾分と感情のこもった声だった。表情は何も変わらないまま迫ってくる人形は、その差のせいだろうか、余計に不気味に見える。
 そして。

「私の入れ物私の入れ物私の入れ物」

 突如壊れたようにうわ言を繰り返した自動人形が――襲いかかってきた!

「!?」
「ヤベェ!」
「何だ何だ!?」

 三人は慌てて走り出す。その際、椅子に座っていた少女の人形もとっさに掴んだ。自動人形は追ってくる。その恐ろしさにゾッとする。

「ば、バリケード! 葛木さんそこのテーブル持ってきて!」
「お、おう!?」
「とりあえず何かヤベェ……ぎゃああ!?」

 ドン、と激しく扉が叩かれる。その振動の大きさに思わず悲鳴を上げた。半端ではない。これではバリケードを作ったところで到底長く持ちそうにない。

「ど、どうする!?」
「明らかにヤバそうですよね」
「全くだ……とっとと渡しちまおうぜぇ?」
「……私を、壊して」

 抱えられたままの少女の人形が、静かに呟く。彼女は悲しそうだが、今の状況に動揺はないようだった。

「私を壊せば、きっと戻れるはず」
「……あなたは、それでいいんですか?」
「ええ」
「……」

 少女の人形の返事に淀みはない。しかし、それを聞いた銀木は微妙そうに表情を歪めた。
 ドン、と扉が大きく軋む。

「とりあえず渡すって選択肢はない、よな……? 明らかにヤバそうだもんな……!?」
「そうですね。この子を渡したからといって素直に帰してくれるとは思えません」
「じゃあどうすんだよ? あの人形を倒すってか?」
「めっちゃ扉壊しそうな勢いのあの人形をっすか!? できますかねそれ!?」
「……試すだけ試してみませんか? 無理そうなら最後の手段でこの子を壊す、ということでどうでしょう」

 テンパった有馬に対し、やはり銀木はどこか冷静だ。葛木はマジかよとでも言いたげだったが、その冷静さに有馬も少しだけ頭を冷やした。

「そう、だな……試しもしないのは流石に……」

 その瞬間、扉が壊れ、さらにバリケードもぶち破って自動人形が悠々と姿を見せてきた。有馬は顔をひきつらせる。――無理かもしれない。

「私の入れ物私の入れ物……」

 自動人形は相変わらずこちらの話を聞く気などないようだ。じり、と有馬たちは距離を取る。

「と、とりあえずどうにか……銀木さんはどーすんの!?」
「何か武器があればいいんですが……」
「武器……あっ、葛木さん!」
「お、おうっ!?」
「その服の下!」
「!?」

 ぎょっとした葛木が身を引くが、有馬は逃がさない。ニコニコと笑みを取り繕って彼と距離を詰める。

「あっれー!? もしかしてなんすケド、その膨らみ! 何か持ってません!?」
「え、あ、いや」
「持ってますよね!」
「お、おう……」

 有馬の勢いに気圧されたらしい葛木が、渋々服の下に潜ませていたものを取り出す。それはギラリと光る――。

「その、これはだな……」
「それ肉切り包丁ですよね!」
「お、おう……」
「こんなトコにいたから護身用ですよね! 分かる分かる! そして
良かった! それ貸してもらえますよね!」
「お、おう」
「あざぁーっす!」
「い、いいってことよ」

 押し切った。あえて詰問等はせず、ただ善意という圧力で押し切った。
 そのまま銀木に「じゃあこれ、銀木さんのな!」と手渡してやる。受け取った銀木が若干苦笑しているが、有馬は気にしないことにした。時にはごり押しだって大事だ。そしてその「時」はきっと今だ。
 銀木が包丁を構え、有馬はメスを取り出す。

「大丈夫か……!?」
「あ、ドゥードゥーさん!」

 そして隣の部屋から見ていたのであろう、ドゥードゥーも飛び込んできた。
 チラと目を配れば、ドアの向こうには和泉が待機している。
 ――確かに今なら、葛木も和泉を気にする余裕はないだろう。

「おい、誰だお前……!?」
「オレらの知り合いっすよ! お仲間お仲間!」
「は!?」
「数は多いに越したことないっしょ! ね!」
「あ、ああ……おわぁ!?」

 自動人形が葛木に襲いかかる。それを間一髪で避けた彼は慌ただしく体勢を整えた。

「あ、危ねえ……!」
「行きます! ――あっ」

 戸惑う葛木をよそに、銀木が突っ込む――が、不慣れな肉切り包丁だったせいだろうか。銀木は躓き、標的を大きく逸らした。

「いってぇ!」
「すいません」

 逸れた先にいたのは葛木だ。まさかの仲間内への攻撃である。当たったのが刃の部分ではなかったことは幸いだったのか。

「し、しっかりしろよなっ……!」
「はい」
「銀木さんマジ気をつけて……っと」

 横目でそんなやりとりを見ながら、取り出していたメスを投げつける。
 しかし、やはりメスでは殺傷力は低いらしい。当たりはしたものの、傷らしい傷もつけられなかった。

「やっぱ攻撃力足りねぇぇぇ」
「先生ドンマイです」
「どうすっかな……」
「オラァ!」

 悩む有馬の横を突っ走り、自動人形にドゥードゥーが叩きつけたのは――椅子?
 自動人形が少しばかり揺らぐ。
 有馬は顔をひきつらせた。なんという筋力の暴力か。彼が味方で良かった。

「……あっ、そうだ肉切り包丁! まだあったよな! 取ってくる!」
「気をつけてください」
「ウィッス!」

 難しい攻防が続く中、残っていた肉切り包丁の存在を思い出した有馬は慌てて駆け出した。
 包丁のところまで戻る途中は何事もなかった。平和なものだ。ひとまず両手に一本ずつ持ち駆け戻る。葛木はともかく、ドゥードゥーにも一本くらいあった方がいいかもしれない。

(って思ったケド……)

 戻ってきて、椅子で殴り合っているドゥードゥーを見て考えを改める。
 あまり必要がなさそうだ。これはこのまま自分でぶん投げよう。そうしよう。

「先生、おかえりなさい」
「ただいま。どんな感じ?」
「見たまんまですよ」
「なんかスゲー葛木さんばっか狙われてね?」
「日頃の行いでしょうか」

 散々なことを言い合いながら、有馬は改めて自動人形を見やった。葛木に殴りかかっている勢いや威力は相当なもので、やはり脅威的だ。
 しかし、人形自身にダメージも蓄積されているのだろう。大分ガタついているように見える。

「第一球!」

 言いながら、有馬も包丁を向かって投げる。バスケットボールとは重さも形も違うが――なんとか軌道は上手くいったようだった。衝撃で自動人形が大きく揺らぐ。
 良い子は真似してはダメだ。絶対に。誰に言うわけでもなく有馬は胸中で確認する。
 続いてドゥードゥー、葛木、銀木と攻撃を加え、自動人形の反撃を葛木が避け、そして――。
 有馬が思いきり残りの肉切り包丁を投げつけると、一拍置いて、自動人形の動きが止まった。

「……止ま、った?」
「倒したか!?」
「マジか……!?」
「……先生、たまにはカッコいいですね」
「あはー……銀木さん辛辣ぅ」

 そんな細々としたやりとりの中でも、自動人形は、動かない。
 ――どうやら本当に倒せたらしい。

 するといきなり建物全体が大きく揺れた。

「何だ!?」
「建物が……!」
「……世界が崩壊するわ。お願い、私を壊して」

 戸惑う自分たちにか細い声で答えたのは、少女の人形だった。
 有馬たちは顔を見合わせる。

「……って言われてもさ」
「すでに生きているというのなら、私は壊せませんよ」
「でも……」
「あー……なんつーんだろ。詳しいことは分かんないケド。ここで君が壊れたら、その犠牲? になった人も報われないっつーか、意味がなくなるんじゃねーかな」
「……」

 人形が黙り込む。そこには確かな迷いがあるようだった。
 それを見て取ったのだろう、銀木がそっと人形の前に屈み込む。

「生きたいと思うのは、そんなに悪いことでしょうか」
「え……」
「あなたは、生きていたくないんですか? 本当に? それがあなたの気持ちですか?」
「私は……」

 ぽつりと、人形は言葉を落とす。

「……生きていて、いいんでしょうか……」
「当たり前です」
「オレたちは誰も止めないぜ?」
「ドゥードゥーもそう思う」

 三者三様の反応に、しばらく考えている様子を見せた人形は――やがて、小さく表情を歪ませた。

「生きていてもいいというのであれば……」

 人形の瞼が伏せられる。力なく肩が震える。それは、まるで人間のような。 

「生きたい、です」

 それは、確かな少女の願い。
 その言葉を引き金に、揺れが一層激しくなった。世界が崩壊していく。視界が徐々に白くなっていく。
 と、黙っていた葛木が突然肉切り包丁を拾い走り出した。彼が向かった先には――揺れに耐えている和泉の姿!

「あっ!」

 気づいた銀木が葛木に手を伸ばすが、届かない。彼はどんどん足を速める。その顔に正気は見られない。

「――!」

 距離的に和泉と葛木の間にいた有馬はとっさに前に出た。手近に転がっていた椅子を手に取る。
 それを勢い良く――ぶん投げる!

 顔面に当たった葛木は、どうとその場に崩れ落ちた。ある意味、当たり所がすこぶる良かったらしい。もしくは自動人形との戦闘ダメージが残っていたか。
 とにかく彼はその場に倒れ――意識も綺麗に刈り取られたようだった。

「あ、危なかった……! 和泉ちゃん、大丈夫――」
「怖かった……!」

 ほうと息をつき、彼女の安否を確認しようと振り向くと、涙目の和泉が抱きついてきた。その細い肩は震えている。抱きつく腕にぎゅうぎゅうと力が込められる。

「シュウ嫌い」
「先生嫌いです」
「あっれぇ!?」

 そうして、世界は崩壊した。



***


 気がつくと、有馬たちはいつもの見慣れた場所にいた。どうやら寝落ちていたらしい。寝ぼけた頭でそんなことを思う。
 先ほどまでの出来事が夢だったのか、現実だったのか、それは誰にも分からない。あるのははっきり覚えているようでいて、どこか朧気な記憶だ。
 そしてこの先待っているのは、やはりいつもの日常なのだろう。
 ――それで、良いのだろう。





「お、いらっしゃい……」

 飽き飽きとした日常のワンシーンの最中(さなか)。
 喫茶店で仕込みをしていたドゥードゥーは、珍しくもやって来た客に目を向けた。

 それはどこか見覚えのある、優しげな少女の姿だった。





と、いうわけで、クトゥルフ神話TRPGリプレイ風小説、『DolL』でした!
KPを務めてくれたじますけ様、共にプレイしてくださった鷹路様、陽雨様、シナリオ提供者おぎーノ様、その他諸々に感謝です。
また、ここまでお付き合いくださった方がいましたらありがとうございました。
完結まで時間が空いてしまって申し訳なかった……なかなか同時にたくさんのことはできないですね。

本当はまだまだ他のセッションも小説化したい気持ちはあるのですが、次にやりたいこともあるので、ひとまずは休憩でしょうか。
皆様も良いクトゥルフライフを。

それでは!

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あずさ

Author:あずさ
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二つ名:囁(アビス)
あだ名:エゴイスティックスケコマシ
四字熟語:好色生活
(※二つ名メーカー、脳内メーカー等による結果)
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