リプレイ風小説:DolL③

さて、ぼちぼち続けているリプレイ風小説。
今回のものについても終わりが見えてきました。
一応次回で最後の予定。
よろしければお付き合いくださいませ。


今までの⇒
冬薔薇に捧ぐ:
(元シナリオ:あずま様
死の旋律   :
(元シナリオ:ますじ様
DolL      :、③(これ)
(元シナリオ:おぎーノ様


ではいつもの注意事項。

追記に放り込んでおきますが、リプレイということで、当然ながらシナリオのネタバレにもなります。
プレイヤーとしてこのシナリオでセッションするんだという方がいましたら、お気を付けください。

あくまでもなんちゃってです。
記録があるわけでもなく、うろ覚えなまま改変等々をふんだんに盛り込んでお送りいたします。

それでもよろしければ、どうぞ、お付き合いくださいませ。



<DolL③>

「嫌いって……嫌い? 地下が?」
「ドゥードゥーさん?」

 場違いといえば場違いな発言に、有馬と銀木は思わず呆気に取られた。しかし当のドゥードゥーは本気のようだ。その巨体を心なし縮ませて血の気を引かせている。

「地下は嫌な記憶しかない」
「えええぇ……じゃあ、外で待ってます……? つっても単独行動は控えたいよな」
「私だけで行ってきましょうか?」
「銀木さんはまたそうやって! 単独行動は控えたいって言ったばっかでしょ!」
「ですが、行かないと始まりませんし」
「銀木さんが行くならオレも行くってば。ただドゥードゥーさんと和泉ちゃんをどうするかが問題なワケで……」

 どうしてそう突っ走っていくのか。時々は深呼吸してほしい。そんな思いで苦笑した有馬は、改めてドゥードゥーと和泉の二人を見やった。

「和泉ちゃんの言ってた男が地下にいるなら、和泉ちゃんも外にいた方がいいんだろうケド……絶対そうとは言い切れないんだよな。オレらが地下に行ってる間に襲われても困るし……」
「それなら、ドゥードゥーさんと和泉ちゃんで待っていてもらえばいいんじゃないです?」
「……って言ってますケド、どうします、ドゥードゥーさん」
「……。……仕方ないから行くよ……」
「まあ、それが無難っすかね……」

 がっくりと肩を落とすドゥードゥーに小さく笑う。どうしたってこの得体の知れない世界で別行動をするのは危険が伴う。支障がないならまとまって行動したいところだ。
 その決断に和泉もホッとした様子を見せた。知らない男性と二人きりにされるのもまた不安だったのだろう。

「中には一列にならないと入れないみたいですね。順番はどうします?」
「ドゥードゥーは後ろで」
「デスヨネー。んんん、しゃーない。オレが先頭行くっすわ」
「私が行ってもいいんですよ」
「やめて! オレにも男としてのプライドがあんの!」
「えー」
「えー、じゃないってば。じゃあ、オレ、銀木さん、和泉ちゃん、ドゥードゥーさんの順な」
「仕方ないですね」
「……はい。お願いします」
「よし」

 少し不満そうな銀木、不安げながらもうなずく和泉、満足そうなドゥードゥー。そんな三人の了解も得て、有馬たちは恐る恐る地下へと足を向けた。


***


 地下は狭く、薄暗かった。しかし下りきったところでいくらか幅が広がる。湿っぽい空気がやたらと質量を持っているのか重苦しい。

「……ん?」

 先に階段を下りた有馬は、途中で鍵を見つけた。何の鍵だろうか。不思議に思いつつポケットに突っ込んでおく。背後から「どうしました?」と銀木に聞かれ、有馬はわずかに首を傾げた。「さあ……鍵みたいだケド。落とし物?」「私に聞かれても」「デスヨネ」なんて会話をしていると――。

「オーイ」

 奥から、男の声が聞こえた。目をこらしてみると、それは鉄格子の牢屋のようだ。中に人がいるらしい。遠目からはそれがどのような男かまでは分からない。だが、後ろで和泉が息を飲む音が聞こえた。銀木を挟んでいる有馬でも、彼女が震えていることが分かる。

「あいつ……! あいつよ、私を殺そうとしたのは……!」
「……マジかー……」
「いかにも、ですね」

 相手に聞こえないよう小声で話していると、さらに声は飛んでくる。

「オーイ。そこに誰かいるんだろ? 鍵を落としちまってよ。開けてくれねーか」

 先入観かもしれないが、そのダミ声は意味もなく浮ついていて、胡散臭さがにじみ出ているようだった。和泉とドゥードゥーには階段のすぐ傍で待っていてもらい、目配せし合った有馬と銀木が牢に近づく。

「遅かったじゃねーか。早く開けてくれよ」

 その男は大きく、異様な迫力があった。目はどこかくすんでいるのに、ギラついている。自分たちを見た男はニタァと笑みを深めてみせた。それは紛れもなく笑顔だというのに、不思議と不快感を煽る笑みだった。

「……奥に人形の足のようなものがあります。あと……誰か倒れてる……?」
「……生きてんの?」
「ここからでは分かりませんね……」
「……少なくとも開けなきゃ足は取れないか……」
「何ボソボソ話してんだぁ?」
「あ、イエイエ!」

 怪訝そうな男に、有馬はニヘラと笑ってみせた。考えるより先に口が開く。

「えっと、こんなトコでどうしたんすか? あ、お名前伺っても?」
「葛木ってんだけどよ。いきなり変な場所にいて、人形の手足をくっつけろとか言われたから探してたとこよ」
「わー、奇遇っすね! オレたちもなんすよー!」
「マジかよ」
「マジマジ。チョー怖くてビビっちまいましたわ! それを葛木さんは一人で探してたんですか? マジスゲー! パネー! なかなかできませんよ!」
「へへ、そうかぁ? まあ、修羅場くぐってっからなぁ」
「頼もしいっすねー!」
「へへへ、まあな」

 横で銀木が「うわあ」という顔をして見てくるが、有馬はそれに気づかなかったことにした。ゴマスリ上等である。機嫌を損ねて暴れられる方が怖い。

「あ、そうだお前、女見なかったか?」
「女の子っすか? どうっすかねー? どんな子なんです?」
「小さくて可愛い子でよ。人形のサイズにも丁度いいと思ってなぁ……そこで俺は考えたわけだ。そいつの手足をくっつけてやりゃぁいいってな。どうだ、天才だろ?」
「うわーなかなか考えつかないっすねー」
「で、見てねーのか?」
「うーん……オレたち、さっき来たばかりで! ちょっと分かんないっす」
「ふぅん……どこ行ったんだあいつ。なあ、とりあえずあんた、鍵見なかったか?」
「あ、えと、それっぽいのはさっき見つけましたケド……」
「ちなみにそこの人は誰なんです?」

 割って入った銀木が、葛木の横に倒れている人影に目を向ける。少しばかりぎょっとした表情の葛木は――銀木が喋るとは思わなかったのかもしれない――瞬き、「ああ」と低く答えた。

「知らない男だ。俺が来た時には死んでた」
「……そうですか」
「なあ、早く出してくれよ」
「あー……ハイ、ハイ。ちょっと待ってくださいねー」

 鍵を取り出す素振りを見せながら――有馬は後ろを振り返った。ドゥードゥーたちと目が合う。うなずいたドゥードゥーは、和泉を連れて階段を上がっていった。有馬も葛木も声が大きいためきちんと会話は聞こえていたらしい。おかげで和泉が葛木と鉢合うのはまずいだろうと察してもらえたようだ。
 牢を開けると、葛木がのそりと出てきた。その横を銀木が通り抜け、中に入っていく。その間、有馬はヘラリと笑って銀木を庇う位置についた。相手が大きいので銀木の行動は有馬の上から見えてしまうかもしれないが、目くらまし程度にはなるだろう。

「いやー、ほんと大変でしたね!」
「全くだぜ。でも助かった。これであとは女が見つかればなぁ」
「そんなに女の子を見つけたいんです?」
「まあ、そりゃほら、可愛かったからな?」
「おやー? もしかして葛木さんのタイプだったんですか?」
「まあ、へへ、悪くはねぇかなぁ」
「あはー。こんな状況でも大人の余裕! って感じっすねー。ほんとスゲーなぁ!」
「へへへ、分かってるじゃねーか」
「いやいやだってにじみ出てますよっ」
「へへへぇ、そうかぁ?」

 有馬のペラッペラな褒め言葉――自分でも実に中身がないなと思う――にも葛木は悪い気分がしないようだった。むしろどんどんにやけており、調子に乗っていると言っても良い。随分と単純のようだ。
 そうやって中身のない会話を紡いでいると、ふらりと銀木が戻ってきた。

「先生」
「あ、銀木さん。どう?」
「人形の左足、ゲットです」
「おお~」

 銀木の手には、確かに人形の足が握られている。それを怪訝そうに見咎めたのは、案の定と言うべきだろうか、葛木だ。

「人形の左足だぁ?」
「はい。牢の中に落ちてました」
「葛木さん、これで女の子の手足を使わなくても大丈夫みたいっすよ」
「……あぁ~、まあ、そうみたいだなぁ」

 若干もにょもにょと言葉尻を濁した葛木は、そのまま「で? お前たちも外に行くんだろ?」と地下の出口へ視線を向けた。有馬と銀木は揃ってうなずく。先に葛木を行かせ、有馬もその後に続こうとしたところ――くい、と服を引っ張られた。振り向けば、銀木が難しい表情をしてこちらを見上げている。

「銀木さん?」
「あそこで死んでいた人、お腹をえぐられていました。あと、手足のない女の子の写真を持っていましたよ」
「書斎っぽい部屋で見たような?」
「はい」
「……お父さんだったのかな」
「かもしれません」
「あ、オレからも一つ」
「はい?」
「あの男のお腹、妙に膨らんでるんだケドさ。包丁、隠し持ってる可能性が高いかも。気をつけてな」
「……とっとと倒した方が安全じゃありませんか? 油断できませんよ、アレ」
「どうかなぁ……下手に刺激すんのも怖いっつーか、オレで勝てるかも正直ビミョーだし……逆に油断させてドゥードゥーさんと一緒に組み伏す方が安全かも? なんて」
「……先生って平和主義ですよね」
「あはー」

 あまり褒められている気はしない。ヘタレだと言われてしまえばそれまでだ。しかしどうしたって力業になるとこちらが不利だった。葛木は体格からして自分たちよりずっと大きい。下手をするとドゥードゥーよりも大きいのではないか。

「オイ、何やってんだ」
「あ、はーい! 今行きます!」
「……」

 葛木に促され、有馬と銀木は足早に地下を出た。


***


 地下から地上に出るが、そこにドゥードゥーたちの姿はなかった。不自然にならないよう周囲に目を向けると、プレハブ小屋の方から隠れてこちらを覗いているのが分かる。どうやら上手く立ち回ってくれるつもりらしい。
 和泉のことはドゥードゥーに任せ、二人は葛木と共に、手足のない人形の元へ向かった。ここがどこで、何なのか、分からないことは多いが――分からないからこそ、できることを試してみるしかない。
 葛木と適当な会話を続けながら部屋に入り、銀木が作業台に先ほどの足を乗せる。これで全てが揃った。あとは裁縫してみるだけだ。

「……なあ? お前、さっき来たばかりって言ってなかったか?」
「あ、ハイ」
「何でもう全部揃ってんだ?」
「あはー。オレは訳分かんなくてウロウロしてましたケド、この子が全部見つけてくれてたみたいで! な!」
「……ええ、まあ。優秀ですから」
「ふーん」

 ヘラヘラと笑えば、さほど興味はなかったのか、葛木はあっさりと納得したようだった。有馬はホッと胸を撫で下ろす。

「じゃあ、私と先生で作業ですかね? 葛木さんは何してます?」
「あん? そうだな。することねーし、少しブラブラしてくるか」
「ええっ。やだなー葛木さん! オレらだけじゃ何かあったとき不安じゃないっすかー!」
「おう? そうか?」
「葛木さんにいてもらった方が安心っすよー! ねっ。だから一緒にいてくださいって!」
「うーん、まあ、そこまで言うなら?」
「あざーっす! さっすが葛木さん! 頼りになるぅ!」
「よせよ、へへへ」

 照れたのかはにかむ葛木。シュールである。だが、ともかくこれで和泉との鉢合わせフラグはへし折れた。
 そんなわけで、葛木は適当に部屋で座って待機、有馬と銀木で人形を直すことになった。二人とも縫合の経験はあるので比較的慣れたものだ。特に問題なくいきそうである。
 そうやって黙々と作業していると、ふいに奇妙な感覚に襲われた。まるで自分が自分でなくなるような。この人形が本当に生きているかのような。
 しかしそれはほんの一瞬のことで、気のせいだったのかもしれない。異常な環境へ長くいることで、疲労に襲われたのだろう。それよりも早く仕上げなければ、という思いに駆られ、有馬は再び手を動かす。
 と。

「……この人形、綺麗ですね……」
「……」
「このアンバランスさがまた……美しい……うつくしい……わんだふぉー」
「それ言うならビューティフルじゃね?」
「……あ、そうでした」
「……」
「……びゅーてぃふぉー……ビューティフォー……美しい……」

 有馬は作業に夢中になっていたため反応が遅れたが――先ほどのツッコミは半ば無意識だった――どうも銀木の様子がおかしい。一足先に縫合を終えた有馬は数度瞬いた。彼女の手は途中で止まっている。もう少しで終わりだというのに何とも中途半端だ。

「銀木さん?」
「おい、どうした嬢ちゃん」
「え?」

 端で見ていた葛木も不気味に思ったらしい。心配というよりは引いているような表情だが、彼は窺うように銀木の同行を見ている。
 一方、銀木はきょとんとした面持ちで首を傾げた。その様子はいつもの彼女だ。先ほどまでの異常な様子は消え失せている。

「え、じゃなくて。さっきからブツブツよ」
「え? 何か言ってました、私?」
「……銀木さん、大丈夫? 具合悪いとか頭痛いとかはねえ?」
「はあ……特には……。ちょっとぼんやりするかもしれませんが。あ、とりあえずこれ、終わらせちゃいますね」

 正気に戻ったらしい彼女に「無理はすんなよ」とだけ告げると、彼女はあっさりとうなずいた。そうして、今度こそ特に問題なく作業を終える。
 どうにかこうにか、そうやって少女の体を作り上げると――どうしたことだろう、その少女は、ゆっくりと瞼を持ち上げた。
 ぎょっとした自分たちに、静かに、確かに意識を見せた彼女は、その口を開く。
 意思を持って、空気を震わせる。

「……なぜ、生き返らせたの?」

 その声は、深い哀しみに満ちていた。


続く
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