お久しぶりになりますが、参加したセッションのなんちゃって小説。第二弾の続きです。
ようやく第二弾も完結です!

仕事で凹まない日はありません……。
もうやんなっちゃいますね。



冬薔薇に捧ぐ:
死の旋律   :、④(これ)


ではいつもの注意事項。

追記に放り込んでおきますが、リプレイということで、当然ながらシナリオのネタバレにもなります。
プレイヤーとしてこのシナリオでセッションするんだという方がいましたら、お気を付けください。

あくまでもなんちゃってです。
記録があるわけでもなく、うろ覚えなまま改変等々をふんだんに盛り込んでお送りいたします。

結構いろいろなところを端折り、改変で突き進んでしまいました。
少し申し訳ない気持ちもあり……自分の未熟さにぐぬぐぬする日々です。
頑張るしかないんですけど、ね!

とりあえず、ラストです! おー!



<死の旋律④>


 スポーツドリンクで喉の渇きを癒しながら、四人は机を囲んでいた。みんなには――有馬自身を含めてだが――疲労の色が見える。さらには脳内に訴えかけてくる音もどんどん大きく、激しくなっている。時間はあまり残されていない。その予感がますます疲労を色濃くし、憂鬱な気持ちとしてのしかかる。
 それでも馴染んだ味のスポーツドリンクは、喉だけでなく心も潤してくれるようで少しばかりホッとするのも確かだった。ありがたい。

「とりあえず楽譜と楽器を破壊しろ、というのがあったケドさ……なんか心当たりある?」
「あ……私、言わなかったんですけど……一階の楽屋で見つけた楽譜、あるじゃないですか」
「おう?」
「あれに触れたとき、変な幻覚みたいなものを見たんです。幻覚で見た相手はエリックだったのではないかと……。気のせいかもと思いましたが、心当たりがあるとすればあの楽譜ですね……」
「エリック? ってコンサートの?」
「狂ったようにピアノを弾いていました。……思えば、おかしなことも言ってましたね……」

 銀木は淡々とした口調で彼女が見た幻覚のことを語った。それは聞いただけでも異常なことのようで、彼女が淡々とした口調だからこそ自分たちも落ち着いて聞けたのかもしれない。彼女がどこまでそれを意識していたのかは分からないけれど。

「ていうかそれ、黒幕はエリック、みたいな……?」
「ありえるのではないかと……」
「天才の考えることは分かんねーわー……」

 はぁ、とため息を一つ。巻き込まれた自分たちはたまったものではない。
 そんな自分たちを見ていたドゥードゥーがひょいと首を傾げる。

「オレもトイレでマイクに触れたとき、変な映像なら見たぞ。女で、歌ってたが」
「ドゥードゥーさんもですか」
「でもマイクって楽器……ですかねぇ? それとは違うような気が……」
「まあ、確かに……? そもそもエリックが弾いてるのってピアノですしね」
「ピアノ……」

 ちら、と有馬は展示室を見やった。普通に考えれば今自分たちに音を届けているピアノこそが諸悪の根元な気はするが――。

「先生?」
「いやー、そういやピアノってそっちの方にもあったなぁと……」

 気になってしまい、有馬は展示室の方に足を向けた。案の定、そこにはやや古めかしいピアノが鎮座している。展示説明の欄には、エリックの名前。

「……お……?」

 思わず身を乗り出し、そのピアノに触れた瞬間――


***


 気がつくと、有馬はどこか見知らぬ広いコンサートホールに立っているようだった。そこには、蹲る黒い人影が一つ。
 恐る恐る声を掛けようとすると――その影は、がばりと顔を上げた。上手く認識できないが、どうやら男らしい。彼は両手を大きく広げ、高々と叫ぶ。狂ったように、悦びに酔いしれながら。

「ああ、神よ!」

 それはとても歪つな。

「私は選ばれたのだ、音楽の神に!」

 心の底から壊れた笑みで。

「なんと喜ばしい、なんという幸福だ!」

 その瞬間、恐ろしい音が耳に一度に流れ込んでくる――。


***


「……あ……?」

 ハッと我に返り、有馬は呆然と顔を上げた。――今のは。

「先生、大丈夫ですか?」
「あ、あー……大丈夫だケド……幻覚……?」
「これも、ですか……?」

 駆け寄ってきた銀木も訝しげに見やる。それから、彼女もこれがエリックの私物であることを理解したらしい。その表情に厳しさが浮かんだ。

「……壊してみますか」
「そだなぁ。つっても、どーやって?」
「ちょっとどいてくれ」

 突然、間に入ってきたドゥードゥーが拳銃を構えた。有馬と銀木は顔を見合わせ、守谷の方まで戻っていく。
 それから、ドゥードゥーがピアノより少しだけ離れた位置まで近づいた。
 乾いた音が一発、二発、三発――。
 歪つな音を立て、ピアノに穴が開く。

「……っ!」
「ドゥードゥーさん!?」

 いきなり頭を押さえたドゥードゥーに――誰にも何もされていないはずなのに――驚くと、しばらく顔をしかめていたドゥードゥーは「何でもない」と渋い顔で首を振った。
 それによって、ある意味覚悟が決まったのだろうか。銀木が幻覚を見た楽譜も、彼女が勢い良く破り捨てた。その際もやはりと言うべきか、彼女は思い切り顔をしかめた。幻覚を見たのであろうときよりもさらに顔色が悪い。
 どちらも相手に幻覚を見せるような、不可思議な代物だ。破壊した際も何かしらのダメージが発生するのかもしれない。

「二人とも、大丈夫っすか……?」
「ああ」
「平気です」
「……」

 有馬は移動するときは大体守谷と一緒にいるため、初動が遅れがちだ。そのことに対しいくらか申し訳ない気持ちになる。それでもこの中で一番年下である守谷を放っておくこともできない。
 苦い気持ちのまま、ピアノと楽譜、それぞれの破壊を試みた一同はコンサートホールに目を向けた。音は一向に鳴り止まない。むしろさらに激しく、大きくなっている。

「行く、か?」
「行くしかないでしょうね」
「そうだな」
「……」

 三人は同じ気持ちで小さく頷き合う。すると守谷が怯えたように有馬の服の裾をつかみ――しかし、彼はぐっと堪え、顔を上げた。

「あの、僕……フルート、吹きます」
「お? 大丈夫か?」
「いくつかのメモを見ても思ったけど、音楽を奏でている間はいくらか大丈夫みたいだから……さっきは失敗しちゃったけど、やってみます」
「ふは。ん、サンキューな」
「はい」

 いよいよ準備は万端だ。ひとまず後方に守谷、そして彼を庇うように有馬が立ち、銀木とドゥードゥーで扉を開く。
 重たげな扉をそっと開くと、中は音で溢れていた。ステージ側の扉だったため、比較的距離の近いところにピアノがある。そしてそこには、まるで何かに取り憑かれたように一心不乱にピアノを弾くエリック・エヴァンスの姿。
 ピアノの音が一層強く、強く――。
 ふいに、その音を守谷のフルートの音がかき消した。明るくも落ち着いた音が自分たちの耳に届く。それは散々脳内に響いていた不協和音を一つ一つ打ち消していくような心地で安心感すらあった。
 いける。
 そう確信し、真っ先に銀木がエリックの方へ駆け出した。
 しかし、そう簡単に済まされるものではなかったらしい。突如、周囲から三人の男女が立ちふさがった。

「!」
「こいつら……!」
「駄目です! 彼らも操られている、ただの人間みたいです!」

 ドゥードゥーが拳銃を構えたのを、銀木が制する。しかし、一方で相手は気に留めてくれなかった。ナイフを振りかぶった男が、近くにいた銀木に襲いかかる!
 間一髪で避けた銀木が、ふらつきつつも体勢を整える。有馬は焦る気持ちを抑え周囲に目を向けた。他に似たような人間はいないだろうか。もしくは武器になるものは。それから、それから――。
 ふと、有馬は気づく。エリックの弾くピアノは一見普通のようだが、彼の前に置かれている楽譜は異常だった。譜面がまるででたらめで、ピアノをろくに嗜んでいない自分たちでさえ気分が悪くなりそうだ。

「楽譜だ!」
「先生?」
「多分あの楽譜も破んなきゃだ!」
「……!」

 目を向けた銀木、ドゥードゥーも理解したらしい。二人はキッと楽譜を睨みつけた。ドゥードゥーが銃を放つ。
 しかし、的は小さい。狙いは外れ、弾は違う方向へと飛んでしまった。誰にも当たらなかったのは幸いだったのかもしれない。

「く、それなら私が……!」

 狙いをエリックから楽譜に変えた銀木が駆け出す。しかし、傍にいた発狂者の拳が彼女を捉えた。小柄な彼女は吹っ飛びそうな勢いでよろめいてしまう。

「銀木さん!」
「っ……」

 痛いだろうに、彼女は怯まない。
 しかし、さらに次の発狂者が彼女に襲いかかった。――が、発狂者は銀木の手前でもつれ、舞台から転がり落ちていく。どうやらマトモに判断しながら動くことができないようだ。それだけこの音にやられてしまったのかもしれない。
 このままでは彼らと距離の近い彼女が一人狙われる。有馬はとっさに守谷を見た。彼はしっかりと集中してフルートを吹けている。また、背後に怪しい人影はいない。
 そのことを確認し、有馬は駆け出した。体勢を立て直した銀木がエリックに組み付いたのでそれに加勢しようと――

「って、ええええええっ?」

 加勢するまでもなく押さえ込めている。どう足掻いても成人男性のエリックと小柄な彼女では明らかな体格差があるというのに。火事場の馬鹿力とはこのことか。
 エリックがもがいているのを見て、有馬はとっさに方向を変えた。楽譜に手を伸ばす。思い切り――引き破る!
 途端に、ずっと流れていた恐ろしい旋律が鳴り止んだ。恐ろしいほどの静寂。それから流れ込んでくる、エリックのものとは違う、狂ったような恐ろしい音の数々。人智を超えたソレ。それはもはや暴力的なほどに自分たちの意識を蝕んでいく。その音がやがて静かに消えていくのに引きずられるように、徐々に自分たちの意識も白んでいく。


 そのとき、エリックを押さえ込んでいた銀木に、奇妙な音が直接耳に、身体に、脳に流れ込んできた。その向こう――「向こう」がどこなのかも理解できていないが――に不思議な存在(もの)を認識する。それは実体などない。だというのに、確かに存在するのだ。それはまるで、音そのものであるかのように。音の――神であるかのように。そんなことがあるはずもないのに、しかし、それは、確かに現実としてそこに存在している。銀木はそれを、認識している。
 それは言いようのない恐怖だった。理解の限界を超えて余るものだった。
 ソレがこちらを向く。銀木を認識する。姿などないのに、ソレは確かに銀木を捉えた。
 そして。
 抵抗する間もなく、音が、確かに銀木を貫いた。


***


 目が覚めると、そこはコンサートホールの玄関だった。ぼんやりした思考で有馬は周囲を見渡す。最初に目覚めた景色と違うのは、やたら周囲がざわめいており、たくさんの人が自分たちを見下ろしていることだ。彼らは好奇心や心配、様々な表情を浮かべている。

「えっと……?」
「大丈夫ですか? 今、救急車を呼びましたけど……」
「救急車……?」

 親切そうな女性に話しかけられ、有馬は緩く首を傾げた。
 聞くところによると、自分たちはエリックのコンサートが終わった後、ふらふらと玄関に集まり、その場で突然気を失ったという。見ればドゥードゥーと銀木、守谷も近くで倒れているようだった。
 どうやらエリックもまたコンサート終了と同時に気を失ったとのことで、周囲は随分と慌ただしい。
 もぞもぞとドゥードゥーや守谷が動き出したのを確認し、有馬は横になっていた銀木に目を向けた。血の気が引いているのか顔が真っ白だ。寝息は聞こえるが、少しばかり心配になる。

「銀木さん?」
「……う……?」
「良かった、銀木さんも無事で……」
「うー?」
「……銀木さん?」

 明瞭な言葉を発さないまま、胎児のようにうずくまってしまった銀木に困惑する。見れば目の焦点も合っていない。自分を認識できているかも分からない。
 それは何だか覚えのある状態で――しかもそれは残念なことに、精神科医としてで――有馬は短く息を吸った。じっと見つめる。動揺しそうだった気持ちを押し殺し、ヘラリと笑みを浮かべた。

「銀木さん、聞こえる?」
「……?」
「さっきまで何があったか、覚えてるかな?」
「……」

 すぐには反応は返ってこなかった。我をなくしているらしい。一体彼女の身に何があったのか。あの気丈な彼女がここまで無力化されてしまうほどのことが、あったというのか。
 それでも根気強くゆっくりと話しかけている内に、徐々に落ち着きを取り戻したらしい。次第に銀木の顔にも血色が戻ってきた。ぱちり、とぎこちなく瞬いた彼女は、恐る恐る首を傾げる。

「……あれ、私……?」
「あー、とりあえず戻ってきた感じ?」
「え、と?」
「まーいいや、今は思い出さなくても。とりあえずみんなよく頑張ったな。お疲れちゃん」
「はい……?」

 ひとまず事なきを得たようで、有馬はホッと息を吐いた。状況が分からずポカンとしている銀木の頭をポンポンと撫でてやる。いつの間にか見守っている形になっていたドゥードゥーも、一連の流れにようやく肩の力を抜いた。
 それからややして、救急車のサイレンが自分たちの耳に届いたのだった。


***


 後日、有馬たちはエリック・エヴァンスが息を引き取ったというニュースを耳にした。あのコンサートの後、彼も救急車で運ばれていったが、そのまま亡くなったらしい。

「……ニュース、騒がしいですね」
「まー、スゲー有名だったらしいし? 国家的損失? みてーな感じなんじゃねーかな。よく分かんねーケド」
「はあ……」
「それより銀木さんは調子、どー?」
「……おかげさまで」

 苦笑する銀木に、有馬もまたヘラリと笑う。
 ――彼女はあの後、再び不調に陥り、少しばかり入院していた。彼女が本調子になるのはまだ先だろうが、それでも入院沙汰になったときと比べれば随分と回復も早く状態は良好だ。この調子なら退院もすぐだろう。
 病室で付けっ放しにされていたテレビから、一際大きな報道陣の声が飛び込んでくる。

『エリック・エヴァンスの死に際を見届けた方からの証言によると、彼はこんなことを口にしていたそうです』


「ああこれで、神の御許に……迎えがついに、私にも訪れた」


『果たしてこれはどういう意味だったのか、専門家は……』

 報道の合間、エリックを偲ぶかのようにBGMとしてエリックのピアノの音が流れ始めた。それは美しくも恐ろしく、聴く人をうっとりと魅了させるような――。
 パチリ、と銀木がテレビを消した。
 有馬と銀木は顔を見合わせ、どちらからともなく苦笑する。

「しばらくピアノはいいかもなー」
「同感です」

 消えたテレビから、音は、もう、聞こえない。





と、いうわけで、クトゥルフ神話TRPGリプレイ風小説、『死の旋律』でした!
KPを務めてくれたじますけ様、共にプレイしてくださった鷹路様、陽雨様、シナリオ提供者ますじ様、その他諸々に感謝です。
また、ここまでお付き合いくださった方がいましたらありがとうございました。

波瀾万丈で楽しませていただいたセッションでしたが、形にするのが難しく……また、かなり時間も経ってしまいました。ぬーん。
もっと精進していきたいですね。
発狂してしまった優ちゃんはお疲れ様でした!
守谷君、あまりしっかり書けなくてごめんね!

それでは、また。いあいあ、クトゥルフー!
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