クルミ、パキリ

2016/04/03 Sun 19:34

今日は調子に乗ってもういっちょ公開です。
とはいえ、最近はどうも雑に書き殴りすぎていたのか、あまり書き方が思い出せず……
しかも話の流れやオチも自分で何度「???」となったことか。
もうそろそろ、丁寧に書くということにも慣れた方がいいかもしれません。反省。


今回のテーマは「クルミ」。
……本当は他にも「柳」「茜」「蒲公英」「蜜柑」で、他キャラと有馬くんを書こうと思ってたんですけどね!
なんというか、無謀だったなーと……だから今のうちに言っておきますが、このテーマがなんなのかというと、イメージカラーのようなものだったり。
以前、ひさっちと話していて、(彼女のサイトのキャラ紹介にもありますが)それぞれのキャラの何となくのイメージカラーが茶色、緑、赤、黄色、オレンジ……とあって。
それを、実際にある色の名前で良さそうなものをちょっと探してみて。
その結果、胡桃色、柳(緑)色、茜色、蒲公英色、蜜柑色ならどうかなー、と。
それぞれの物をテーマに書けないかなー、と。
思ったんですけどね……難しかったね……うむん。

そんな感じの出だしであれですが、とりあえず、もったいないのであげておきます。

ちなみに胡桃色はひさっちのキャラ、優ちゃんでした。



*****


 いつもより少し余裕のあった仕事終わり。鼻歌交じりに部屋に戻ろうとしていた有馬秀は、その途中、同期とも呼べる看護士の銀木優の姿を見つけた。彼女と病棟ですれ違うのはさして珍しくないが、今日は時間がもう遅い。ばっちり残業に当たる時間だ。何やら淡々とこなしているようだが、急な仕事が増えてしまったのだろうか。

(大変っすなぁ)

 自身も今の今まで仕事だったことを棚に上げ、しみじみと同情した秀はひょいと彼女に近づいた。

「銀木さん、ちーっす」
「あ、有馬先生」
「残業?」
「はい。まあ、もうすぐ終わりですが」
「お疲れちゃーん」
「先生こそ。お疲れさまです」

 ニヘラと労れば、いくらかほぐれた表情で返される。本当に初めの頃は自分のことを認識すらされていなかったようで無反応にも近かったが、それと比べれば随分気安い仲になったように思う。

「あ、そーだ銀木さん。これやるよ」
「はい?」

 唐突に思い出した秀はポケットから――ひょいと、ビニール袋を取り出した。優が目を丸くする。それはそうだろう、何せこのビニール袋にはぎっちりと――クルミが詰まっていた。しかも殻付きだ。

「え、何です先生」
「クルミっすよー」
「それは見て分かりますけど」
「別の科のセンパイがくれてさー。ぶっちゃけどうしようかと思ってたんだよな。銀木さんならこの量でも食えるかなーって?」
「まあ、貰えるなら貰いますけど……先生って本当に何かかしら持ち歩いてますよね」
「えー? 飴ちゃんは持参だケド他のは大体貰い物だし」
「貰いすぎでは?」
「ぶは、銀木さんには言われたくねーわ」
「それは先生がくれるからでしょう?」
「お宙からもよくご飯貰ってんじゃん?」
「……その話はやめましょう」
「ウィッス」

 ムスッとした表情の彼女が面白く、ケラケラ笑う。今までにも何度かこのようなやり取りはしているが、いつも飽きない。ツボが浅いからだと言われればそうなのだけど。

「じゃあ、ドーゾドーゾ」
「ありがとうございます」

 受け取った優は一転、嬉しそうにほわりと笑った。食べ物のことになると彼女は本当に元気になる。この細い身体のどこにそれだけの量を収める場所があるというのか。人体というのはかくも神秘なり。
 喜ばれると秀も悪い気はせず、またニヘラと笑みを浮かべた。基本的に人を喜ばせるのは好きだ。彼女は分かりやすく喜んでくれるから、秀としても何かとやり甲斐があるというものである。

「そんじゃー気をつけて帰れよー」
「先生こそ。お疲れさまでした」

 ペコリと頭を下げた優に、秀もヒラヒラと手を振ってやる。それから背を向け、歩き出し――ふと、思い出して足を止めた。くるり、振り返る。

「あ、銀木さん悪い、クルミ割りなんだケド……ぶはぁっ」
「?」

 クルミを両手で持ち、歯で開けようと試みようとしていたらしい優の姿に、秀はたまらずその場に崩れ落ちた。
 ――リスか!



「ぶふっ……クルミ割るの大変だからって、センパイが割る道具もくれてて……」
「早く言ってくださいよ」
「忘れてたんだって……つーか、その場で歯で開けようとするなんて思わねーじゃん……っ」
「試してみないと分からないかなって思うじゃないですか」
「思わねーよっ……く、ふ、なんでドヤ顔ッ……」
「多分あとちょっとでいけました」
「も、ほんとやめて、くるしい」
「先生は笑いすぎです」

 結局、お互い帰るところだったうえにクルミ割り器を使う関係などもあり――むしろ秀の笑い疲れによる休憩も兼ね――二人は休憩室に場所を移し、クルミを机に並べていた。優は息絶え絶えな秀を呆れたように見てくるが、秀としては不可抗力だと反論したい。振り返った瞬間にまさかのリスモードだ。彼女の食に対する溢れんばかりのエネルギーはどこから来るのだろう。圧倒的熱量に秀の腹筋は大層ダメージを受けている。瀕死なう。

「はー……笑った……死ぬかと思った……」
「大袈裟ですねぇ」

 ぱきり。言いながら、優が一つ、クルミを割る。
 ようやく回復してきた秀は深く息をつき、同じようにクルミを一つ手に取った。正直なところ、自分で割った記憶はない。道具さえ使えば要領は簡単なのだが、綺麗に割れると存外気持ちがいいものだ。面白くなってくる。

「ちょっと銀木さんみたい」
「はい?」
「クルミ。こう、パキッとした性格してんじゃん?」

 ほんとは竹を割ったようなって言うんだろうケド。
 そう付け足しヘラリと笑うと、優は静かに首を傾げた。

「まあ、さっぱりしているとか、男らしいとか言われることはありますね」
「あとイケメンとかっしょ?」
「ふふ、そう言われるのは嬉しいですよ」
「ほんとカッケーわ」

 さらりと嫌みなく肯定した優にケラケラと笑う。これが秀なら調子に乗って周囲からツッコミを食らう。もしくは――滅多にないだろうが――本気で言われたなら、恐らく、動揺するかもしれない。普段からふざけているうえに、雑に扱われやすい自身のキャラクターを知っているので尚更だ。

「それに銀木さん、初対面のときめっちゃオレのこと『何こいつ』って感じで愛想なかったケドさー」
「う……あれは先生のテンションがおかしかったからビックリしてたんですよ……」
「うはは、サーセン。でも実際話してみりゃスゲー面白いじゃん?」
「そうですか?」
「だから何つーか、硬い殻を割ったらこんな面白い中身が! みたいな? ギャップ? そんなのもクルミっぽいかなって」

 ぱちり、と優は瞬いた。それから少しの間考えていたようだが、彼女はあっさり「よく分かりません」と言ってのける。ある意味容赦がない。秀も反射的に「えー!」と非難めいた声を上げたが――ただの雑談程度のことだったので、「ちぇー」と口を尖らせるに留めた。それなりに上手いことを言ったつもりだったのだが。何だか残念である。

「私からすれば、どちらかというと……」
「ん?」
「先生の笑顔の方が、クルミの殻みたいですけどね」
「え?」

 ――ぱきり。
 割れたクルミが、机に転がる。それは勢い余って床に落ちてしまった。

「「あ」」

 反射的に二人揃って立ち上がる。落ちたクルミは部屋の隅で止まった。それを見送り、何となく顔を見合わせる。

「……洗えば大丈夫でしょうか」
「え、あー、うーん。大丈夫じゃね? つーか生のままってあんま美味しくないって聞いたし。どのみちローストした方が食べやすいんじゃねーかなぁー?」
「お腹空いたので今食べたいですっ」
「ええええ」
「仕方ないのであの子は熱消毒も兼ねてローストするとして……今割ったのは食べますとも」
「ケッコーな数を無心で割っちゃったケド!?」
「問題ないです」
「お、男前ェェェッ」

 大袈裟に声を上げながら――秀はケタケタと笑う。一方でどこかヒヤリとしたものも胸の奥にこびりついていた。それは明確な形のあるものではない。秀自身にもよく分からない。もしかすると優にも分かっていないのかもしれない。
 ただ、あえて言うならば。

(女の勘は怖ぇー、ってやつ?)

 何だか違う気もすることをしみじみ思い、秀は息をついた。
 落ちたクルミを拾い上げ、再び椅子に座る。もう一つパキンとクルミを割り――割ったクルミを、優の口に押し込んだ。

「むぐ」
「……クルミはさー、割んのケッコー大変だし、美味しく食べるには手間かけてローストしたりとかしなきゃじゃん?」
「むぐむぐ」
「だからまー、なんつーの? 上手くは言えないケド、そのまんまってのはケッコー難しいっつーかさぁ? いっそ割らない……むしろ食べない方が楽かもって思ったりもするじゃん?」
「でも私は食べれますよ」
「……えーと」
「手間かけて美味しく食べるのももちろん、生のままでもいけますよ。それに確か、クルミは生の方が栄養価が高いんですよね?」
「……ソーデスネ」
「はい。生のままも、それはそれで悪くないものですよ」
「……銀木さんカッケーわぁ」
「ふふ、それほどでも」

 ドヤァと胸を張る優に、苦笑を一つ。
 試しに秀も一つ、クルミを口の中に放り込んでみた。淡泊なそれは、やはり美味しいとはあまり思えない。食べられないことはないけれど。

「ほんとにこのままでもいいんだ?」
「どんと来いです」
「頼もしいっすわ」

 一体、どこまでが、何の話だったのか。恐らく互いに曖昧なまま、それでも秀は笑ってしまった。理屈ではなく、確かに頼もしいと思う。――なんというか、彼女には毎度驚かされてばかりだ。
 ほんの少しの悔しさも混ぜ込み、もう一つ割ったクルミを、秀は再び相手の口に突っ込んでやった。


クルミ、パキリ

(中から飛び出すのは鬼か蛇か、はたまた)


*****


この二人の距離感は、本当に悩まされますねw
それがまた楽しくもあるんですけれど。
踏み込みたいような、踏み込みたくないような……何とも不思議な化学反応を示し合っている二人だと思います。

おそまつさまでした。
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