参加したセッションのなんちゃって小説。第二弾の続きです。
凹むことの多いここ最近ですが、ちまちま続けていきます。小説書くのが癒やしですね……。



冬薔薇に捧ぐ:
死の旋律   :、③(これ)


ではいつもの注意事項。

追記に放り込んでおきますが、リプレイということで、当然ながらシナリオのネタバレにもなります。
プレイヤーとしてこのシナリオでセッションするんだという方がいましたら、お気を付けください。

あくまでもなんちゃってです。
記録があるわけでもなく、うろ覚えなまま改変等々をふんだんに盛り込んでお送りいたします。

色々と記憶ミスがあり、すでに改変しないとつじつまが合わない状況になってまいりました。あばばばば。


<死の旋律③>


 次にみんなが向かったのはトイレだった。ひとまず男子トイレをドゥードゥーが覗き込む。今までと違い慎重に開けているのは、果たして中で用を足している人がいた場合のためなのか何なのか。
 中をざっと確認したドゥードゥーはクルリと振り返り、自分たちをじっと見てきた。

「ドゥードゥーさん?」
「すごい真っ赤だ」
「真っ赤? ……血ですか?」
「ああ。ちょっと見てくるからここにいてくれ」
「ウィッス」

 気になるものの、進んで見ない方がいいのであれば、見ないに越したことはない。こちらには守谷と銀木もいるので尚更だ。

「何かあったら声を上げてくださいね」
「分かった」

 銀木の言葉に一つうなずいたドゥードゥーは、のしのしとトイレの中に入っていった。


***


 血の海の中、ドゥードゥーは改めて辺りを見渡した。トイレなので広さなどたかが知れている。
 目に留まったのは洗面台だ。当然のように血まみれのそこに、壊れたマイクが落ちている。なぜ、こんなものがここに――?
 怪訝に思ってそれを手に取ったその瞬間に襲い来る、わずかな目眩。
 そして。


 ドゥードゥーは、広いコンサート会場にいた。どうやら自分はアイドル歌手らしい。なぜか分からないがそう直感する。
 そこで自分は、マイクを片手に美しい歌声を響かせていた。惚れ惚れするようなそれに、観客が沸く。
 しかし、自分の心は不思議と空虚だった。これではない。もっと力がほしい。もっと。
 これほどまでの黄色い歓声も、さして心地良いとは思えない。自分が望むのは、もっと広大で、色々なものを動かせる力だ。
 ふいに自分の耳に恐ろしい音が届いた。その常識を逸した音楽も、今の自分にはなぜかとても美しく、魅力的なものに聞こえて仕方ない。
 ああ、これが、望んだ――。


「……何だ、今のは」

 我に返り、ドゥードゥーは眉をひそめた。――幻覚だろうか。それにしては妙にリアリティがあった。
 言いようのない不気味さに、首を振って思考を切り替える。他にめぼしいものもなかったので、ドゥードゥーはそのままトイレを後にした。


***


 戻ってきたドゥードゥーは珍妙そうな表情をしていた。相変わらず何を考えているのか読めない。

「ドゥードゥーさん、何かありました?」
「歌が上手くなった気がする」
「へ? ど、ドゥードゥーさん?」

 脈絡のない台詞に声がひっくり返る。何だそれは。

「それにたまに聞こえてくる音も何だか美しく思えてきたな」
「それ、大分頭やられてません?」
「そうなんだろうか」

 そんな素朴に聞かれても、困る。思わず有馬と銀木は互いに顔を見合わせた。どうもテンポのつかめない人である。

「とりあえず何もなかったなら、次は隣の女子トイレですね。入ってみます」
「ドゥードゥーも行こうか?」
「いえ、仮にも女子トイレですし、ひとまず私が覗いてみますね」
「……」
「あの、ドゥードゥーさん、もしかして入りたかったり……?」
「いや? いや、別にそうじゃない」

 ぶんぶんと首を振るドゥードゥーだが、本当だろうか。どこまでもよく分からない人だ。
 とりあえず銀木が覗くことに異論はないようだったので、何かあったときにすぐ対応できるよう、残りの面子もドアの近くで待機する。それを確認した銀木は静かにドアを開いた。
 と。
 中から突然影が飛び出してきた。とっさに銀木がその場を避ける。

「!」

 見れば、それは一人の女だった。髪を振り乱し、目の焦点が合っていない。避けられた体勢をくるりと変え、再び襲ってこようと勢いをつけてくる。
 キッと相手を睨みつけた銀木が、相手の女性に組み付いた。いくらか体格差はあるが、体勢が良かったのか、きっちりと押さえ込んでいる。

「落ち着いてください……!」
「しぬ……! ころす……! ああああ」
「ちょ、大丈夫ですか? 一回力抜いて――いってぇ!?」

 有馬も慌てて駆け寄って話しかけようと試みたが、聞く耳を持たなかった相手は暴れ、ひっかいてきた。爪が伸びていたのだろう。もしかしたらつけ爪だったのかもしれない。とにかく案外鋭かったそれが有馬の皮膚をいくらか裂いていく。地味に、しかし確実に痛い。
 ドゥードゥーが拳を振り落とすと、今度こそ女性は気を失った。それを確認した銀木が女性を寝かせ、有馬に絆創膏を手渡してくる。

「先生、落ち着かせるのが仕事でしょうに」
「面目ないっす……」

 がっくりと肩を落としつつ、有馬は差し出されたそれを受け取った。その間にドゥードゥーはがさごそと女性の服を漁っている。その手つきはやはり淀みない。
 そのまま彼は、女性のポケットから何かを取り出した。

「コインだな?」
「コイン?」
「さっきと同じで見たことのないコインだ」

 ドゥードゥーが見せてきたのは、確かに円状のコインのようだった。模様が不可思議で、有馬はもちろん、銀木も見たことはない。先ほど服を漁っていたときに発見したのと同じようで、この世界でだけ通じるものなのかもしれなかった。――ますます異世界じみている。
 そのまま警戒しながら二階に上がると、そこにはテーブル、ソファー、自販機、それから展示スペースが並んでいた。さらに音が一層大きくなる。二階にはコンサートホールがあるので、どうやらそこから音が聞こえてくるようだ。
 恐らく、敵が身近にいる。その事実がみんなの警戒心を引き上げる。それでもすぐに突入する気にはなれず、三人は一旦周囲の様子を探ることにした。
 少し休憩しようとしたらしい銀木がソファーに近づく。しかし、座りかけた彼女はとっさに身を引いた。

「銀木さん?」
「……死体が」

 いくらか血の気を引かせて呟いた彼女の傍には、確かに死体が転がっている。しかも――それには首がなかった。断面を見てしまったらしい彼女を出迎えたのはドゥードゥーだ。

「座るならこの椅子に座ればいい」
「……ありがとうございます」
「椅子が椅子として働いたっすねぇ……」
「さっきからちゃんと椅子として使っているぞ」
「いや、そうなんすけど」

 持ち歩いている時点で不自然なことこの上ないのだが、これ以上のツッコミは野暮というものだろう。
 有馬のツッコミにピンと来なかったらしいドゥードゥーは、代わりにソファーに歩み寄った。屈み込んだ彼は――体格が大きいので窮屈そうだ――何か見つけたのか手を伸ばす。
 そうして彼が引っ張り出したものは。

「これは……」
「……拳銃?」

 そう、黒光りする、小振りの拳銃であった。
 ドラマなどの中でしか見たことのないソレに、有馬も表情がひきつってしまう。何だってそんな物騒なものがここに。

「ドゥードゥーさん、使えるんです?」
「少しなら」
「マジっすか……じゃあ、とりあえずドゥードゥーさんに持っててもらいますか」
「賛成です」
「本当に少しだけだぞ」

 いくらか困ったようにドゥードゥーが眉を下げる。しかし自分たちは少しどころか触れたこともない。持つのだって正直おっかなびっくりだ。
 そのおっかなびっくりの気持ちになったまま、有馬はテーブルの下を覗き込んだ。一瞬紙が落ちていたような気がしたからなのだが、どうやら目の錯覚ではなかったらしい。また何かヒントのようなものだろうかと、何の気なしに拾ってひっくり返す。

『音が止まらない助けて助けて助けて助けて助けてもう聞きたくないいやだいやだいやだいやだ』

「うわあ……」

 見なければ良かった。
 明らかに正常ではない、乱暴に書き殴られた文字の羅列に有馬は顔をひきつらせた。肩をすくめつつ、また捨てるのも忍びなくポケットに突っ込んでおく。

「あとはー……展示スペースか」

 振り返ったそこには、アマチュア絵画や書道などがそれとなく飾られている。それ自体は何てことのないものばかりだ。
 回復したらしい銀木も興味を持ったのか一緒に眺めてくる。すると彼女は一枚の絵に目を留めた。眉がすっとひそめられる。
 何事かと思えば、それは、ピアノを演奏する一人の男と、その周囲を何か黒い靄が取り囲み、呑み込もうとしている絵だった。明らかにこの場ではそれだけが浮いている。不気味で、ぞわぞわと何か嫌なものを駆り立てるものだった。それはまるで、今の不自然なほどの現状を予感させるような――。
 銀木が絵をひっくり返す。

「お二人とも、これを」
「何だ?」
「文字?」

『音を止める方法は二つある。一つは自分自身で――……もう一つは音の根元を……あの忌まわしい楽譜と、あの楽器を……』

「「「……」」」

 途中は塗り潰され読めなくなってしまっている。その意味深な言葉の羅列に、三人と守谷は顔を見合わせた。

「ちょっと……整理、しません?」
「そだな。賛成」
「いいだろう」
「ソファーはあれなんで、そこの机の方に座るとして……喉乾きました」

 ある意味呑気なことを銀木が言う。するとそれに乗っかるようにしてドゥードゥーが自動販売機を指差した。

「あそこの自動販売機、このコインが使えるんじゃないか?」
「マジっすか」
「買いましょう買いましょう」
「そのお金って漁ったものじゃ……」

 どこの羅生門だ。
 思わずツッコみそうになり、しかし、有馬は口をつぐんだ。状況はあながち違わないので、あまり笑える話でもない。

「お兄さん」
「ん?」
「実は僕もいつの間にか持ってて……良かったら使う?」

 ずっと有馬の傍にいた守谷が恐る恐るコインを差し出してきた。それは確かに自分たちが見つけたあのコインと同じようだ。反射的に受け取りつつ、有馬は瞬く。

「お? いいの?」
「うん、僕は使わないし」
「そかそか、ありがとなー。そんじゃこれも合わせて……何なら買えます?」
「スポーツドリンクなら買えますよっ。数は足りませんけど……」
「オレらは四人か……回し飲み気になる人います?」
「私は平気です」
「オレも平気だ」
「守谷くんは?」
「え、僕も? 大丈夫です、けど……」
「そんじゃー二本買えるから、それテキトーに回しますかー」

 聞こえてくる不気味な旋律を意識的に追いやり、笑って提案すると、三人は一様にうなずいた。元々コインを持っていたドゥードゥーが自動販売機を操作する。
 ガコン、と音を立てて落ちてきたスポーツドリンクは見慣れたもので、その何てことのない当たり前すぎる光景は、いくらか自分たちの気持ちを落ち着かせてくれたのだった。



続く(ように頑張れぇ……)
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