リプレイ風小説:死の旋律②

参加したセッションのなんちゃって小説。第二弾の続きです。
ちまちま書いてますよー。へへ。

仕事でやらかして凹んだりもしていますが、クトゥルフは相変わらず楽しいですね←



冬薔薇に捧ぐ:
死の旋律   :、②(これ)


ではいつもの注意事項。

追記に放り込んでおきますが、リプレイということで、当然ながらシナリオのネタバレにもなります。
プレイヤーとしてこのシナリオでセッションするんだという方がいましたら、お気を付けください。

あくまでもなんちゃってです。
記録があるわけでもなく、うろ覚えなまま改変等々をふんだんに盛り込んでお送りいたします。

今回は特に改変が多いかもしれません。



<死の旋律②>

 準備を整えた一行は、ひとまず手近な楽屋に足を向けた。これまたドゥードゥーが耳を忍ばせ――音がしないと判断するや否や、豪快にドアを蹴り飛ばす。どうでもいいが鍵がかかっているわけでもない扉を蹴り飛ばす必要性があるのだろうか。中に人がいた場合、威嚇する効果はあるのかもしれないが。そして現に有馬と手を繋いでいる守谷はドゥードゥーに怯えまくっているようだが。
 楽屋の中は乱雑だった。人気はない。所々に血が飛んでいるようだが、想像を絶するほどでもなかった。そのことにいくらかホッとする。

「楽器……」

 ポツリと守谷が呟いた。彼の視線の先には様々な楽器が転がっている。しかし大部分が無惨にも壊されているようだ。

「そういや守谷くんはフルート……だったっけ? どーしたん?」
「取られちゃったんだ……もしかしたら僕のも壊されてるかも」

 そう表情を曇らせる守谷に、有馬は「見つかるといいなぁ」と言いながら握っていた手をぶんぶんと振った。振り回されそうになった守谷は慌てて体勢を整え、「うん」とはにかむ。高校生にしては生意気なところのないイイコである。有馬としても何だかほっこりしてしまう。

「っと、机にあるのは……楽譜?」

 ふと目に入った一枚の紙に、有馬はゆっくりと近づいた。
 それは確かに楽譜のようだった。どこか古びていて読み取りづらそうだ。それに加えて、嫌な気配がしてならない。
 有馬は別に霊感があるわけでもないので、単に今の状況がそう思わせるだけだろう。そうだろうとは思うのだが。

「何されてるんですか」

 ひょい、と近寄ってきた銀木がその楽譜を手に取った。何の躊躇いもない。その躊躇いのなさに虚を衝かれた。

「ちょ、銀木さん」
「――」


***


 銀木は、広いコンサートホールに立っていた。目の前には一心にピアノを奏でる男がいる。その指先からは鮮血が流れ、鍵盤には――止めどなく流れていく赤い血。
 とっさに止めようと手を伸ばしたが、男は銀木に気づかないどころか、銀木の手はあっさりと男をすり抜けた。

(幻覚……?)

 ――こんなにもはっきりと見えるのに?

 呆然としていると、「まだだ……」と、男が呟くのが聞こえた。低く、狂気じみた声。

「まだ足りない、これではまだ、駄目だ……」

 それと同時に響く、ピアノの旋律とは違う、おぞましくも美しい旋律。それが銀木の耳を、脳を支配する。耳を塞いでも、それは途切れない。響く。響く。どこまでも狂気じみたソレ――。

「私が生きる意味はこれしかない、これしかないんだ、もっと、もっと力を、もっと、もっと沢山の、多くの力を……」


***


「銀木さん?」
「……あ」
「どした? 大丈夫か?」

 突然ぼんやりとしてしまった銀木の前で片手をひらひら振れば、ようやく彼女は我に返ったようだった。しかし顔色があまり良くない。この一瞬でどうしたというのか。

「……大丈夫です。何でもありません」
「そっか……?」
「とりあえずこれ……先生もどうです?」
「へ?」

 銀木が持っていた楽譜を渡してくる。反射的に受け取った有馬は数度瞬いた。――嫌な予感がしていた割には、特に何もない。

「えーと……?」
「……やっぱり私の気のせいですかね」
「ちょ、銀木さんー!?」

 何やら考え込みつつ納得したらしい彼女に慌てる。意味が分からない。隣の守谷も同様なのだろう、ポカンとしている。
 途方に暮れつつ楽譜をひっくり返すと、そこには文字が連なっていた。

『私は永遠の力を手に入れた。私の音楽は人を動かす。世界を変える。救う。私の音が誰かを助け、そして導く。私にしかできない。私は神の力を手に入れた。私の音楽は永遠、私の音楽は完全、私の音楽は……』

「……何だこれ」
「狂気じみてますねぇ……」
「そもそもこれ何の楽譜だ? 守谷くん、分かる?」
「……ピアノの楽譜ってことくらいしか……」
「ピアノ、ですか……」

 何か思うことがあるのか、銀木は難しい顔をして復唱した。しかしそれ以上言うつもりはないのか、彼女は静かに顔を上げる。

「ドゥードゥーさんの方は何かありました?」
「特にないな」
「じゃあ次の部屋、行ってみますか」

 ドゥードゥーが持ち込んだ椅子に座っていたことに対するツッコミは放棄し、一同は場所を移動することにした。





 隣の部屋も、これまた楽屋だった。いよいよ耳をそばだてるのも面倒になったのか、ドゥードゥーが豪快に蹴り破る。ドアを見たら蹴りたくなる病気なのかもしれない。知らないけれど。

「……う」

 中を覗き込んだみんなは、一様に足を止めた。
 中は血の海だった。夥しい数の死体が転がり、積み重なり、倒れている。ただ争っただけでここまでなるだろうかというほど凄惨な光景だ。血の臭いで目眩がしそうになる。
 見れば、彼らはそれぞれの楽器や楽譜を手にしていた。しかしどれもが壊れている。それも乱暴に扱われたのだろう、半ば無理矢理破壊されているものばかりのようだった。一目見ただけでも損傷が激しい。
 中にはフルートもあった。ちら、と有馬は守谷に目をやる。彼の表情は硬い。当たり前だろう。大人である自分たちでさえこの状況はつらいものがあるのだ。

「守谷くんのフルート、ここにあったりする?」
「……ない、と思う」
「そっか」

 良かったな、と言うのは憚られた。こんな状況では、この先も彼のフルートを見つけるのはあまり期待できないかもしれない。見つけられたとしても果たして使える状態のままなのか怪しいところだ。
 ふと、ドゥードゥーが死体の持つ楽譜に触れた――が、彼は頭を押さえるように低く呻いた。

「ドゥードゥーさん? どうしました?」
「……気味の悪い音楽が聞こえた」
「大丈夫っすか?」

 また音楽か。そんな気持ちでおっかなビックリ、有馬もそっと覗き込む。するとそこにもまたメモ書きのようなものが見つかった。

『ここに閉じ込められてからどれだけ経ったか分からない。もう指も駄目になった。音が止まらない。頭がおかしくなる。誰かを殺した気がするが、それが誰だったかも分からない』

「……」

 これが、この持ち主の末路か。
 恐怖や不安、それから持ち主への憐憫、様々な感情が湧き起こる。自分たちもこのままだと、彼らと同じようになってしまうのか。

「皆さん!」

 ふいに銀木が鋭く声を上げた。彼女の視線の先には――玄関ホールで襲いかかってきた男の姿。

「ここに逃げ込んでたのか……!」

 男は、目の焦点が合っていない。ブツブツとうわごとのように何かを呟いている。

「ころされる……ころされる……みんな死ぬ……音が……音が……音が……」

 そのまま男は自分たちを見るなり――やはりと言うべきだろうか、襲いかかってきた。
 狙われたのは、一番近くにいる銀木だ。しかし彼女は持ち前の速さで男の攻撃をかわした。そのまま握り込んでいた警棒を相手に叩きつける。そういえば彼女は剣術をしていたらしい、ということを、有馬は今更ながら思い出した。だからといって――凶器を持っている相手になんと無謀なのか!
 攻撃を食らった相手は数歩よろめいたが、倒れなかった。意識はまだある。殺意も――まだある。
 加勢に行こうとし、有馬は躊躇った。有馬の隣には守谷がいる。彼はすっかり怯えた様子で自分の手を握っており、そんな彼を放置するのは気が引けた。何より、相手がこちらに向かってきたとき、今の守谷では逃げられるか分からない。
 そう逡巡している間にドゥードゥーが動いた。彼は拳を振り上げる。巨体が重さを乗せて振り下ろされる。

「――っ」

 その拳は相手へ思い切りめり込み――いよいよもって、有馬は駆け出した。
 今のは、まずい。そんな直感に突き動かされた。
 吹っ飛ばされた相手はオモチャのように床に転がっている。四肢をダランと投げ出しているその相手は、非常に静かだ。何の音も聞こえない。呼吸はおろか、脈さえも。

「……!」
「先生……」
「……ムリだ……」

 表情を曇らせて近寄ってきた銀木に、緩く首を振る。道具も何もなく、知識も半端な自分の手にはとても負えない。それが分かったのだろう、銀木も痛ましそうに目を伏せた。

(……正当防衛、……なんだろうケド)

 ちら、と背後のドゥードゥーに視線を向ける。彼は拳を握ったまま黙っていた。誤って人を殺してしまったにしてはいやに冷静だ。

「ドゥードゥーさん、あの……」
「……」
「ドゥードゥーさん?」

 近寄ってきたドゥードゥーが死体の前に屈み込んできたので、有馬たちは邪魔にならないよう、一旦距離を取った。どうするつもりなのかと見ていると、彼は静かに死体を漁り始める。それも随分と慣れた手つきだ。無駄がない。

「……名刺だな」
「名刺?」
「ここのスタッフのようだ。あと手帳と……コイン?」

 服から抜き取った名刺と手帳をドゥードゥーが手渡してくる。困惑しつつ、有馬はそれを受け取った。銀木と共に覗き込む。
 名刺は確かにこの会場のスタッフであることが書かれていた。そして手帳は一見何の変哲もないようだったが、最後のページには乱れた文字が書かれている。随分と取り乱して書かれたものなのだろう。

『またあの音だ。みんな気がおかしくなってしまった。耳を塞いでも聞こえてくる。もう助からない。抵抗する方法は一つしかない……が、もう、俺には出来ない。彼ももう……』

 途端、恐ろしい旋律が再び自分たちを襲った。脳内がかき乱されそうな衝動に眉をひそめる。
 しかしその衝動をぐっと堪え、有馬たちは次へ進むことにした。この場に長く留まってはいられない。いつ自分たちも彼らと同じようになってしまうのか――。
 再び守谷の手を取ると、彼は表情を強ばらせてドゥードゥーを見やった。

「……あの……」
「あー……怖がらせちゃってごめんな」
「いえ……うん、でも、怖いかも……」
「あはー」

 それはそうだろう。正直自分だって割とビビっている。
 それでも彼に自分たちへの敵意がないことは前回の件でも分かっているし、ここでの協力は必要不可欠だ。もはやこの辺の感覚は理屈で説明できる気がしない。
 有馬は守谷を元気付けるように握る手に力を込めてやった。




 次に入ったリハーサル室も、やはり死体の山だった。先に銀木が入り――ずしゃりと、何かが彼女の足元に落ちてくる。まじまじとそれを見た彼女はゆっくりとこちらを振り返った。

「臓物のようです」
「銀木さんめちゃくちゃ冷静だね……!?」
「このお姉ちゃんも怖い……」
「失礼ですね」

 むぅ、と銀木が膨れるが、守谷の気持ちも分からないではない。異常な空間では感覚が麻痺してくるので、銀木の態度もまた分からないわけではないのだが。味方の内は頼もしい気持ち半分、感覚の麻痺が無茶に繋がらなければいいけどなという心配半分、有馬も苦笑するしかない。

「ここも他とは変わりないようだな」
「ですね、死体と壊れた楽器ばかりです」
「そうだなぁ……ん?」

 さすがにげんなりした気持ちで部屋の中を見回したところで、有馬はふと気になるものを見つけた。死体の中にあるのだが、どうやらそれはフルートのようだ。近づいて見ればそれは綺麗な状態で、壊れている様子もない。

「守谷くん、これ」
「あ、僕の!」 

 引き抜いたソレを、守谷は嬉しそうに受け取った。本当に大切なものだったのだろう。浮かんできた笑みはあどけない。

「良かったな!」
「はい!」
「何なら吹いてみっか?」
「あ、私も聴きたいです」
「ドゥードゥーもだ」
「そ、そうですか? それじゃあ……」

 はにかんだ守谷が、フルートに口をつける。彼は息を吸い、そして、

 ぼひょろろろ

 どうにも間抜けな音が、部屋に頼りなく響いた。

「「「……」」」
「ち、違……いつもはこうじゃないんですけど……」
「うんうん、大丈夫大丈夫。緊張しちゃったよな。むしろごめんなー、こんなときにさ。でもせっかくだからまた今度、落ち着いたら聴かせてくれな!」
「そうですよ。楽しみにしています」
「すみません……ありがとうございます……」

 しゅんとうなだれる彼の背中をバンバン叩いて笑いかければ、彼は少しだけ困ったように笑う。
 小さなハプニングのようでもあったが、しかしこの異常な空間の中では、いくらか緊張が解れたのも確かだった。そういう意味ではやはり助かった。
 それに――何度も響きわたる不気味な音に対抗するには、彼の音は、確かに必要になりそうなのだった。


続く(かなー?)


この辺は特にあの、波瀾万丈でした。はい。
セッション中、いっそギャグなんじゃないかと思うレベルで笑い転げていた記憶が……。
スポンサーサイト
Home |  Category:TRPG |  コメントアイコン Comment0  |  Trackback0
Tracback

Tracback URL :

Comment

    
Home   Top
 
プロフィール

あずさ

Author:あずさ
武器:シャーペン、ノート、パソコン、ポメラ
レベル:29
二つ名:囁(アビス)
あだ名:エゴイスティックスケコマシ
四字熟語:好色生活
(※二つ名メーカー、脳内メーカー等による結果)
アイコン:朧夜緋雨さまから

最新記事
カテゴリ
呟き、囁き、ぼやきに寝言
最新コメント
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QRコード