05. その総てが、幸せだった

と、いうわけで。
お題、ラストです。
無駄に今日一日で書き上げたので、お題目に全然合ってないわ、オチがないわ、平坦だわでクオリティガン無視状態なのが申し訳ないのですけれども。
まあ、私のストレス発散だとでもいいますか。
明日からまたお仕事ですね! いやですわー! 遊びたい!
セッションしたい!

1日に5つの記事をあげるという、謎の怒涛の更新でしたが、もしも万一、お付き合いくださった方がいましたら、ありがとうございました。
ろくに説明がないままの、背景もよく分からない、そんなキャラの漠然とした小話ですみません。
まあでも、やっぱり深く考えずに書き殴るのは楽しいですね。個人的にはいいストレス発散になりました。


さみしがり屋に贈る五題

01. おでこ、こつん。
02. 足の大きさが違う
03. つめたい手とあったかな心
04. 言い訳はこれにしようかな
05. その総てが、幸せだった

お題配布サイト:Kiss To Cry



*****

 久しぶりね、とその人が笑う。
 そーだね、と秀も笑った。

「元気にしてた?」
「まー、おかげさまで?」
「……大きくなったわねぇ」
「え、マジで?」

 しみじみと言われた台詞に思わず声が明るくなる。その態度に一瞬虚を衝かれたのか、目を丸くした相手は――ふふ、と小さく笑った。その笑い方は、あぁ、母娘なんだなと思わせる。

「母さん。どーしたん、急に」
「いえ、大した意味はないの。ただ、詩麻に少し近況を聞いたりして……どうしてるかと思って」
「なんも変わんねーよ。オレはしがない研修医だし、じいちゃんは今グループホームに入りながら通院してるとこ。父さんはやっぱ忙しそうだケド」
「そう」
「そっちはしまちゃんとよく会ってんの?」
「よく、と言っていいのかしらね。あの子も一人暮らしを始めたでしょう? 家事なんかは心配してないけど、やっぱり作家って私にはよく分からないお仕事だし……締め切りで忙しかったら食事とか抜いてないか心配でたまに電話で様子聞いたりって感じかしら。電話の回数だけならあんたと詩麻の方が多いんじゃない?」
「いやーそんなー」
「仲良しよねえ」
「あはー、おかげさまで」

 ケラケラと笑えば、母もまた肩をすくめるようにして――やはり笑う。
 会うのは随分と久しぶりな気もするが、相変わらずだった。
 寡黙がちな祖父や父、そして寡黙ではないにせよ落ち着いた妹がいる中で、よく笑いよく話すのは、母と秀の二人だった。食卓での会話はこの二人だけやたらとテンポが速かったように思う。
 両親が離婚して以来、直接会うのは本当に数えるほどだ。その度に変わらない様子なのは、息子としていくらかの安堵がある。白髪やシワは当然のように増えたようだが、笑い方は懐かしくなるほどに変わらない。

「このお店もしまちゃんに教えてもらったんだよ」
「道理で。あんたにしちゃオシャレなところを指定してくるもんだと思ったわ」
「あ、ヒデー」
「彼女と来たりしないの?」
「うわ、そーゆう話題やめて」
「何でよ」
「プライバシーです」
「え? 何? いるの?」
「いたら母さん放っといてデートしてますぅー」
「あんたにそんな度胸あるわけないじゃない」
「息子のこと見くびりすぎじゃねーっすかお母様」
「だって。あんた、優しいし」

 ストローをいじりながら言われた言葉に、秀は目を丸くした。母は目を合わせない。カラリとコップの中の氷が音を立てる。少し前に頼んだアイスティーは、いくらか氷が溶け、かなり冷たそうだ。

「私ね、正直、罪悪感で潰れそうだった」
「……母さん?」
「ううん、今だってそう」

 物憂げに呟いた母は、アイスティーを口に含む。シロップも何も入れていないそれはほろ苦さが残っていそうだった。

「おじいちゃんのことも……もっと頑張れたんじゃないか、とか。未だに色々ね、思うこともあって」
「……母さん、頑張ってたじゃん。オレ知ってるぜ」
「そうよ。頑張ってた。だけど結局……駄目だった」
「昔はオレもガキだったしよく分かんなかったケドさ。看病が大変なの、今ならオレもケッコー分かるし。何で母さんがそこで自分を責めるワケ?」
「ほらね。あんたは優しいわ」

 そう言った母は、苦く笑う。あまり見たことのない種類の笑みだった。こんな顔をすることもあるのだと、どこか意外に思ってしまう。

「あんたはもっと私を責めてもいいのに」
「母さん?」
「私はまだ子供だったあんたに色んなものを押しつけちゃったのよ。詩麻を守るためだって言い訳して、色んなものから逃げ出したの。全部、投げ出したの。それなのにあんたは私を責めない。ひどい母親だって、怒ってくれてもいいのに……私は拒絶されたって、仕方ないのに」
「そんなこと……」
「ごめんね」
「……」
「ごめんなさい」

 母が静かに頭を下げる。その姿に、秀は少なからず動揺した。半ば腰を上げ慌てて止めさせる。

「待って、ちょ、母さん」
「……いつかきちんと謝りたいと思っていて」
「待ってってば。なあ。謝んないで」
「……秀?」
「お願いだから謝んないで」

 その声にどこか必死さを感じたのか、母がそろりと顔を上げる。その眼差しは許しを請うていたのかもしれない。秀にはよく分からないけれど。
 顔を上げた母と目が合うと、秀はポリポリと頬を掻いた。

「そりゃ、母さんたちが離婚したときはショックもあったよ。でもさっきも言ったケド、しゃーないじゃん。あのままじゃ母さんが倒れてたかもしんねーし、何よりしまちゃんを危ない目には遭わせらんねーって」
「でも……」
「父さんの方に残るって決めたのオレだし。それに今、しまちゃんとは仲良くやってるし……じいちゃんも大分良くなって、今じゃケッコー話もできるし。それにほら、やりたいコト見つかって頑張ってるとこなワケよオレ。センパイたちも同期も頼もしいし、これ以上なんて望んだらむしろバチ当たるんじゃね?」
「だけど、秀」
「オレさ、家族のこと好きだよ。母さんのことももちろんな。家族みんなのことが好きなんて、オレ、スゲー恵まれてんじゃね?」
「……」
「だから謝んないでほしいんだわ」

 笑いかけると、母は困ったように微笑んだ。恐らく心からの笑顔ではない。納得はしていないのかもしれない。
 それでも秀は、母に謝ってほしくはなかった。母のそんな姿を見たいわけではなかったし――。

「……そう」
「そーなんです」
「……あんたは……不器用な子ね」

 母が泣き笑いを浮かべ、残っていたアイスティーを飲み干した。自分の気持ちを尊重してくれたのか、これ以上話題を続けるつもりはないようだ。そんな母に、秀もまた、困ったように笑うしかない。さすがは母、なのだろうか。
 ――確かに大変な時期はあった。不安に押し潰されそうになったときもあった。だけどそれは、総て過去の話だ。そして過去の中には、みんなが仲良く団欒していた時期も、確かにあって。
 その総てが、幸せだった。
 幸せのはずだった。
 幸せでなければならなかった。

(だから)

 だから、謝らないで。
 不幸だなんて――思わせないで。


*****

それが、どんなに不器用な願いだとしても。



有馬秀という男は、器用そうに見せかけて、きっと、かなり不器用な生き方しかできないのです。
それでも、そうやって笑っていないと、色々なものを見失ってしまいそうで。
彼が笑うのは、最終的には誰のためでもなく、自分自身のためでもあるのでしょう。
なんて。
よくは分からないのですけれど。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
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