03. つめたい手とあったかな心

もう前置きもいらないだろうか?第三弾!



さみしがり屋に贈る五題

01. おでこ、こつん。
02. 足の大きさが違う
03. つめたい手とあったかな心
04. 言い訳はこれにしようかな
05. その総てが、幸せだった

お題配布サイト:Kiss To Cry
*****


 冬の休日、映画を見に行っていた有馬秀と眞山詩麻は、チラホラと降り始めた雪にその足を止めた。

「うわー、降ってきたな」
「どうりで冷え込むと思いました」
「しまちゃん、手袋は?」
「家に置いてきちゃいました。兄さんは?」
「オレも」

 二人揃って顔を見合わせる。何せ昼の時間帯は日も照っていて暖かかった。このまま春になるのではないかと思ったほどである。だからすっかり油断してしまっていた。

「しゃーないかぁ……ん」
「え?」
「寒いし、手繋いで行かね?」
「……はい」

 あっさりと差し出された手と兄の顔を見比べ、詩麻は一つうなずいた。そっと手を出せば、彼の手が自分の手を包む。外気で冷やされた彼の手は随分と冷たい。しかし、不思議と落ち着くのも確かで。

「ちょっとはマシ?」
「おかげさまで」

 微笑めば、秀も安心したように笑った。よし、と気合いを入れた彼が歩き出す。詩麻もそれに合わせて足を進めた。サクサク、雪道を踏みしめる音が耳に届く。詩麻はこの音が嫌いではない。むしろ少しばかり楽しくなってくる。

「あー、でもやっぱ寒っ!」
「兄さん、この繋ぎ方じゃ兄さんばかり寒いと思いますけど」
「えー? まあでも、オレの手の方が大きいし」
「そういう問題でしょうか……」
「しまちゃんの手をセコムっすよー」
「ふふ。頼もしいです」

 ケラケラと軽い空気を含んだ兄の笑い声に、つられて詩麻も笑ってしまう。
 この兄はいつもこうだ。何かと自分を大切に扱ってくれる。時には気恥ずかしくなるほど。
 周囲にはシスコンだと言われることもあるようだが――事実そうなのかもしれないが――その点で言えば、この手を振り払わない詩麻だって同罪だ。別に改める気もないのだけれど。

「まーでも、映画面白かったなー」
「はい。見れて良かったです」
「しまちゃんってほんとジャンル問わないよな」
「どれも勉強になりますから」
「次書くジャンルは?」
「ミステリーです」
「スゲェ!」
「できたら、読んでくださいね」
「読む読む。もちろん」
「ではまた送りますね」
「買うのに」
「そこは私のワガママということで」
「なんか違くね?」

 他愛ない話は尽きない。特に秀は投げかけてくる会話の量が多いので尚更だ。
 ふと一際冷たい風が吹き、二人は揃って首をすぼめた。反射的にだろう、ぎゅっと握られた手に、詩麻はそっと視線を向ける。

「兄さんの手、冷たいですね」
「あ、冷えてる? 悪い、逆に冷たいかな。離す?」
「いえ」

 詩麻はゆるりと首を振った。離れそうになった手を静かに握り返し、そっと微笑む。

「あったかいです」
「んん?」
「ふふ」
「しまちゃん、意味深なんだケド」
「思ったことを言っただけです」
「ええー」

 拗ねたように口を尖らせた秀だが――何となく面白くなってきてしまったのか、クスクスと笑い出す。コロコロとよく変わる反応だ。詩麻自身はあまり感情が表に出てこないので、時に兄のその反応は羨ましくもあり、尊敬もする。

「んーじゃあ、それはそれとして……あったかいもの食べようぜ!」
「あったかいもの……ですか?」
「オデンとか」
「あぁ……いいですね。美味しそうです」
「他にも肉まんとか……ああでももうすぐ晩ご飯の時間だよな、もう少しがっつりでも……あ、しまちゃんあそこ! ラーメン!」
「あら」
「ラーメン食べたくね?」
「いいですね」
「よっしゃ、決まり!」

 行こう、と秀が軽く駆け足で詩麻を引っ張る。急に子供みたいにテンションを上げた兄に、詩麻は繋がれていない手を口元に当てクスクスと笑った。外気の冷たさも、もう気にならない。
 ――彼の傍にいれば、いつだって詩麻の心は温かいのだ。


*****

その手を離せないのは、果たして、どちらなのか。
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