リプレイ風小説:死の旋律①

参加したセッションのなんちゃって小説。第二弾。
また、まったり、気の向くままに書いていきます。

最近は年度末ということもあって、仕事も忙しくなってまいりました。



冬薔薇に捧ぐ:
死の旋律   :①(これ)


ではいつもの注意事項。

追記に放り込んでおきますが、リプレイということで、当然ながらシナリオのネタバレにもなります。
プレイヤーとしてこのシナリオでセッションするんだという方がいましたら、お気を付けください。

あくまでもなんちゃってです。
記録があるわけでもなく、うろ覚えなまま改変等々をふんだんに盛り込んでお送りいたします。

今回は特に改変が多いかもしれません。



そうそう、それはそれとしまして!
陽雨さんのサイトの方で、私たちのTRPGに関するコンテツも作成されました!
よろしければそちらもどうぞ⇒
イラストやキャラ紹介などもありますよん!


<死の旋律①>

 その日、有馬秀は仕事仲間の銀木優に誘われ、エリック・エヴァンスのコンサートに足を運んでいた。なんでも、一緒に行くはずだった幼馴染みの都合が悪くなったらしい。同じ科の研修医と看護士、なおかつ大学も同じだった――彼女はその頃を覚えていなかったようだが――自分は比較的誘いやすかったのだろう。人からの誘いにさほど遠慮を覚えない有馬は、ちょうど休みが一緒だったこともあり、あっさりとその誘いに乗った。
 とはいえ、有馬は音楽に明るくない。聴くのは好きだしカラオケにも行くが、教養的なことになるとさっぱりだ。エリック・エヴァンスは大層腕の鳴るピアノ奏者のようだと耳にはしているが、どこがどう凄いのか、はっきりと理解できるかは怪しかった。
 それでもコンサートホールに行くこと自体が何となく非日常じみていて、しかもそれが古くからの友人ではなく最近話すようになった銀木からの誘いで、有馬は単純に楽しみだったのだ。
 そんなどこか浮ついた気持ちのまま、席に着いた有馬は隣の銀木に声を掛ける。

「銀木さんは音楽聴くの?」
「それなりに、でしょうか。私もそこまで詳しいわけじゃないんですよ」
「元々は幼馴染みの誘いなんだっけ?」
「はい。チケットを貰ったとかで。それなのに……」
「残念だったよなー。あ、もしかして実はデートだった?」
「は?」
「え、幼馴染みって男なんでしょ?」
「ええ。それが?」
「……ええー」

 男女が仲良くピアノのコンサートだ。自分は埋め合わせなので除外だとしても、相手の方はデートのつもりだったのではないだろうか。それを素も素の「は?」とは。それも、照れるでも蔑むでもなく、ただただ純粋な「は?」だった。
 見た目は小柄で細く、少女然としている彼女だが、中身は意外と男前だ。何の他意もなく自分を誘ってきたことからも、恋愛脳が死滅しているのかもしれない。そもそも有馬自身、身近な異性といえば妹くらいのものなのでよく分からないのだけれど。
 そんな他愛ない話を――知られたら大分失礼なことを脳裏で考えつつ――している内に、コンサートが始まった。
 まずはエリックの前に前座があるらしい。何人もの奏者が所定の位置についている。
 指揮者が腕を上げる。そうして音楽が奏でられる――。
 時に激しく、時に優しく、曲がテンポを変え雰囲気を変え自分たちの耳に届けられる。それは音楽に詳しくない者にとっても心地良いものだ。
 前座が終わると、拍手が一斉に送られた。有馬と銀木も共に拍手を送る。しかし出てくるのは「音楽っていいもんだなー」「ですね」などと簡単な感想くらいなものだ。小学生並な言葉しか出てこない自分が恨めしい。
 そうこうしている内にアナウンスでエリック・エヴァンスの紹介が行われた。前座の奏者たちが去った後、いよいよエリックが出てくる。
 ざわめきに覆われていたホールが静まりかえる。
 音が、響く――。
 それはまるで切り裂くように。嘆くように。吼えるように。ただ一つの音が、鼓膜を、脳を揺さぶる。
 それは確かに天才が為せる業なのかもしれなかった。
 だが。

(……?)

 ふいに眠気に襲われ、有馬は目をこすった。
 ――おかしい。確かに心地良いが、始まったばかりだ。興味のない音楽ならまだしも、いよいよこれからだというときにこの眠気だなんて。
 隣を見れば、銀木も同様にうつらうつらと船を漕いでいた。――まさか同じタイミングで?
 不思議に思ったのも束の間、断続的に流れ込んでくる音楽がどこか遠くなっていき、意識はどんどんと沈み込んでいった。



 気づいたときは、コンサートホールの玄関だった。

「う……、あれ……?」

 目をこすって起き上がれば、銀木もまた起き上がったところだった。いち早く異変を察知したらしい彼女はキョロキョロと周囲を見回している。

「先生、ここ……」
「玄関、だよな」
「……いつの間に?」
「さあ……」

 訳の分からない状態に、お互いに首を捻るしかない。

「夢遊病でしょうか……」
「二人同時に? まさか」

 生真面目に呟く彼女に苦笑する。仲良く二人揃ってホールから玄関まで来たというのか。夢遊病にしても器用すぎやしないだろうか。

「それに人気が全然ないのもおかしいし……って」
「お?」
「え、ドゥードゥーさん?」

 改めて周囲を確認した有馬は、そこに立つ大柄の男性に目を丸くした。
 スキンヘッドに厳つい表情、青い目をした彼は、ドナルド・ドゥードゥー、その人だった。以前、不思議な出来事に巻き込まれ、そこで顔を合わせている。そのときはダンベルを所持していたが、今は何故だろう、きっちりした服に警棒を持っていた。どのみち怪しさ満載だ。

「シュウか?」
「うっす。オレはコンサートに来てて……ドゥードゥーさんは何でここに?」
「警備員の仕事をちょっとな」
「喫茶店やってんじゃなかったんすか?」
「喫茶店だけじゃ経営が厳しくてな……」
「わ、わあ……」

 シビアな情報を聞いてしまった。何だか申し訳ない。

「先生、お知り合いですか?」
「え、あー……まあ、そーなるんかな? えっと、ドナルド・ドゥードゥーさん。フランス人」
「ドゥードゥーだ。喫茶店でオーナーをやっている」
「銀木優です。看護士です」

 こんな状況で頭を下げ合っているのもどこかシュールである。しかしそうツッコむのも野暮で、有馬は玄関に近寄った。その際に通り過ぎた受付にも誰もいない。取っ手に手を掛け、力を入れる。

「……開かない」
「本当か?」
「先生が弱いだけでは?」
「二人してオレを非力キャラにすんのやめてくんない!?」

 疑わしげな二つの視線に泣きたくなる。確かにドゥードゥーと比べれば力不足かもしれないが、それでも玄関の扉が開けられないほど非力なはずはないだろう。これでも人並み程度にはきっちり男性なのだ。
 二人も試してみたようで――本当に信用されていない!――開かないことを確認すると、途方に暮れた。

「どうしましょう」
「うーん、とりあえず人を探してみるしか……」
「……? 今、何か聞こえなかったか?」
「ドゥードゥーさん? 何かって何ですか?」
「いや……気のせいかもしれないが。音楽……か?」
「音楽? ホールに誰かいるんすかね?」

 有馬と銀木も何事かとドゥードゥーの方に視線を向け――異変に気づいたのは銀木が速かった。
 彼女は階段の方からフラフラと降りてきた人に目を留めた。有馬も遅れて気づくが、彼女が動き出す方が速い。危うげな足取りで降りてきた相手がこちらに襲いかかってくるや否や、彼女は思い切り拳を叩き込んだ。

「銀木さん!?」

 有馬はぎょっとして彼女に走り寄る。
 殴られ、がぁ、と呻いた相手は、怯んだのだろう。彼女から距離を取り、血走った目のまま逃げ惑った。その手には光るものがある。

「追いかけます!」
「銀木さん待って!?」
「え」
「深追い良くない!!」

 走り出そうとした銀木の手を咄嗟に掴む。勢いを削がれた銀木は焦ったようにこちらを振り返ってきた。

「何故ですか! 彼を捕まえて色々聞き出した方がいいのでは?」
「あのな! 向こうはナイフ持ってんの!」
「でも!」
「深追いしたら危険に決まってんでしょ!」
「ですが! ならば尚更のこと今の内に仕留めておいた方が後々安全では?」
「追跡できるよ」
「!?」

 にゅう、と割って入ってきたドゥードゥーにぎょっとする。彼はニタァ、と彫りの深い顔をますます深めて笑った。視線は、先ほどの相手が逃げた廊下に向けて。

「仕留めに行くなら任せろ」
「本当ですかドゥードゥーさん!」
「ああああもううううう」

 グッとサムズアップするドゥードゥー、目を輝かせる銀木。おかしい。ツッコミがいない。
 すると――突如、部屋に音楽が鳴り響いた。それは恐ろしい旋律で、まるで直接脳内に響き渡ってくるようだ。そのおぞましさに、背筋が凍る。息が詰まる。
 これはいけないものだと、自分の中に潜む何かが懸命に訴えてくる。

「「「……」」」

 できる限り関わりたくないが、このままじっとしているわけにもいかなかった。そんな焦燥にも似た感覚に有馬はため息をつき、勇み足で廊下へ出ようとする彼らの後ろに続く。仕方ない。このまま黙って気が狂うのもごめんである。なるようになれだ。
 廊下へ続く扉の前で、ドゥードゥーは耳をそばだてた。向こうに人がいないか確認しているようだ。――大胆なのか慎重なのか分からない人である。

「音はしないな。行くか」
「はい」
「うっす」

 一同はドゥードゥーを先頭に廊下へ出た。するとロビーの方で音が聞こえた。何かを倒したような物音だ。誰かがいるのは明白だった。
 三人は顔を見合わせる。またもやドゥードゥーが扉の前で耳をそばだて――「分からん!」と言うや否や、ドアを蹴り飛ばした。

「えええええ!?」
「ドゥードゥーさん!?」
「どうだ? 誰かいるか?」
「え? あ、えぇと……いない、っぽい……?」

 パッと見た限りでは、そこに人影はいない。
 有馬と銀木は警戒しながら中に踏み込んだ。そこそこの数のテーブルや椅子があるが、丁寧に並べられているとはとても言い難い。誰かが出入りしていたのは確かなようだ。
 ふと、銀木が顔を上げた。

「銀木さん?」
「今、受付の方で音が……」

 身構えた彼女は、椅子をつかみ、それを盾にするような格好で近づいていった。少し離れていた有馬は遅れてその後に続く。ちなみにドゥードゥーは椅子や机を物色しているようだ。マイペースといえばマイペースな人である。本当によく分からない。

「……子供?」

 受付の奥でうずくまっていたのは、一人の少年だった。高校生くらいだろう。身体は傷だらけで、ひどく怯えている。
 銀木が椅子を置き駆け寄ったので、有馬も慌てて近づいた。

「大丈夫ですかっ?」
「あ……」
「どうした? 怖かったよな。でももう大丈夫だからな」
「あ……あんたたちは、敵じゃない……?」
「おう。敵じゃない。危ないことはしないって約束するよ。だからひとまず落ち着こう。な?」

 銀木が簡易的な手当てをする中、彼の傍にしゃがみ込んだ有馬はゆったりとした口調で笑いかけた。怯えた眼差しを向けていた少年は、こちらに敵意がないのが分かったのか、徐々に震えを治めていく。

「僕……守谷シンジっていいます」
「守谷くんな。オレは有馬で」
「銀木優です」
「ドゥードゥーだ」

 ぬっと出てきたドゥードゥーに、少年――守谷がビクッと身をすくめる。大丈夫大丈夫と笑いかければ、彼は戸惑ったように一つうなずいた。

「守谷くん、どうしてこんなところに?」
「あの……僕、コンサートで演奏してて……」
「え? マジで? スゲーじゃん!」
「今日もエリックの前にフルートを吹いてたんだけど……」

 有馬と銀木は顔を見合わせた。正直なところ、前座の彼らの顔など覚えていない。そもそも音楽を聴きにきたのであって、奏者を見に来たわけではないのだから当然といえば当然だ。とはいえ、「知らない」と率直に告げるのも気が引けるもので。

「あー、いい演奏だったよな?」
「ですね。決して寝てませんよ」
「銀木さん、それ逆にめっちゃ怪しいから」
「本当ですもん」

 むう、と膨れる銀木に苦笑する。彼女がエリックの番になるまで起きていたことは有馬も知っているが。

「それで出番が終わって楽屋にいたんだけど、気がついたらここにいて……」
「守谷くんだけ?」
「ううん。他のメンバーも一緒だった。でも、みんなおかしくなっちゃったんだ。変な音が聞こえてきて……」
「変な音……?」
「そう。頭の中に響くみたいな不気味な音。その音を聞いているとみんながおかしくなって、中には殺し合う人たちもいて……僕もついさっきまで襲われて、ギリギリで逃げてきたんだけど……もうダメかと思った」

 そう言って顔を青くする守谷は、壮絶な光景を思い出したのか、縮こまるようにして首を振った。
 それが本当ならば、高校生が目の当たりにしていいような状況ではない。この怯えようも納得がいくというものだった。

「よしよし、怖かったなー。飴ちゃん食う?」
「僕、そんな子供じゃないんだけど……でも、くれるなら貰おうかな」
「おうおう、食え食えー」
「先生はどこにでも飴を持ち歩いていますね……。さて、とりあえず進むしかないとしても……また誰かが襲ってくる可能性がありますね。何か武器になるものがあればいいんですけど……」
「これ使うか?」

 ドゥードゥーが取り出したのは、警棒だった。警備員として使用していたものだろう。銀木が瞬く。

「いいんですか?」
「ああ。オレは椅子を持ってくから」
「その椅子で何するんすか!?」
「先生は? 何か持って行きます?」
「え? あー、うん……とりあえずボールペンくらい持っとくか」
「ボールペンでこそ何するんですか」
「投げる?」

 言いながらも曖昧に首を傾げる。そもそも戦闘なんて慣れていない。目くらましがてらに何かを投げるくらいしか思いつかなかった。ドゥードゥーほどの体格なら椅子を持ち歩いてそれで殴るなり何なりできるのかもしれないが、あいにく有馬には移動が面倒になるというデメリットの方が大きい。

「守谷くんにも何か持たせた方が……?」
「僕?」
「あー、いや。守谷くんはオレと手繋ごうぜ」
「え? あ……うん。お願いします」

 守谷は少し戸惑ったようだったが、そのまま素直にうなずいたので、有馬も笑ってその手を取る。
 ――安心させたい気持ちもあった。そして、勝手に暴れられないようにという警戒も、いくらかある。こんな状況下で、しかも自分たちより先にここにいたらしい彼は、他の者と同様にいつ発狂するか分からない。そんなとき、不意を打たれたらたまったものではないだろう。

(まー、そうならないのを祈りますか、っと)

 楽観さと悲観さをないまぜにしながら、有馬は笑みを取り繕った。警棒を構える銀木、椅子に座り出すドゥードゥーに目を向ける。
 自身を含めてとても心配になるパーティーだが、とにかく進むしかないことは――再び脳内に響きわたった旋律が、確かに示していた。


続く(といいな!)
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