参加したセッションのなんちゃって小説。続き。

冬薔薇に捧ぐ:、⑤(これ)

一応追記に放り込んでおきますが、リプレイということで、当然ながらシナリオのネタバレにもなります。
プレイヤーとしてこのシナリオでセッションするんだという方がいましたら、お気を付けください。

あくまでもなんちゃってです。
記録があるわけでもなく、うろ覚えなまま改変等々をふんだんに盛り込んでお送りいたします。


ラストです!
走り抜けられたぜ!



<冬薔薇に捧ぐ⑤>

 石版に向かった一行は、石版の裏面にあった花瓶に、棘のない白い薔薇を挿してみた。
 するとどうだろう、真実の口の中から微かな金属音がする。恐る恐る覗いてみると――そこから出てきたのは、小さな鍵だった。

「……この本に合いそうではあるけど……」
「勝手に見ていいもんかね」
「さあ。保志なら知ってるかもしれないよ」

 そんな翔太の発言で、行ったり来たりのすったもんだ、再び温室に戻ってきたのであるが……


「保志さん」
「おや。お疲れさまです」
「あの、この本のことなんですけど」
「……」

 作業する手を止めてくれたものの、ニコリと微笑んだその態度から、話す気がないのだと分かる。あの手この手でせがんでみても、彼は曖昧に言葉を濁すだけだった。その間も彼の視線はチラチラと翔太に向いている。翔太は特にその視線を気にしてはいないようだが。

(そういや保志さん、最初のときも翔太くんを気にしてたな……?)

 ――翔太の前では言えないことなのか。
 有馬はとっさに翔太の手を取った。翔太がきょとんと振り返る。

「お兄さん?」
「翔太くん。あのさ、オレ、やっぱ調子良くないみたいで。ちょっと気分悪いっつーか……上の休憩所で休んでてもいーかな?」
「え、大丈夫? もちろんいいけど……」
「あはは、あんまり大丈夫じゃないかも。だからついてきてもらってもいー?」
「分かった。任せてよ」
「サンキュー」

 ヘラリと笑い、有馬は背後の二人に目をやった。さすがに自分の意図には気づいていないようで、「大丈夫か?」という心配を含んだ眼差しが向けられる。多少の罪悪感はあるが、泉のときの後遺症とでも言うべきか、気分が悪いのは嘘ではない。
 大丈夫っすよー、とヒラヒラ手を振り、有馬は翔太を連れて二階へ上がった。




「先生、大丈夫かなー」
「顔色、良くなかったしなぁ」

 一方、やはり有馬の意図には気づかなかった二人は、揃って有馬と翔太を見送った。医者だという彼が一番具合が悪そうだというのも何だかおかしな話だ。自分たちにできることはないのが少し惜しい。

「あなたたちはどうされますか?」
「え? あ、えぇと、さっきの続きなんだけど……この本のこと、本当に何も知らねぇ?」

 保志に促され、ハッと我に返った宝条院は慌てて本を前に掲げた。
 すると今まで微笑みで黙殺していた保志は、しばらく眺めた後にクスリと笑う。まるで内緒話でもするかのように、いくらか声を潜めて。

「それは日記です」
「日記……? 誰のだ?」
「坊ちゃんの、ですね」
「翔太くんの?」
「翔太くん、知らないって言ってたぜ?」
「坊ちゃんは、鳥頭ですからね」

 はは、と保志の笑い声がささやかに響く。どこまでも得体の知れない人だ。

「お二人共。鍵は見つけたんですよね?」
「え、ああ……」
「それなら、見ることは可能ですよ」
「……」
「どんな【秘密】なんでしょうね」

 私から言えることはそれだけです。そう締めくくり、保志はまた微笑んだ。
 宝条院とドゥードゥーは気圧され、何と言っていいか分からない。保志の気持ちはさっぱり読めなかった。一体彼は何を考えているのか。
 ともかく礼を述べ、二人はぎこちなく保志から遠ざかり――そのまま足早に中を移動し、周囲を探り、そして、
 トイレの個室に入った。

「狭ぇ!」
「つらい」
「でも保志さんから見えなさそうなのってとりあえずここだもんな!」
「仕方ないな」
「で、どうする?」
「見る……か?」
「……見なきゃ分からないもんな?」
「というか、そのためにこんなところに入ったんだもんな?」
「だな」
「いっせーの、で見るか」
「おし」

 二人でぼそぼそと話しながら、覚悟を決め――鍵を開ける。
 鍵は拍子抜けするほどすんなりと開いた。パラリ、二人は揃って本を覗く。
 それは確かに日記だった。


2009年12月
一向に病気がよくならない。
中学の時に発病してからずっと病院にこもりっぱなしだ。
しかも、入学してすぐに発病したから、学校には友人がいない。
というか、俺の年齢ならすでに高校生でもおかしくない。
小学校からのやつも二、三年前から姿を見せなくなったし、もう俺のこと忘れちゃたのかなぁ……。
忘れちゃったんだろうなぁ。
少し、寂しい。

2010年3月
そろそろ春だ。
寒いだけだった冬もそろそろ終わり。
外では、花が咲き始めた。
そうそう珍しいことに今日神父様を見た。
いったい何をしに来たんだろう。身体を悪くしてるんだろうか。
思わずまじまじと見てしまった。

2010年4月
先月みた神父様と話をした。
どうやらこの病院の院長先生と知り合いらしい。
友達だと言っていた。
大人になっても友達でいられるのって、ちょっとうらやましいな、俺は独りぼっちだ。
そんなことをうっかり愚痴にして神父様に話してしまった。
恥ずかしい気持ちに駆られたのだけれど、神父様は穏やかな表情で、植物でも育ててみたらだろうかと提案してくれた。

2010年5月
神父様に勧められて花壇の一部を貸してもらうことにした。
ちゃんと世話をするとすくすくと育つ。
ちょっとだけ面白いなと思った。

2010年8月
花を育てるのが楽しい。
いろいろとチャレンジしてみようと思う。

2010年9月
俺が花を育ててると、いろんな人が見に来るようになった。
今までずっと一人ぼっちだったけど、なんか嬉しいな。
病院で友達もできたし!
将来はガーデニング関係の仕事についてみたい。
なれるかなぁ。

2010年11月
半年振りに神父様と再会する。
花を育てている、とっても楽しいとと言うと、神父様は喜んでくれた。
そして、冬の間は暇だろうかと、ちょっと変わった花の苗木をくれた。
植木鉢に入ったそれを俺は喜んでもらった。
病人に植木鉢はよくないって言うけど、どうせ迷信だ。
それに、いまだに病院から出れない俺からしたらどうでもいいことである。
この花は、いったいどんな花を咲かせるのだろう。
神父様は笑って「青薔薇だよ」なんて笑っていたけれど。
青薔薇を手に入れることができれば、きっと病気も治ると神父様は言っていた。
神父さまも冗談を言うみたいだ。

 ――2010年12月以降には、何も書かれていない。


「……」
「……」
「……どう思う、ドゥードゥーさん」
「やっぱり新聞の翔太くんとあの翔太くんは同じなんじゃ……とは思うが……」
「じゃあ、先生が見つけた青い薬を飲ませる、とか?」
「でも、あれは人間用なんだろ。翔太くんが人間じゃないって言ったのはそっちだぞ。翔太くんは敵なんじゃないのか」
「うーん……」

 謎が解けたような、深まったような。思わず唸っていると、コンコン、と軽いノックが聞こえた。ビクリ、と二人は硬直する。

「お二人とも? そこで何をされてるんですか?」
「「!」」

 保志だ。
 やばい。見つかった。
 特に悪いことをしていたわけではないのだが――何せ保志は日記を読むのを止める素振りは見せなかった――それでも気まずいことこの上ない。
 そんな焦燥感から二人はあわあわと声を上げた。声が上擦ってしまうが気にしてられない。

「あ、いや、ちょっと用を足しに!」
「……お二人で?」
「寂しくて!」
「……そうですか」

 思い切り不審がられている。それはそうだろう。何だ寂しくてって。寂しくて男二人が個室で何をするというのだ。

「早めにお戻りくださいね」

 一応触れないでおいてくれたようで――触れたくなかっただけかもしれない――保志はそう言い残し、その場を去ったようだった。二人はほう、と深く息をつく。何だかすごく疲れてしまった。

「……とりあえず有馬先生のとこ、行くか」
「だな」

 さすがにこれ以上、大の男が狭い個室に入っているのは限界だ。




 一方、有馬は翔太と共に休憩所に腰を落ち着けていた。毛布まで持ってきてくれたのでぬくぬくである。暖かいって素晴らしい。

「気分はどう?」
「さっきより落ち着いたぜー。ありがとな」
「どういたしまして」

 笑って返せば、翔太もニコリと笑ってくれる。彼はそのまま有馬の隣に腰を下ろした。動作につられて見ていると、じぃ、と彼は見上げてくる。まるで何かを見透かそうとでもいうように。それは何とも居心地の悪い視線だった。

「もう大分色々見て回ったけど……」
「うん?」
「お兄さんたち、帰らないよね?」
「……」
「帰るの?」
「……えっと」
「帰らないよね?」

 畳みかけられ、顔をひきつらせる。どこでスイッチが入ったのか。
 今、ここには有馬と翔太しかいない。早く二人が戻ってきてくれないかなと心の中で願いつつ、有馬は息をついた。とにかく相手を刺激するのはよろしくない。
 ――笑う。

「えっと……それはそれとして、翔太くんは?」
「僕?」
「外に出たいなーとかないのか?」
「……どうだろう。分からないや。出てみたい気持ちもあるけど……無理だろうし」

 きょとんと瞬いた翔太は、それでも思うことがあるのか、しんみりとした口調になった。そっかそっか、と有馬ものんびり返す。焦りは禁物だ。とにかく笑え。警戒させるな。

「じゃあ、もし出られたとして。何かやりたいこととかあったりする?」
「やりたいこと……?」
「そーそー。何でもいーんだケド。こんなことしたいとか、あんなとこ行ってみたいとか。そーゆう夢みてぇな?」
「夢、かぁ。……ガーデニング関係の仕事をしてみたいかな。やっぱり花を育てるのは好きだしね」
「へえ! いーじゃん、似合いそう!」
「へへ、そっかな」
「うんうん。ここの薔薇見てたら、翔太くんがそういうの上手いってのはスゲー分かるし。いーんじゃないかな」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」

 はにかんだ翔太は、やはり嘘を言っているわけではないようだった。だからこそ有馬も思う。――何とかしてやれないだろうか。
 と、そこへ宝条院とドゥードゥーが駆けてきた。その姿を見つけてホッとする。

「有馬。大丈夫か?」
「うっす、おかげさまで。つーか、どーしたんすかそんな急いで」
「いや、これ……ちょっと見てもらいたくて」
「あ、さっきの。何か分かったんすか?」
「とりあえず見てみろ」

 促され、訳が分からないまま有馬は本を受け取った。すぐ傍にいた翔太も覗き込んでくる。特に二人が止める気配もなかったので、有馬と翔太は揃って中身を読み進めた。

(日記……?)

 それは一人の少年の、闘病中の日記だ。大して長いものではない、簡潔な日記。治る見込みのない病気に対しての不安、孤独、花を育てることでのささやかな希望、そして。
 それはまるで――。
 有馬が読み終わると同時、ふぅん、と翔太が声を上げた。それはあまり関心のない声で、みんなは一斉に翔太を見る。

「途中で終わってるけど、この子、どうしたんだろうね」
「……翔太くんはこれが誰の日記か、心当たりはない?」
「ないなぁ」

 のんびり答える彼。――記憶がないのだろうか。そもそも、新聞記事の時にも思ったが、日付が随分と前だ。
 だが、やはり、新聞記事の翔太も、この日記の持ち主も、目の前の翔太も――同一なのではないかと思ってしまう。もう説明のつかない不可思議な出来事には散々直面しているのだ。今更、歳が違うことや記憶がないことくらい何だというのだ。

(……翔太くんの病気……)

 有馬は鞄から、一つの小瓶を取り出した。青色のそれは、一度蓋を外したからだろうか、ほのかに甘い。
 ちら、と宝条院やドゥードゥーへ視線を向ける。自分が何をしようとしているのか伝わったようで、彼らは迷った末、強くうなずいた。
 そのうなずきを受け、有馬は翔太に向き直る。にっこりと笑みを添えて。

「翔太くん」
「なぁに?」
「青薔薇をずっと探してるって言ってたよな」
「え、うん……」
「青薔薇の花言葉って何だったっけ」
「えぇと……奇跡だとか、夢が叶うとかかな?」
「うん」

 一つうなずき、翔太に小瓶を握らせる。翔太はきょとんとした面持ちで有馬と小瓶を見比べてきた。

「それな、あの青いタイルのとこにあって」
「え? あそこに?」
「あそこも青い薔薇みたいだったじゃん?」
「うん、そうだね……?」
「だからそれ、翔太くんにあげるよ」
「へ?」
「まー、ほら、ガーデニング関係の仕事につきたいって言ってたろ? 青薔薇と掛けて、その夢が叶うようにお兄ちゃんが魔法かけてやったから! 試しに飲んでみ?」

 まるで子供騙しのような言い分だ。有馬自身もそう思う。
 しかし翔太は好意的に受け取ってくれたようだった。信じたのか、単に好意を汲み取ってくれただけなのかは分からない。しかし彼は破顔し、「ありがとう」と瓶を開け、その薬に口をつけた。
 コクリと液体が彼の喉を通り――
 どこからか、拍手が聞こえた。これでツアーはおしまいだという声がする。それはこの場にいない人物――保志の声で。
 途端に、建物が激しく揺れた。
 それはただただ突然の出来事で。

「何だ!?」
「崩れる……!」
「逃げろ!」

 翔太を含めた四人は慌てて階段を駆け下りた。振り返らなくても、どんどんと建物、いや、薔薇園自体が崩壊していくのが分かる。巻き込まれたらどうなるか、考えたくもなかった。
 温室を出ると保志がいたが、彼は微動だにしなかった。自分たちの行方を邪魔するわけでもない。ただただ見送っている。

「……!」

 声を掛けようとし、しかし、やめた。
 そのまま一気に通り過ぎる。保志が崩壊に巻き込まれる――。

『それなりに面白かったですよ、坊ちゃん』

 とっさに声を拾った宝条院が振り返るが、保志は崩壊に巻き込まれた後だった。気になる意識を振り切り、全員が出口へ向けてひた走る。
 薔薇園の敷地から逃れ、一同はその勢いのまま黄色い薔薇のアーチまでたどり着いた。まだ油断はできない。崩壊は続いている。
 翔太、ドゥードゥー、宝条院とくぐり抜け、有馬もそのまま抜けようとし――ふいに足を取られた。

「うぁ!?」

 勢い余って倒れてしまう。慌てて見るが、足首に太い蔓が巻き付いていた。それはまるで逃がさないと言わんばかりにきつく締め付けてくる。

「……っ!」

 ドク、と心臓が脈を打つ。外せない。このままでは――。

「おい!」

 すぐ近くを走っていたおかげだろう、異変に気づいた宝条院が駆け戻ってくる。彼はぎょっとしたように有馬に巻き付いている蔓を見、それから力任せに蔓に手を伸ばした。

「引きちぎるぞ!」
「っす……!」

 二人で力を込めれば――ようやく、蔓が緩む。有馬はすぐさま足を引っこ抜き、宝条院に引っ張られるままに再び駆け出した。
 走って、走って、そうして。




 ハッと気がついたら、寂れた薔薇園の前にいた。意識が飛んでいたのだろうか。先ほどまでいた薔薇園とは少し違うようで、有馬たちは恐る恐る周囲を確認する。
 目の前には、青年が一人倒れている。見たことはないが、翔太の面影が残る彼は恐らく花村翔太なのだろう。有馬が見たところ、衰弱しているようだが生きてはいるようだ。呼吸は安定している。

「帰れた……?」
「みたいだ、な?」
「危なかったな……」

 思い思いに三人は呟き、顔を見合わせ――盛大に息をついた。死ぬかと思った。本当に。

「つーか宝条院さん、マジ助かりましたぁぁぁ」
「いやいや、いいって。でもビビったわ。大丈夫だったか?」
「やだときめく! 宝条院様!」
「なんかその呼び方やだな!? 普通に英介でいいぜ」
「い、イケメン……! あ、オレは有馬でも秀でも何でもいーっすよ」
「すぐるってどんな字?」
「秀逸とか秀才とか、秀でるって字っすねー」
「じゃあしゅうでいいか」
「しゅうな」
「あれぇ!?」
「てーか、ドゥードゥーさんダンベル持ってんのに速かったな!?」
「火事場の馬鹿力ってやつだ」
「やだこのフランス人、変なトコでめっちゃ日本語知ってる……」
「あっ、つーかオレの鍬!」
「それより翔太くん! 救急車!」

 わぁわぁと言い合いながら、ともかく翔太のために救急車を呼び、自分たちも怪我の有無や荷物の確認などをざっと行う。初めはどこか警戒していたが、救急車への電話が繋がったり、地図アプリが正常に働いているのを確認し、ようやく緊張が解け始めてきた。
 ――そう。ようやく、日常に戻ってきたのだ。
 戻ってこれたのだ。
 そのことが、ただ、嬉しい。

 果たしてこの出来事が何だったのか。突然の非日常は、これで終わりなのか――今はまだ、何も分からないけれど。
 ただただ、戻ってきた日常を、三人はゆっくりと享受し始めた。
 そこにそれぞれの、虹色の薔薇を添えて。






というわけで、好き勝手に書き始めた、クトゥルフ神話TRPGリプレイ風小説、『冬薔薇に捧ぐ』でした!
大分端折ったり改変したりしていますが、大まかな流れはこんな感じだったかなと。
KPを務めてくれた陽雨様、共にプレイしてくださった鷹路様、じますけ様、シナリオ提供者あずま様、その他諸々に感謝です。
また、ここまでお付き合いくださった方がいましたらありがとうございました。

セッションの間は波瀾万丈でハラハラドキドキしました。ニャル様のせいでいきなりロストするかと思いましたしね。もう恐ろしいったら。
まだまだセッションはやっているので、他にも書けるかなー? どうかなー? と色々考えちゃいますね。
楽しんでいけたらなーと思います。へへへ。

ではでは改めて、ありがとうございました!
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