リプレイ風小説:冬薔薇に捧ぐ③

参加したセッションのなんちゃって小説。続き。

冬薔薇に捧ぐ:、③(これ)

一応追記に放り込んでおきますが、リプレイということで、当然ながらシナリオのネタバレにもなります。
プレイヤーとしてこのシナリオでセッションするんだという方がいましたら、お気を付けください。

あくまでもなんちゃってです。
記録があるわけでもなく、うろ覚えなまま改変等々をふんだんに盛り込んでお送りいたします。


というわけで続きなんですが、今回のがあれですね。私がもうダメかと思ったところでもありました。はい。怖いよ。某暇神様怖いよ。


<冬薔薇に捧ぐ③>


 初めに案内されたのは、とある石版の周辺だった。周囲には、赤い薔薇、黒赤い薔薇、黄色い薔薇が植えられている。どれも鮮やかで美しいものだった。よく手入れされているのだろう。
 石版は、まるで真実の口にそっくりな彫刻が施されている。有馬がしげしげと眺めていると、宝条院がひょいと後ろから覗き込んできた。

「手、入れてみるか?」
「いやーオレ超絶正直者なんでー」
「じゃあ入れても問題ねーじゃん」
「あっはっはー? 宝条院さんこそ入れてみたらどうっすか?」
「オレ嘘つきだから」
「矛盾!」

 そんな小突き合いのやりとりをしている間に、ドゥードゥーが石版の後ろを覗きに回った。そんな彼から「お?」と声が上がる。

「ドゥードゥーさん、何かありました?」
「いや……花瓶と、なぞなぞ?」
「なぞなぞ?」

 不可解な言葉に二人と翔太も回ってみる。そこには確かに一輪挿しの花瓶、そしてなぞなぞが書かれていた。

『赤き薔薇を胸に挿した者、白き薔薇を胸に挿した者、黄色い薔薇を胸に挿した者、ピンクの薔薇を胸に挿した者、虹色の薔薇を胸に挿した者。
 彼らは問う者である。
 もし【ソレ】について答えるのならば、お前は一体誰に伝えるのが適切であると考えるだろうか。
 最も相応しいと思う者を選べ。
 それが適切である場合、真実の口はお前に真実へと続く【しるべ】となるものを与えるだろう。
 ただし、それを手に入れるチャンスは一度だけだ』

「翔太くん、これは……?」
「さあ……僕も初めて気づいた」
「意味分からんっすな」
「分かんねーな」

 四人は揃って首を傾げる。とても意味深なことは分かるのだが、この謎が何を意味するのかはさっぱりだ。
 ひとまず記憶に留め、有馬は周囲に視線を巡らせた。どれも目を奪われるような薔薇たちだ。その中でも――。

(……ん?)

 ふと違和感に引っかかり、有馬は黒赤い薔薇の方へ歩み寄った。何やら一部だけ地面が掘り返されているとでも言うべきだろうか、土がおかしい。よくよく見てみれば、どうやら根元に何かが埋められているらしい。

「ここに何か……、え」

 ざっと確認すると、そこから出てきたのは――白い腕の骨、だった。
 仮にも、医師を目指している身だ。とっさに分かる。その骨が人間のものなのだと。

(何で……こんなものがここに)

 突然の衝撃に、心臓が嫌な軋みを上げる。
 そんな有馬に構わず、目の前の薔薇は黒く、赤く咲き誇り続けている。それは生き生きと恐ろしいほどに美しい。まるで血のような毒々しい色。そう、まるで、この薔薇たちは人間を糧にしているとでも言うような――。

(……まさ、か)

 有馬は緩くかぶりを振った。馬鹿げている。直感は嫌なほど不吉を訴えてくるが、いくら何でも考えすぎだ。訳の分からないことが続きすぎて、きっとナーバスになっているのだ。
 必死に言い聞かせながら現実に目を向けようと視線を下ろせば、骨と一緒に手帳と小瓶も見つけた。恐る恐る手に取ってみる。嫌な予感しかしないのは何故だろうか。
 手帳を開くと、そこには乱雑な字が書き連なっていた。

『しくじった。
 まさか、彼の正体があれだったなんて正直だまされた気分で、胸がいっぱいだ。
 このままでは俺たちは全滅だ。食べられてしまうだろう……。
 こんなことになる前に聞いていた話をまとめると、このようなことを何度も繰り返しているようだし、この手帳を次にやってきたやつらのために埋めておく。
 ついでに、使えるかどうかわからないが、枝枯れ病(キャンカー)の薬も一緒にはさんでおこう。
 こいつを使えば、きっと助かるはずだ。強力なやつだからな。
 俺はもう使えないから……くそ、あのお茶にクッキー……エライもんをくらっちまっ』

 文章は不自然に途切れていた。
 彼とは。正体とは、食べられるとは、繰り返しているとは。
 書いた者の末路がどうなったのか、有馬には分からない。いや、分かってはいるのだが、あえて目を背けた。
 しかし――。

(お茶に、クッキー……)

 ――それは、きっと、有馬たちが食べたものでもあるのだろう。
 それはつまり、自分たちもこの手帳の持ち主と同じ末路を辿ることになることを示している。
 それは。つまり。

「どうした?」
「……あ、ドゥードゥーさん。いや、その……何て言ったらいいんすかね」

 気づかない内に随分と途方に暮れた顔をしていたらしい。不思議そうにドゥードゥーがやって来たので、有馬は慌てて顔を上げた。苦笑する。さすがに普段はお調子者を自負している自分でも、どんな反応をしていいものか。
 怪訝そうに手帳を見たドゥードゥーもまた、顔色を変える。やはり衝撃は強かったらしい。とはいえ、この手記のようなものが真実であるかどうか、まだ確定しているわけではない。前向きに考えるしかないだろう。
 有馬は小瓶を軽く揺らした。リキッドタイプのソレはゆらゆらと揺れる。

「これがキャンカー、っすよね」
「みたいだな」
「鞄に入れときますか」
「頼んだ」
「ウィッス」

 完全に荷物持ちだが、仕方ない。いそいそと仕舞い込む。
 さて、と周囲を見ると、宝条院と翔太が何やらキャッキャとお話をしていた。楽しそうだ。平和なものである。
 一寸迷い、有馬は宝条院に話すのをやめた。現状では不確かな情報ばかりだ。無闇に動揺させるのも良くないだろう。
 二人揃って宝条院たちの方に行けば、気づいた翔太が顔を綻ばせる。

「あ、お兄さんたち。もうここはいいの?」
「おー。次の場所行こうか、翔太くん」
「いいよ、ついてきて」





 次に連れてこられたのは、広場の右手にある池だった。池はひょうたん型をしていて、白薔薇が植えられている。池の中央には橋がかかっており、水面には薔薇の入ったガラスの器が漂っていた。インテリアなのだろう。幻想的な雰囲気がよく出ている。

「ここは、ひょうたん池だよ。綺麗でしょう?」
「おお~。壮観っすなぁ」
「いいなぁ」
「ちなみに別の名前でも呼ばれてるみたいだけど……何だったかなぁ。保志なら知ってると思うんだけど」

 そんな翔太の漠然とした案内を元に、三人はぐるりと池を回った。好きに見ていいということだったので、有馬とドゥードゥーは橋の方にも行ってみる。ちなみに宝条院は池の周囲で翔太とまた話し込んでいるようだ。随分と仲良くなったらしい。
 橋の方から覗き込むと、ガラスの器に入っていたのはしおれた白い薔薇だった。それを知った途端、何とも寂しげな雰囲気に感じられてしまう。

「ドゥードゥーさん、そっち、何かありましたー?」
「いや、どれもしおれた薔薇くらいだ」
「っすね。そんじゃ戻りますか」

 特に何てことのない状況を確認し、宝条院たちの元に戻る――が。

「……あれ。宝条院さん?」
「ん?」
「顔色悪くありません?」
「いや? いや、大丈夫だぜ! はは……」
「?」

 どうしたことだろう、先ほどまで無邪気に戯れていた宝条院の様子がおかしい。少し離れていただけで何があったのか。
 あからさまに慌てた彼は、しばらくうろうろと視線を彷徨わせていたが、ふいに翔太に目をやった。

「なあ……翔太くん」
「なぁに?」
「ここの池が何て呼ばれてたか気になるから、保志さんに聞いてもいいか?」
「いいよ? 温室にいるだろうし、連れてきてあげる」
「マジか。サンキュー」

 ううん、と笑った翔太が駆けていく。
 いきなりの宝条院の提案に、有馬とドゥードゥーは顔を見合わせた。
 そんな自分たちの反応に気づいているのだろう。宝条院は強張った表情で翔太の姿を見送り、彼の姿が見えなくなった途端、囁くように口を寄せてきた。

「……さっき、泉見たんだけどよ」
「はい?」
「泉の姿に映った翔太くん……人間じゃなかった」
「――は?」
「何だって?」
「ほら、あのバスの運転手みたいな……蔓でできた人形っぽい姿だったんだよ」

 そう言う宝条院の顔は、蒼白だ。嘘を言っているようには思えない。

「一瞬だったし、自信はねぇ。でも……」
「……気をつけた方がいい、っすかね?」
「だな……」

 三人で思わずヒソヒソ声のトーンを落としていると、思いのほか早く翔太が保志を連れてきた。

「皆さん、どうされました?」
「あ、保志さん! ちーっす! すいませんわざわざ!」
「いえいえ」
「えーっと、ここの池の名前が知りたくて!」
「こちらの池の……ですか。そうですね。坊ちゃんは『ひょうたん池』と呼んでいますが、正式には『真実を映す水面』という名前があるのですよ」
「真実を映す水面……?」

 随分と大層な名前だ。
 そう思って首を傾げると、保志はニコリと微笑み、優雅にうなずいた。

「ええ。良ければ、覗いてみてはいかがです? 何か映るかもしれませんよ」
「あ、オレはさっきもう見たんで!」
「そうですか。お二人は?」
「あー、まだ、っすねぇ」
「ドゥードゥーもだ」
「では、ご覧になっては?」

 にこやかに促され、言葉に詰まる。ここで断るのも変だろう。何より――好奇心もあった。
 ちら、と有馬とドゥードゥーは泉に目を向ける。そこに映ったのは――何の変哲もない風景だ。

「……何もない?」
「だな」

 いくらかホッとした様子でドゥードゥーが泉から離れていく。有馬はわずかに眉を寄せた。あの宝条院の様子は、嘘をついているようではなかった。だというのに、何の変わりもないだなんて。
 怪訝に思い、思わずもう一度泉に視線を走らせる。
 そして。

(――!?)

 穏やかだった保志の姿が、水面の向こうではおぞましいものへと変わり果てていた。触腕、鉤爪、手が自在に伸縮し、蠢き、不気味に笑う。形の定まらない無数の肉の塊。それが顔だとも分からないのに、ソレは確かに自分を見て笑っている。
 思考が、脳が、身体が、拒絶する。

 ――ソレは、いけない。
 いけない。触れてはいけない。
 知っては、いけない。

「どうしました?」
「……あ」

 すぐ近くで顔を覗き込まれ、有馬は我に返った。反射的に距離を取る。しかし、身体の動かし方を忘れてしまったかのようにぎこちない。ただただ、静かに、しかし確かに脳はパニックを起こしていた。

「顔色が優れないようですが……」
「……あ、あー、いや! 大丈夫! 大丈夫でっす! ちょっとボーッとしてました!」
「そうですか? でしたら、温室で休んでいただいても良いのですよ。ご案内しましょう」
「いえ! ぜんぜん! ほんといーんで! はい!」
「……そうですか。では、私は温室にいますので、ご用がありましたらまたお呼びください」

 ペコリと頭を下げた保志が、笑みを浮かべて離れていく。
 それを見送ってもなお、有馬は嫌な動悸に冷や汗が止まらなかった。今、自分がどんな表情をしているかも分からない。きちんと笑えていただろうか。

「おい、本当に大丈夫か?」
「……大丈夫っす……」
「お兄さん、元気ないみたいだけど」
「あはは……」
「具合悪いなら保志さんの言う通り休んでた方が……」
「それだけはやめて。ほんとやめて。みんなと一緒にいます。マジで。ガチで」
「?」

 有馬は力なく首を振る。気遣いは嬉しいが、あの保志と二人で温室にいるとなったら今度こそ気がおかしくなりそうだ。とはいえ、今見たことを説明する気力もない。そもそもどうやって説明すればいいのか、今の有馬には十分な言葉を持ちえない。何より――あれを言葉で表現するなんて、到底無理だ。

「うーん……つらかったらちゃんと言ってね。それじゃあ、次の場所に案内するよ」

 そう言って翔太が笑う。その笑みに邪気はないように見えたが――何が真実なのか、有馬たちにはいよいよもって分からなくなりつつあった。



続く?
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Author:あずさ
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二つ名:囁(アビス)
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