リプレイ風小説:冬薔薇に捧ぐ②

参加したセッションのなんちゃって小説。続き。

冬薔薇に捧ぐ:、②(これ)

一応追記に放り込んでおきますが、リプレイということで、当然ながらシナリオのネタバレにもなります。
プレイヤーとしてこのシナリオでセッションするんだという方がいましたら、お気を付けください。

あくまでもなんちゃってです。
記録があるわけでもなく、うろ覚えなまま改変等々をふんだんに盛り込んでお送りいたします。

それにしても、まだ、ツアーが始まってもいないんだぜ。おかしいんだぜ。



冬薔薇に捧ぐ②>


 案内された温室は、喫茶スペースを兼ね備えており、本棚なども置かれていた。一応は休憩所のようなものでもあるらしい。三人は翔太によってすぐにテーブルへ案内された。
 中には落ち着いた面持ちの男性が待機している。三人を椅子に座らせた翔太は、慣れた様子で男性に「保志、お客様にお茶とお茶菓子を」と指示を出した。男性は素直に従い、奥からお茶とクッキーを持ってくる。
 出されたお茶は、湯気も出るほどに温かい。ちら、と有馬は目の前に出されたそれと二人を見比べた。

「何か?」
「あぁいえ、保志さん? イケメンっすねー!」
「そんなことありませんよ。ありがとうございます」
「このお茶とクッキー、何か入ってるんすか?」
「薔薇が使われていますね」
「さすが薔薇園なんすねー」
「ええ」

 ニコニコと笑顔で応対するものの、あちらも表情は揺らがない。読めない。

「お兄さんたち、飲まないの?」
「寒かったでしょう。温まりますよ」
「……」

 正直なところ、得体の知れない場所に当然のように存在しているこの施設はやはり得体が知れなくて、有馬としてはあまり食欲も湧かなかった。二人から敵意のようなものは感じられないとはいえ、有馬としては気持ちも身体も追いつかない。

「宝条院さんとドゥードゥーさんは……」
「あー……飲むかな。寒いし。腹減ったし」
「そうだな」
「っすねー。じゃあ、イタダキマス」
「「いただきます」」

 好意を無駄にするのも気が引けて、三人はそれぞれお茶とクッキーに口をつけた。ふわりと薔薇の香りが鼻を抜ける。あまり食べたことのない味だが、口には馴染みやすかった。心なし、身体が温まり余計な力が抜けてくる。

「あ、美味い」
「生き返るわー」
「生きてるって素晴らしい」

 三者三様に感想を述べれば、翔太と男性は嬉しそうに笑ってみせた。

「それじゃあ、一応説明させてもらうね。今日はようこそ、天花薔薇園無料観光ツアーへ。僕はここの主人をしている翔太といいます」
「え? 主人? 翔太くんが?」
「そうだよ。ある日、ある人から任されてね」
「へー。若いのにすげぇなぁお前っ」

 宝条院が感心したように翔太の頭を撫でくり回す。撫でられた翔太は、へへ、まあね、と少し得意げに笑みをこぼした。

「それから、こっちが保志。薔薇園の管理人」
「保志と申します。よろしくお願いします」

 頭を下げた男性――保志は、ひどく落ち着いた所作だった。歳はそう離れていないだろうに、いやに丁寧なその仕草は、何だか近寄りがたさすら感じるかもしれない。

「翔太くんはここの薔薇の世話をしてるんだ? ずっと?」
「そうだよ。結構大変だけど、世話は嫌いじゃないから……。それに、もしかしたら青い薔薇が見つかるかもしれないと思って」
「青い薔薇?」
「そう。ある人から言われてね、ずっと探してるけど見つからないんだ。青い薔薇は奇跡なんて言われてるくらいだし……本当はないのかもしれない。だけど……もしかしたら、と思って。いつか、見てみるのが夢なんだ」

 しみじみと言う翔太の表情に嘘はなさそうだ。へぇ、と三人も思い思いに感心の声を上げる。しかし随分と漠然とした話である。

「えーと……翔太くん、まだ小さいけどいつからここにいんの?」
「ずっと」
「ずっと? どれくらいだ?」
「さあ。忘れちゃった」
「坊ちゃんは、忘れやすいですからね」

 クスリ、と笑って保志が言う。言い方は穏やかだが、仮にも主人であろう翔太に言うべき台詞だろうか。翔太は翔太でいつものことなのか、あまり気にした風ではないけれど。
 そんな奇妙な雰囲気を察してか、それとも単純にか、宝条院が再びグリグリと翔太の頭を撫で回した。

「いやーそっかそっか、お前ほんと偉いな~。どうだ? 薔薇もいいけどキャベツも育ててみないか?」
「えぇ? キャベツかぁ、そうだなぁ……」
「あれあれ? 宝条院さん、翔太くんをどうするつもりですか? もしかして危ない趣味っすか~?」
「ば!? ちげーよ!?」
「ええ~?」
「ほんとちげーし!?」

 ニヤニヤと言ってみれば、面白いくらい反応してくれた。思わずケラケラ笑ってしまう。かくいう有馬も子供は好きだ。だから口では「怪しいなぁ」と言いつつも、むしろ親近感が湧いていた。
 ちなみにドゥードゥーはといえば、お茶を飲むのに忙しいらしい。あまり会話に参加せず、美味しそうに味わっている。

「さて……みんな食べ終えたかな」
「ん、ゴチソーサマ」
「美味しかったぞー」
「うむ。美味しかった」
「ありがとう。それからみんなには、まず、これをプレゼントだよ。今日、このツアーに参加してくれたことに感謝を込めて」

 そう言って翔太が渡してくれたものは――棘のない虹色の薔薇だった。

「おぉー」
「虹色の薔薇なんてオレ初めて見た……ってドゥードゥーさん?」
「ん?」
「何でくわえてんすか!?」
「カッコいいか?」
「ま、まあ、ある意味は?」

 薔薇を口にくわえ、ポーズを取るドゥードゥーに苦笑する。外国人がやっているということで、ある意味絵にはなるのかもしれない。しかし滅茶苦茶シュールだ。そろそろダンベルは下ろした方がいいのではないだろうか。

「く、オレも負けてらんないぜ……!」
「宝条院さんは何と戦ってんすか」
「有馬はポケットか。つまんないぞ」
「げ、解せぬ……!」

 何でだ。悔しい。普通にしまっておいただけなのにダメ出しされるだなんて、地味に、しかしめちゃくちゃ悔しい。

「特に質問がなければ僕が薔薇園を案内するけど、どうする?」

 三人のやりとりをクスクスと楽しげに見ていた翔太が提案してくる。あ、と有馬は咄嗟に手を上げた。

「はい! はいはい!」
「お兄さん、何かな?」
「帰るにはどうしたらいいかなー?」
「――帰る?」
「そー。いや、オレ、いつの間にかここにいて。でも今日仕事だし、あんまり長居するのもなぁって? だから帰りのバスとか――」
「ないよ?」
「……ん?」
「帰りのバスなんて、ないよ?」
「え、でも、仕事……」
「お兄さん、今日はお休みの連絡をしたんでしょう?」
「……」

 スッ、と有馬は口を閉ざす。
 何故、それを、彼が知っているのか。自分でも分からない現象だというのに、何故――。

「お兄さん」
「は、はい」
「帰らないよね」
「……ん、んー? 見終わったら帰る……よ?」
「帰るの?」
「ん、んー」
「帰るの?」
「ん、んー!? ま、まあとりあえず見てみよっかな! せっかくだし! ワーイ薔薇キレーだなぁ!」

 わざとらしいほどの言い方でヘラリと笑みを向ければ、翔太はニコリと「うん、ここの薔薇は僕の自慢だよ」と笑ってみせた。それと共に、異常なほどの威圧感が消え失せる。
 有馬はほう、と息をついた。――何だったんだ。小さな子供とは思えないほどの迫力だった。チラと視線を向ければ、宝条院とドゥードゥーも気まずそうな表情をしている。彼の態度の違和感は、どうやら自分だけが感じていたわけではないらしい。そのことに少しだけホッとする。

(てーか、ぶっちゃけめちゃくちゃ怖かったんすケド!?)

 とはいえ、だ。帰る手がかりは今のところ彼らしかない。
 しばし迷った末、有馬は笑みを取り繕った。気持ちを切り替え、ちょいちょいと翔太を手招きする。

「翔太くん、翔太くん」
「うん? まだ何かあるの?」
「飴ちゃんいらね?」
「飴?」
「そー。ツアーのお礼? みたいな? 良ければドーゾ」

 ポケットから袋に包まれた飴を差し出せば、きょとんと瞬いた翔太は、やがてにっこりと笑った。

「ありがとう。じゃあ、僕からもこれあげる」
「……飴?」
「うん。辛くてすーすーした味なんだけど、僕はちょっと苦手だから」

 彼が渡してくれたのはガラスの小瓶だった。中には人数分のカラフルな飴が入っている。ラベルには「おくちなおし」の文字。
 ミントか何かかなと思いながら、有馬はそれを受け取った。「貰ったっす」と言えば「いぇーい」と宝条院から反応が返ってくる。ノリがいい。ついでにハイタッチをしておく。ノリだから仕方ない。
 とりあえず鞄を持っているのが自分だけだったので、有馬はそれを鞄にしまい込んだ。

「食べたければ言ってくださいねー」
「おーう」
「ドゥードゥー、ミントは少し苦手だ」
「ドゥードゥーさん可愛いトコあるんすね!?」

 この体格と顔でミントが苦手とは。大好きすぎても違和感だけれど。

「他にしたいことはないかな? なければ――」
「あ、オレ、ちょっと本が気になるぜ」
「そうだな。見てもいいか? まあ、せっかくだし」
「うん、構わないよ」

 宝条院たちの提案に、翔太は何のためらいもなく許可してくれる。特に見られてまずいものもないのか。不思議に思いながらもお言葉に甘えて周囲に視線を巡らせる。とはいっても、めぼしいものは本棚くらいのものなのだが。
 本棚には一見すると、やはり植物に関する本が多かった。その中でも三人が気になったのは――花言葉の本、古びた新聞、それからハードカバーの本だった。
 三人は一様に顔を見合わせ、それぞれに視線を走らせる。

 花言葉は、赤薔薇、白薔薇、黄色い薔薇、ピンクの薔薇、虹色の薔薇、青薔薇についてそれぞれ記載されていた。他に薔薇の部位や、棘のない薔薇、『三つの蕾にひとつの薔薇』なんてものもある。それらにざっと目を通してから――正直花言葉を見てもピンと来ないというのが本音だ――有馬は新聞記事にも目を通した。
 その新聞は、市内の病院から花村翔太(17)が行方不明になったという記事であった。記事によると、彼は心臓の病気を患っていて、中学2年生になってから病院からほとんど出たことがないと言う。ただ、ここ最近は調子がよくて、中庭に散歩してくると言い病室を出た。しかし、一時間で戻るという言葉に反して、彼は戻ってこなかった。病院側は探したが、幾ら時間が経過しても見つからず、警察に届出を出したとのこと。なお、当時、花村翔太は珍しい花を育てることを趣味にしていた――。

(これは――)

 「もしかして」と「まさか」が入り交じる。
 目の前の少年はどう見ても小学生、良くて中学生だ。しかし名前や花を育てることが趣味といった符号を、ただの偶然と切り捨てていいものか。
 有馬がすっきりしない気持ちでいると、似たような表情で宝条院がハードカバーの本を持ち上げた。それはどうも鍵がかかっているようだ。表紙には三本の蕾と一つの薔薇の絵が施されている。

「なあ翔太くん、これは?」
「さあ……お客さんの忘れ物じゃないかな」
「お客さん? オレたちの前の?」
「よく分からないや」
「坊ちゃんは、忘れっぽいですから」
「保志さんはこれ、誰のか知らないんすかー?」
「……さあ」

 保志は、やはり微笑んで首を傾げる。しかしその視線は翔太に向いているようだった。何か含むことがあるのだろうか。訝しげに思うが、保志が口を割る気配もない。

「お兄さんたち、もう大丈夫かな? 良ければ薔薇園を案内するけど」
「おう」
「頼む」

 何はともあれ移動しようと――。

「あ、お兄さんの鍬はこちらで預かってもいいかな。うっかり薔薇を傷つけられたら困るから」
「あー……マジか……オレの鍬……」
「オレのダンベルは?」
「ダンベルは……ま、まあいいんじゃないかな」
「よっしゃ」
「ドゥードゥーさん、筋トレしながら薔薇見るんすか」
「筋肉も見るか?」
「ぶはっ」

 何だかんだ、誰もがノリがいいから困る。主に有馬の腹筋的に。
 翔太はそんな自分たちにどこか困惑した様子だったが――困った大人たちだ――やがて切り替えたのか、外へ続くドアを開けた。再び視界に入るのは、色とりどりのたくさんの薔薇。
 にっこりと翔太が笑う。

「じゃあ、まずはどこから見ようか」


続く?
スポンサーサイト
Home |  Category:TRPG |  コメントアイコン Comment0  |  Trackback0
Tracback

Tracback URL :

Comment

    
Home   Top
 
プロフィール

あずさ

Author:あずさ
武器:シャーペン、ノート、パソコン、ポメラ
レベル:29
二つ名:囁(アビス)
あだ名:エゴイスティックスケコマシ
四字熟語:好色生活
(※二つ名メーカー、脳内メーカー等による結果)
アイコン:朧夜緋雨さまから

最新記事
カテゴリ
呟き、囁き、ぼやきに寝言
最新コメント
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QRコード