続・ズガ鳥のもしもなルート

「ズガ鳥のもしもなルート」がほんの少し続いてしまったぜ。何故なんだぜ。
とはいえ実際は大して進んでませんが。

一応

*鳥の目が堕ちてズガターカ鳥の目になった後、ズガターカが一旦地球から撤退したルート
*地球とは違うルールの働く基地内で過ごしたズガターカ鳥の目の肉体年齢は止まったまま
*三幹部による根気強い子育ての結果、10年かけゆっくり精神が肉体に追いついたズガターカ鳥の目
*こんなにも健やかに育ちました☆
*親代わりの三幹部にはやっぱり懐いてる
*無敵戦隊ポイントガードにいた記憶は抜けている

という設定の続きです。
殴り書きは楽しいなぁ。


*****


 思い思いに飲み物を頼みちょっとしたつまみを口に運んでいたメンバーは――何も乾杯したいことがあったわけでもないので合わせる必要性も感じなかった――赤司が店に入ったとき、揃って顔を見合わせた。ひどい顔をしている。
 表面上かろうじて取り繕っているが、疲労が滲み出ているのは一目瞭然だった。顔色だって蒼白と言ってもいい。
 それはあの頃を彷彿とさせた。
 無敵戦隊ポイントガードとして活動していた頃。メンバーの二人が基地から去った後。気丈に振舞っていたものの、あのときの彼はやはり消耗が激しく、今までの覇気が感じられなくなっていた。それも時間が経ちいくらか回復したと思っていたというのに、これは――。

「赤司……?」

 降旗がそっと声を掛ける。そこで唐突にこちらに気づいたように、赤司は顔を上げて瞬いた。

「ああ……すみません、遅くなりました」
「いや、それはいいけどよ。随分疲れた顔してんな。仕事、忙しいのか?」
「いえ……」

 曖昧に笑みを取り繕った彼はそのまま降旗の隣に腰を下ろした。店員にウーロン茶を注文する。
 何となく気にかかり笠松は眉を跳ね上げた。

「飲まねぇのか」
「……そんな気分ではなくて」
「何や。辛気臭い顔してどないしたん」
「そうだぜ。そりゃいつもオレらで集まっても楽しい話題って感じじゃねーけど、それにしたってひどすぎんだろ」

 苦笑する今吉、軽い調子で枝豆を赤司に押しやる福井。花宮は何も言わずに酒を呷り、春日や石田はこちらを気にしつつもメニューを開いている。
 年に数度、少なければ本当に一度、こうして一同は顔を合わせる。それはみんなで仲良くしたいなどという単純なものではきっとない。そもそもそんな柄ではない面子ばかりだ。

 ただ。
 ――ただ、忘れてはいけないと、思うから。

 誰が言い出したのだったろうか。それはもう覚えていない。それでも恐らく全員同じ考えで、時に渋ったり遅れたりするものの、社会人となった今でもふいに思い出したように集まるのだ。
 戒めのようなものかもしれないと笠松は思う。これで「全員」なのだと、みんなの顔を見てそのことを確認するのだ。それは確かに傷をつける行為であると分かっていながら――いや、だからこそ、きっと。

「……皆さんは」

 譲られた枝豆をじっと見たまま、赤司はぽつりと口を開いた。

「……和成と俊さんに会ったと言ったら、信じてくれますか」

 しん、とその場が静まり返った。
 それは、どこかタブーとなっていた名前だった。そのために集まっているというのに、それでも誰も言えずにいた名前――キズだった。
 降旗がじっと赤司を見つめる。赤司は視線をテーブルに向けたまま動かさない。

「……赤司、ごめん。ちょっとよく分かんない。どういうこと?」
「そのままだ。僕は先日、二人に会った」
「生きてたのか……? 戻ってきたのか?」
「ああ」
「そ、っか。……そっかぁ」

 春日がいつもの緩さの残る口調で息をついた。そこには確かな安堵があり、他のみんなもそれぞれ肩の力を緩める。笠松も気を落ち着けるために飲み物を含んだ。アルコールの苦味が舌を刺す。
 彼らのことを忘れてはいない。ズガターカが撤退したことで風化しつつある世間の中で、このメンバーだけは誰もが忘れることなどできなかった。

「なあ。それって、まだズガターカと……?」

 福井の問いに、赤司は一拍置いてうなずいた。

「でも、それならまだ取り戻すチャンスはあるってことだよな」
「そうだな。……そうだよな。正直あの頃みたいに動ける気はしねーが、諦める理由にはなんねぇ」

 石田の言葉に笠松もまたうなずいた。
 そうだ。――そうだ。ズガターカに撤退され、二人を探し出す手段が非常に限られてしまい、結局探し出すことはできなかった。
 しかし、戻ってきたのであれば。彼らと接触が可能なのであれば。
 あれから十年も経ってしまったが、それでも――。

「……二人は、あの頃のままだった」
「赤司?」
「……まあ、洗脳が解けてない限りそうやろ」
「だよな。下手に解けてりゃあっちで殺されてた可能性もあんだろ。それならそのままの方がマシなんじゃねーの」
「にしてもマジで昔みたいには動ける気しないな」
「説得でどうにかできるといいんだけどねぃ」
「あの頃のままだったんだ」
「あか、し?」

 赤司は未だこちらを見ない。テーブルの上で握られた拳が白くなっている。搾り出された声は、まるで呻き声のようで。

「……二人とも、十年前の……高校生の、ままだったんだ……」


***


「ト、ラ、ちゃーん!」
「ただいま、トラ」

 ドン、とお腹の辺りに軽い衝撃。それから二つの黒髪を識別する。
 二人とも特に怪我も何もないようで、まあそうでしょうね、とトラベリングは感慨もなく思った。

「おかえりなさい。どうでしたか、地球の方は」
「ごめんトラちゃん、ちょっと分かんなくなって戻ってきた」
「分からなく?」
「トラベリングは無敵戦隊ポイントガードを倒すように言っただろ? でも、どうも聞いていた話と違うというか……特徴は似てたんだけど確証が持てなくて。だから帰ってきたんだ」
「おや、慎重ですね」
「高尾は最初突撃したけどな」
「ちょ、伊月サン! チクんないでくださいよ!」
「チクる鬼畜キタコレ!?」
「きてねーっす!」

 目の前で元気にも騒いでいる二人に目を細める。
 ――なんというか、まあ。こうやって会話が成立するようになるまで、随分と骨が折れたことを思うと感慨深いものである。

「騒がしいですよ、二人とも。違うというのは?」
「んー。攻撃避けられたし強いのは確かだと思うんだけど。なんか、いきなり泣いちゃったり?」
「あと写真で見たのと姿も変わってた? ええと、こっそり撮ってきたんだけど……ほらこれ」
「……おや」

 伊月が取り出したものに、トラベリングはわずかに目をしばたたかせた。それは確かにトラベリングの知る「彼」の姿ではない。面影は残っているものの、至る所に変化の見られるソレは――。
 ふ、と口の端を上げる。

「これはこれは。うっかりしていました」
「トラちゃん?」
「そうでした。我々とは時間の流れが違うのでしたね」
「トラ? すっかり忘れるなんてうっかりだなキタコレ」
「伊月サンさっきからビミョーっす」
「ひどい!」

 ケタケタ笑う高尾、ショックを受けたとばかりにしょぼくれる伊月。まるでじゃれ合うような二人にトラベリングはため息をついた。長いこと一緒にいたせいか、もう慣れてしまったといえば慣れてしまったが、それでも話が進まないのは困りものだ。

「レッドはこれで合ってますよ」
「そーなの? なんだ、じゃあ倒せば良かった。ね、伊月サン」
「それは結果論だろ。確認できて良かったよ。ありがとう、トラ」
「いいえ。久々の地球は疲れたでしょう。今日はもう休んでいいですよ」
「うげぇ、トラちゃんが優しくて怖えんだけど」
「お望みならしごいてあげましょうか、高尾和成?」
「わーい優しいの嬉しいな! おやすみ、トラちゃん」
「高尾、調子がいいな……。トラ、おやすみ」
「おやすみなさい」

 最後に軽く頭を撫でてやれば、二人はそれぞれ笑みを浮かべてトラベリングから離れていった。
 わいわいとやはり騒がしく二人が部屋に戻っていくのを見送り、トラベリングはモニターを見やる。いくつもある画面の中で、ぼんやりと輝く青い惑星。自分たち同様、この惑星(ほし)は遠目には変わらないというのに。

「ええ、本当に。……うっかりしていましたね?」

 小さく笑い、操作盤に手を伸ばし――プツン、と頼りない音を立てモニターが消えるのを、トラベリングは静かに見ていた。




つづかないってばよ
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