20:おやすみ

相変わらずお題は30分クオリティですがー!
クリスマス近いということで。

<お題一覧>
Type : 1

01:晴れた日に(済)
02:手(済)
03:風の吹く場所(済)
04:白い花(済)
05:綺麗なもの(済)
06:笑顔(済)
07:手を繋いで(済)
08:うた(漢字は自由)(済)
例 : 歌、唄、詩等
09:おひるごはん(済)
10:海
11:同じ空の下
12:安らぐ場所(済)
13:心音(済)
14:手紙
15:風に吹かれて
16:夕焼け(済)
17:昼間の森(済)
18:親友(済)
19:昼寝(済)
20:おやすみ(済)

<お題配布場所>
site name : 追憶の苑
url : http://farfalle.x0.to/


※倭鏡伝
※クリスマス前日


20:おやすみ


 雪が降りしきる中、窓を開けていれば当然寒い。それは考えなくても分かることで、春樹はかじかむ手をすり合わせながら思い切り目の前の頭にその拳を振り下ろした。

「だ!? いってぇな春兄! 何すんだよ!」
「こっちの台詞だバカ。窓開けっ放しにしてちゃ寒いだろ」
「うー、だってさぁ」

 頭をさすった大樹は涙目で口を尖らせる。だが春樹は怯まずにじっと彼を見やった。彼の「でも」「だって」は正直聞き飽きた。春樹は兄として心を鬼にせねばと誓う。――というか、正直寒いのは苦手なのだ。室内だというのに吐く息が白いだなんて信じられない。暗く寒い外から帰ってきてようやく温まれると思ったのに。いつから開けっ放しだったのだろう。

「もっちーももっちーだよ。僕が買い物行ってる間、ちゃんと見ててって頼んだよね?」
「あ、あはは……つい。この身体やとあんまり寒さ感じないもんやから……」

 じとりと見やれば、怪獣のぬいぐるみ――もっちーは短い手で頭をかいた。その短い手足などは動きにくそうなものだが、なるほど、暑さや寒さに強いという利点もあるらしい。しかしこの状況を鑑みると鈍くなりすぎるのも考えもののようだ。
 ため息を一つ、ぴしゃりと窓を閉める。すると「あー!」と大樹から抗議の声が上がった。

「あー、じゃない。お前お風呂入ったんだろ。冷えて風邪引いたらどうするんだよ」
「ダイジョーブ! オレ元気!」
「そりゃバカは風邪引かないって言うけど」
「バカじゃない!」
「こんな真冬に窓開けっ放しで外見てるなんてバカの極みだよバカ」
「うぐっ、今年こそサンタ見るんだぜ!」
「わざわざ開けなくてもいいでしょ」
「開けてなきゃ入ってこれないかもだぜ!?」
「大丈夫だよサンタだから」
「サンタだから?」
「サンタだから」
「サンタすげーな!?」

 ぱぁっ、と顔を輝かせテンションを上げる大樹に苦笑する。なんというか本当に単純だ。この扱いやすさは嫌いではないけれど。

「それにしても春樹サン、お帰りなさい。随分遅かった気ぃするんやけど大丈夫やった?」
「うん、ちょっと学校の先輩にばったり会って。あ、これ貰っちゃったんだけど」
「何だ何だ?」
「クッキー?」
「みたいだね。明日クリスマスだしどうぞって」

 たまたま会った三人セットの先輩を思い返す。「あー春るん!」「こんなところで会うなんて運命ね!」「良かったらこれどうぞ……三人で作ったの……大丈夫変なものは入れてないわ……」とテンションが高かったり低かったりとよく分からない状況で渡されたものだ。最後の補足は逆に不安になるが、まあ、恐らく大丈夫だろう。――多分。

「明日は母さんたちともパーティーだもんな!」
「うん、そのときに持っていこうかと思って。だから早く寝ろよ?」
「サンタ捕まえるまでやだ!」
「捕まえるって」

 サンタクロースを信じているだけならまだ可愛らしいものを、生き生きとこの弟は何を言い出すのか。

「大体、大樹。サンタさんはきちんと寝ている良い子のところに来るんだって毎年言ってるだろ。寝てなきゃ来ないの。分かる?」
「オレも春兄も良い子だからきっとサービスしてくれると思うんだぜ」
「お前のその自信は何なんだ」
「もっちーもそう思うよなっ?」
「せやなぁ……けどサンタサンもノルマがあるやろうしサービスは厳しいのとちゃいますか」
「えええ」
「そんなリアルなサンタさんもちょっとやだな……」

 ヒゲを蓄えた笑顔のお爺さんがいきなりくたびれたサラリーマンのような印象になってしまう。無理はしないでほしい。いや本当に。
 その後も「じゃあオレも手伝うからさぁ」「サンタサンは裏の掟が多すぎやから大樹サンが踏み込むのはアカンです」「マジで」「マジや」「ちょっとでも?」「知られたら処刑って噂や」「怖ぇ!」などと二人は真顔でよく分からないことを話している。
 マフラーやらコートやらをようやくしまいながら、春樹はちらと時計を見た。もうそろそろ寝る時間だ。明日のパーティーに寝坊しないためにも夜更かしはしてられない。

「大樹」
「春兄、オレは寝ないからな!」
「じゃあ僕が寝るの、手伝ってくれる?」
「……へ?」
「僕もね、サンタさんが来るかもって思ったらちょっと緊張してさ。寝付けないかもしれなくて。だから一緒に寝てくれる?」
「……えっと」
「大樹は僕が寝た後に起きればいいんじゃないか?」

 悩むように視線をさまよわせた大樹に、春樹が駄目押しとばかりに提案してやれば、じわじわと大樹は表情を綻ばせた。彼は頼られることに弱い。こと春樹の「お願い」になると尚更だ。
 彼はニヒ、と堪えきれなかった笑みを浮かべて飛びついてきた。

「しょーがねえなー! 春兄もまだまだ子供だな!」
「はいはい」
「ワイも寝てええですか?」
「おー! 一緒に寝ようぜ!」

 そうやってワイワイ話しながら素早く寝る準備を済ませ、いざ布団に入れば――案の定、一番先に寝入ったのは大樹だった。普段寝ている時間であること、昔から寝付きがやたらいいこと、テンションを上げすぎて疲れてしまったことなどを考えれば全く驚きもない。

「春樹サンも策士やなあ」
「いや、大樹が単純なだけだけどね……」

 ボソボソと会話をし、思わず笑い合い――お子様体温を誇る大樹の体温に、春樹の瞼もトロトロと落ち始めた。半ば冗談だったとはいえ、これでは本当に寝る手伝いをされたみたいだ。何だか悔しいような、呆れてしまうような心地だが、容赦なく襲い来る睡魔には勝てそうにない。
 ふっ、と気づいたもっちーが小さく笑う。

「おやすみなさい」

 ――さあ、明日は楽しいクリスマスだ。
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二つ名:囁(アビス)
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