04:白い花

今日もひっそり勢いで。


<お題一覧>
Type : 1

01:晴れた日に(済)
02:手(済)
03:風の吹く場所(済)
04:白い花(済)
05:綺麗なもの(済)
06:笑顔(済)
07:手を繋いで(済)
08:うた(漢字は自由)(済)
例 : 歌、唄、詩等
09:おひるごはん(済)
10:海
11:同じ空の下
12:安らぐ場所(済)
13:心音
14:手紙
15:風に吹かれて
16:夕焼け(済)
17:昼間の森(済)
18:親友(済)
19:昼寝(済)
20:おやすみ

<お題配布場所>
site name : 追憶の苑
url : http://farfalle.x0.to/

※黒子のバスケ
※無敵戦隊ポイントガード
※ズガターカ鳥の目(三次創作)


04:白い花


 その日、恐らく高尾和成は上機嫌だった。いつもニコニコしているのでいまひとつ周囲からの判断はつかないのだが、それでもきっと恐らく、普段よりも機嫌が良かった。
 パタパタ小走りで廊下を駆けていく途中、たまたま通りかかったのであろうトラベリングを見かけた。高尾は勢いよく飛びついてみせる。急な抱擁にもあちらの身体が揺らぐことはないので面白くないのだけれど。

「トラちゃん!」
「おや。今日は一人ですか」
「そうなのだよー」
「……それは?」

 高尾が握っていたものを見咎めたトラベリングがわずかに首を傾げて聞いてくる。ニヘラと高尾は笑った。恐らく傍目には大した変化はないのだろうが、それでも高尾は笑ってみせた。

「おみやげ」
「おみやげ?」
「伊月サンに!」
「……おやおや」

 あのねえ、あのねえ、と高尾は拙く言葉を紡ぐ。いつも気を抜けば言葉が逃げていきそうで、だから高尾はとりあえず逃げられる前に言葉を放る。

「今日はじょっかぁさんと下に降りたの」
「知っていますよ」
「そうなの?」
「ええ」
「そっかぁ」
「それで?」
「うん?」
「下に降りてどうしたんです」

 パチパチと高尾は瞬く。うーん、と首を傾げ、それから自分の手元を見た。握られているのは白くて小さな花だ。一本だけのそれはともすれば貧相だし、抜かれたせいでやや萎びているが、それでも花本来の持つ可愛さはまだ失われていない。その白さが目に眩しい。うん、と高尾は笑った。

「じょっかぁさんがバーンってして、キラキラして」
「……」
「そしたら残ってたからもらってきた」
「……分かりませんが、分かる気もしますから、まあ、いいです」
「そうなの?」
「ええ」
「そっかぁ」

 へへ、と高尾はまた笑う。ぎゅーっとトラベリングに抱きつく腕に力を込めると「苦しい」ですとやんわりたしなめられた。

「その花は……ああ、ネメシアというんですかね」
「そうなの?」
「恐らく」
「そっかぁ」

 うんうんと笑みを深めて高尾は身を翻した。またねトラちゃん、と声を掛け、返事も聞かずに走り出す。
 そのまま自分たちの部屋に入ると中は暗かった。明かりをつけ先へ進めば、奥で伊月が丸くなって寝ている。その顔は無表情というよりもいくらか穏やかそうで、高尾は軽く首を傾げた。花を見る。伊月を見る。もう一度花を見る。
 うん、うーん、ううん。一人で小さく唸って――結局高尾はゆさゆさと彼の身体を揺さぶった。

「伊月サン、伊月サン」
「……」
「伊月サン」
「……んぅ」

 低く呻いて、伊月がぼんやりと目を開ける。まだ寝ぼけているのだろうか、上半身を起こす仕草はひどく緩慢だ。

「……たかお……?」
「はい」
「……なに……」
「あのね、えっとですね、えーと、はい」
「……?」
「おみやげ」

 ニコニコと笑って高尾は先ほどから握りしめていた花を伊月に手渡した。伊月は数度瞬き、高尾に視線を向けてくる。その瞳にこもる感情が高尾には分からない。

「おみやげ」
「……おみやげ?」
「伊月サンに」
「俺に」

 まるでオウム返しのようにポツポツと呟いた伊月は――受け取った次の瞬間、その花を引きちぎった。

「いらない」

 ちぎられた花は、力なく床に落ちる。それを高尾はぼんやりと目で追った。先ほどまで残っていた可愛らしさは消え失せている。それは、どうしてだろう、ひどく汚れて見えて。
 ぱちぱちと高尾は瞬く。伊月の表情は変わらない。彼はそのまま高尾の肩に腕を回すようにして抱きついてきた。寝起きだからだろうか、やけに体温が高い。

「……いらない」
「そうなの?」
「……」

 ぎゅう、と回された腕の力が強くなる。伝わる熱が高くなる。
 その温もりにとろとろと瞼を落とし、高尾は、笑った。
 うん。そっか。

「……そっかぁ」


****

ネメシア=包容力・偽りのない心・過去の思い出・正直
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あずさ

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