03:風の吹く場所

ちょこちょこ書き殴っていくのが地味に続いています。
本当はもっと短くシンプルに書けたら良いのですががが。
ちなみにどれも大体30分程度のクオリティです。


<お題一覧>
Type : 1

01:晴れた日に(済)
02:手(済)
03:風の吹く場所(済)
04:白い花
05:綺麗なもの(済)
06:笑顔
07:手を繋いで(済)
08:うた(漢字は自由)
例 : 歌、唄、詩等
09:おひるごはん
10:海
11:同じ空の下
12:安らぐ場所
13:心音
14:手紙
15:風に吹かれて
16:夕焼け(済)
17:昼間の森(済)
18:親友(済)
19:昼寝(済)
20:おやすみ

<お題配布場所>
site name : 追憶の苑


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※ドキパラ
※春樹とセーガ


03:風の吹く場所


 ドキドキパラダイス学園。『愛とスリルでいっぱい、ドキドキ学園生活』というふざけたモットーを掲げた、ふざけた生徒が集う、ふざけた巣窟。
 そこの生徒会の一員である日向春樹は、今日も今日とてカオス極まりない学園生活にため息をついていた。山のような書類を片付けたり、テンションが上がりすぎて暴れている生徒を取り締まったり、胃痛で倒れそうな教師に胃薬を渡しに行ったり、学園長発案のドキドキカラオケ大会~ポロリもあるよ~の準備に駆り出されたり、振り返るだけでも波瀾万丈である。しかも兄である生徒会長がこれまたふざけた性格なので仕事が溜まりに溜まっていく。その被害を受けるのは大体春樹なのだ。勘弁してほしい。

「御主人」

 ため息をついていると、全身を黒で纏った長身の男が壁から離れて声を掛けてきた。――セーガ。ひょんなことから春樹に仕えることになった守護獣だ。人型にもなれる彼は力仕事などには大層役に立ってくれるが、常識からして違う世界に生きる彼には書類などの作業は難しい。そのため特に任せられることもなく、自由にしてもらっている。どこかに出かけてもいいと春樹は言ったのだが、生真面目な彼は春樹の側から離れようとしなかった。

「セーガ? ごめん、退屈?」
「いや、そうじゃないんだが……」
「? もう少し待ってくれるかな。今は大樹たちも出払ってるから相手にできなくて本当に申し訳ないんだけど……」
「……」

 しばらく黙っていたセーガは、はあ、と一つ短いため息。
 呆れてしまっただろうか。どうも卑屈になりがちな春樹は、いつも彼にため息をつかせている気がする。やはり申し訳ないなと思う。一応しっかりしよう、とは毎度思うのだが――。

「乗れ」
「え?」

 気づけば彼は獣の姿になっていた。漆黒の翼を生やしたソレはまるで神々しい。春樹はいつも見惚れてしまう。
 とはいえ、会話の流れがつかめない。ええと。

「せ、セーガ?」
「御主人」
「うん、えっと、ちょっと意味が……」
「乗れ」
「あ、ハイ」

 ――おかしい。自分が命令する立場ではなかったろうか。今更の話かもしれないけれど。


***


 大型犬のようなセーガにまたがり連れられたのは学園の裏山に位置する場所だった。しかしそう奥まってもいないので、丘といった方が近いかもしれない。ともかくいくらか高さのあるそこは広大なドキパラ学園を見下ろすことができて随分と見晴らしがいい。

「うわー……こんなところがあったんだ」
「坊主たちと飛び回っていたら見つけたところだ」
「あ、ごめんねなんか」
「いや」

 坊主たち、とは恐らく大樹と黯のことだろう。怖い物知らずで好奇心溢れる彼らはセーガのことも気に入っており、冒険と称してよくセーガに色んなところに連れていってもらっている。春樹から見ればもはや子守だ。申し訳ないが、彼らがいると仕事が進まないことも多々あるのでとても助かっている。
 喧噪から離れたその空間にホッと息をつく。隣で人型になったセーガも並んで、のんびりと景色を見下ろした。吹き抜ける風が心地良い。

「ここも一応敷地内ではあるんだよね?」
「サタン殿はそう言っていたな」
「それにしては静かだね」
「……ああ、珍しく」

 基本的に悲鳴や騒音と隣り合わせなドキパラ学園だとは思えないくらいだ。
 思わずクスクス笑い、春樹はその場に腰を下ろした。目で促せば、汲み取ったセーガもそのまま隣に腰を落とす。緑の濃いにおいがそっと鼻孔をくすぐった。
 ――どうしていきなりセーガが春樹を連れ出したのか。それが分からないほど馬鹿ではない。聡いこの守護獣は、疲れ切っている自分を見かねて休憩させようとしたのだろう。春樹は自分を心配する彼の気持ちが分からないほど馬鹿ではないが――だからといって仕事を前にして手を抜けるほど器用でもなかった。なるほど、休憩するならいっそ仕事のできない場所に連れていくのが手っ取り早い。
 まいったなぁ、なんて、本気かどうか自分でも分からないことをぼんやりと思う。

「あはは。気を遣わせちゃったみたいでごめんね」
「御主人。違うだろう?」
「……『ありがとう』?」

 首を傾げて訂正すると、彼はフッと小さく笑いをこぼした。どうやら正解だったようで、春樹もホッとする。
 それからぐいと身体を伸ばした。凝り固まっていた身体が解れる心地は気持ちよい。さらに涼しい風がまた頬を撫でていきするすると肩の力が抜けていく。
 悪いかなと一瞬思ったが、せっかくなので、春樹はそのまま少し彼に身体を預けることにした。長身の彼は自分の体重くらいではびくともしない。さすがだ。

「セーガ。少ししたら起こしてもらえる?」
「時間も指定して起こせというならぴったりに起こすが」
「どうかな。何ならセーガも寝ちゃってもいい気分なんだけど。それで先に起きた方が相手も起こす。どう?」
「……それは」

 わずかに瞳を揺らした彼は、苦笑してほんのり目元を和らげる。

「……御主人にしては高度な命令だな」
「だね」

 もしかしたら、やはり疲れているのかもしれない。だけどたまにはこういうのもいいかと思うのだ。ここは不思議とそんな気持ちにさせられる場所だった。
 だから、風の気持ちいい、穏やかで密やかなこの場所で、春樹はまたクスクスと笑いを含ませながらそっと目を閉じた。
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