17:昼間の森

ほのぼのを書いたと思ったらこれだよ。

<お題一覧>
Type : 1

01:晴れた日に(済)
02:手(済)
03:風の吹く場所
04:白い花
05:綺麗なもの(済)
06:笑顔
07:手を繋いで
08:うた(漢字は自由)
例 : 歌、唄、詩等
09:おひるごはん
10:海
11:同じ空の下
12:安らぐ場所
13:心音
14:手紙
15:風に吹かれて
16:夕焼け(済)
17:昼間の森(済)
18:親友
19:昼寝(済)
20:おやすみ

<お題配布場所>
site name : 追憶の苑※黒バス
※無敵戦隊ポイントガード派生
※ズガターカ鳥の目
※なんやかんやあって助けられた後


17:昼間の森


 気がつけば無敵戦隊ポイントガードの基地の中だった。ぼんやりした記憶で聞いたのは、自分と伊月は少しの間、敵に捕まっていたらしいということ。靄がかかった頭を振り払おうとすれば、みんなは無理をしなくていいと言う。きっと消耗しているのだろうと。嫌なことを思い出したところでメリットはないのだから、むしろ身体と心を落ち着けて早く戦線に、日常に戻れるように努める方がよほどいいと。
 それはまさに正論で、高尾も伊月も反論する余地などない。何だかすっきりしない面はあれど、引きずるほどのものでもないはずだ。だから素直にうなずいた二人に、みんなは、ホッと笑みを向けてきた。
 それから。それから。

「おかえり。和成、俊さん」
「……ただいま!」
「ただいま。それと、すみません」
「バァカ。謝るんじゃねぇだろ、そこは」
「……ありがとう?」
「上出来や」

 そうやって、二人は戻った。バスケも戦闘も鈍ってしまった部分は少なからずあったけれど――思ったより本当に「少なからず」なのが何だか意外だった――それは周囲がフォローしてくれる。少しずつ、確実に、小さな違和感を引き連れながらも二人は調子を取り戻していった。


***


「数が多い! イエローは右前方、ピンクは左を!」
「ワシはあっち行くわ」
「お、俺はあの影になってるとこ倒してくる……!」

 しつこい襲撃が続いたとある日。今まで以上に数の多いジョッカーに無敵戦隊ポイントガードはいくらか苦戦していた。
 強さでいえば所詮はジョッカーといったところだが、彼らは耐久値が高い。物量で攻められるとジリ貧に追いやられないように気を配る必要がある。効率的に対処していこうと、それぞれが自ずと分散していく。
 ふと、赤司は違和感を覚えた。

「……パープル、リーフ」
「何だ?」
「どしたん?」
「……グリーンと、ブラックはどこだ?」
「……え?」

 ぞわりと悪寒が走った。

「っ、グレーの方はどうだ!?」
「いや……こっちには来ていない」

 何故。どうして。

「おい。……どうすんだ」
「……っ、探そう。嫌な予感がする……!」


***


 敵を追って辿り着いたのは森の奥だった。木々が鬱蒼としていて、何故だろう、デジャビュのようなものを抱いてしまう。

「グリーン、そっちはどうだ?」
「いえ、いつの間にか消えたっぽいっすね。逃げ足だけは速ぇ」
「どうする、一回戻るか?」
「そうっすね……あっちも大変そうだったし」

 二人は肩をすくめて、敵の見えなくなったそこから背を向ける。急ごう、と伊月が声を掛け――視野の広い二人だからこそ、思わず足を止めた。視界の隅に引っかかった何か。まるで何でもない景色に溶け込むように、しかし明らかな異質を混ぜ込んで立っている、ソレ。
 息を飲んだ。

「トラベリング……!」
「どうしてお前がここに……!」

 それは、自分たちにとって絶対的な敵である存在だった。
 とっさにポイント銃とガード剣を構えた自分たちに、相手は口元だけで笑う。

「お久しぶりです」
「……」
「何の用だ」
「いえ。元気そうだなと思いましてね」

 ざらつくような声音に脳のどこかがチリチリと音を立てる。それは焦燥か、警告か、それとも。

「お仲間も、よくまたあなたたちを受け入れてくれたものです。随分と心が広いようですね。感心しました」
「……何の話だ」
「おや、分かりませんか? あなたたちの話ですよ」
「何?」
「伊月、サン」

 じっと威嚇するかのように睨みながら相対する伊月の腕を、高尾はわずかに引いてみせる。――ざわめきが、うるさい。これ以上ここにいるべきでない。ここは、嫌だ。何の根拠もないのにそう脳が訴えてきて仕方ない。気がおかしくなりそうだ。
 しかし、伊月はうなずかない。高尾にも分かる。退かないのでない。退けないのだ。
 そんな自分たちを彼はどう思うのか。相変わらず楽しげな表情からはそれ以外の感情が読み取れない。

「あなたたちは、疑問に思わなかったんですか」
「だから何を……」
「捕まっていた間何があったか。あなたたちが何をしていたか。何故周りはそれを教えないのか」

 ピクリと二人は反応する。

「仲間なのに、あなたたちに隠し事をするのでしょうか。言えないことをしているのでしょうか。そこにあるのは本当に信頼でしょうか」

 それは。わずかな、そして確かな違和感で。
 彼らは言う。気にしなくていいのだと。それが、自分たちのためなのだと。
 それは緩やかな、甘やかな空間で。ぬるま湯のような。真綿のように柔らかな。
 だけど。
 だけど、どこか空虚な。必死に創りあげた、張りぼてのような。

「……それを、お前は知っているって言うのか」

 トラベリングは答えなかった。身を翻す。追うより早くその姿は消えてしまった。呆然としている内に、声だけがそっと囁いてくる。

『この先に進めば、もしかしたら……』

 二人は顔を見合わせた。
 進めば。何かが、分かるのだろうか。何が、あるのだろうか。

「……高尾。俺は、さ。ずっと、不思議な感じだった。思い出そうとしても全然思い出せないし……みんな、どこか無理をしている感じがするっていうか……」
「オレもですよ。……無敵戦隊のみんなだけじゃない。真ちゃんたちだって……何か言いたそうにしてるのに、いつもそれ、飲み込んでるみたいで……」
「……うん」

 目の前に広がるのは、何てことのない、昼間の森。
 明るいはずなのに日が届かなくてどこか薄暗い道。
 その薄暗さは、自分たちの抱えるぼんやりとした不安によく似ている気がして。
 二人は、そっと、歩き出した。




 ――鳥かごから抜け出したと思っていても。
 ――それがただの一つの部屋でしかないと知ったら。
 ――本当は広い森の中で未だに彷徨い続けているだけなのだと知ったら。

 ――あなたたちは、どうするんでしょうね。



*****

こういう展開もあるかもしれないよね、という。いつになっても鳥の目を救う気のないあずさである。
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あずさ

Author:あずさ
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二つ名:囁(アビス)
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四字熟語:好色生活
(※二つ名メーカー、脳内メーカー等による結果)
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