【わっか】試しに広げてみた両手【イトコ】

残業をしてもしても仕事が終わらないのは何の罠なんでしょうか。
要領が悪いだけだって知ってる!(血涙)


追記に樹と航樹の何でもないリア充小話。





********


 この腕の中に収まる身体は、ずっとずっと小さくて、細くて。
 今にも飛んで消えてしまいそうだった。


――試しに広げてみた両手


「あ、猫ー!」

 それは、木之本航樹の部活帰り。終わるのを待っていてくれた日高樹と帰路についているときのことだった。隣を歩いていた彼女が軽い足取りで先に駆けていく。その先にはのびのびと道路の脇に寝そべった一匹の猫。白と茶が入り混じって可愛らしい。

「コーキ、コーキ。見て見て! 大人しいのだよ、珍しい!」
「ほんとだ」

 特に暴れるでもなく樹の腕の中に収まる子猫。眠いのだろうか、欠伸のために大きく口を開けている姿はちょっぴりマヌケだ。

「おまえ、野良かー?」

 樹はウキウキとした調子で撫でくり回す。
 彼女はいつでも好奇心旺盛だ。きょろきょろと周りに目を向け、色んなものに飛びついては瞳を輝かせる。まるで小さな冒険家。
 ――そんな楽しそうな彼女に惹かれたのは事実なのだけれど。

「あっ」

 いい加減うっとうしくなったのだろうか、猫が樹の手から離れた。にゃぁ、と去り際に声を発して駆けていく。その姿が見えなくなるのはあっという間だった。

「あーあ、行っちゃった」
「樹」
「んぅ?」

 呼べば、くるりと振り返る彼女。
 航樹は両手を広げ、さらに腕を伸ばしてみせる。ただ無言で微笑むと、彼女はわずかに表情を強ばらせた。視線が泳ぐ。右へ。左へ。そしておずおずと、航樹の瞳へ。

「……いつきは猫じゃないのデス」
「知ってるよ?」
「……」

 面白いほどためらいを見せた彼女は、パタパタと駆け寄り、航樹の隣へ並ぶ。そして広げられていた左手に彼女自身の右手を重ねた。

 ……。
 …………。

「……えい」
「わ!? え、ちょ、コーキ!」
「あはは、つい」
「つい、じゃないデス、もー!」

 人前だと恥ずかしがる樹を引き寄せ、ぎゅっと抱え込む。しばらくじたばたと暴れていた彼女だが、やがて観念したのか大人しくなった。それでも顔を上げないのは樹なりの意地だろうか。小さな身体が、速まる鼓動が、心地よい。

「好きだよ、樹」
「……いつきも、だもん」


――試しに広げてみた両手


(おいで、ほら、捕まえてあげる)


********


樹は普段、意識しなければ(友達にもそうなように)飛びついたり抱きついたりくっついたりというのはどんどんできちゃうのですが。
相手から「おいで」みたいにされたら途端に意識しちゃって素直になれないというか、ぎくしゃくしてしまう子です。
恋愛することに慣れてないので。

それが分かってて「おいで」ってやる航樹は、まあ……樹には甘いけど、根はドSなので←
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