【わっか】真実を知ってもなお

やっぱり何でもない、ほの暗いような、ほのめかしい、そんな、そんなものを淡々と綴るのは、結構楽しい。
しかし読んでる方はつまらない気がする。
ジレンマ。

私は書いてて楽しいです。まる。

********


 夜のネオンは目に痛い。だけどその痛さは、ドロリとした暗さを忘れられていっそ心地よい。
 そんな不自然な明るさの中に見知った人影を見つけ、三島美嘉は軽い調子で肩を叩いた。

「はろろーん」
「……またお前か」

 こちらを見るなり嫌そうに顔をしかめたのは、高松瑛二。白樺高校に通う美嘉の知り合いであった。若葉高校に在籍している美嘉とは当然会う機会も少ないが、こうして夜にフラフラしていると偶然出会うこともある。

「あんたも暇人ねぇ」

 少し離れたところでわいわいと賑やかに話している少年少女を見やり、美嘉は肩をすくめてみせた。面倒くさそうに眼鏡のズレを直した彼は、腕を組んだまま鼻を鳴らす。

「お前ほどじゃないな」
「私はいいのよ。それよかあんたのとこ、今テスト期間じゃなかったっけ?」
「授業中に予習も復習も終わらせてる。問題ない」
「あ、そ」

 平坦な物言いは嫌みのようにも聞こえるが、実際、この男は頭も随分キレるらしい。良くも悪くも交流範囲の広い美嘉の耳にはそういった情報も入ってくる。――だからこそ、彼はこうして同年代の少年らを仕切っているのだろう。
 白樺高校にはあまりいい噂を聞かない。金持ちやエリート意識の高い者が集まっているようだが、権力がある一方、それを振りかざして好き勝手やっている輩も多いからだ。実際、美嘉の目の前ではしゃいでいる彼らもあまり上品とは言いがたい。――こんな夜更けに出歩いている時点でそれはわかりきっていたことなのかもしれないが。

(ま、人のこと言えないけどねぇ)

 自身の派手な格好を見下ろし、まあいいかと思考を切り捨てる。

「……そういや三島」
「ん? 何よ?」
「お前、小倉達樹と日高樹って知ってたか」

 瑛二に問われ、美嘉はぱちぱちと瞬いた。ふぅん、と呟き、わざとらしく首を傾げてみせる。

「知ってると思う?」
「ああ」
「美嘉ちゃんのことに詳しいわねえ、あんた。もしかして私のファン?」
「吐き気がする」
「失礼ね」

 ムッとして胸を押しつけるとあからさまに押し返された。この男はなんてもったいないことをするのだろう。美嘉の知り合いには喜ぶ者が大半だというのに。

(あー、でもあいつも逃げてたっけ)

 今し方名前の出た小倉達樹を思い出す。彼もまた奇妙というべきか、美嘉が迫れば迫るほど怯えたように逃げていた。全くもって失礼だ。このふくよかな果実を堪能できる絶好のチャンスだというのに。

「んで、その二人がどうしたって? また私の友達にちょっかいかけてんの、あんた?」
「……友達、ね」
「何よ」

 物を含んだ言い方に片眉を跳ね上げる。しかし瑛二は大儀そうに首を振るだけでこちらを見ようともしない。

「いや、そいつらから吹っ掛けてきたらしい。だからどんな奴らかと思っただけだ」
「……どうせ誰かのカツアゲシーンとか見つけたんでしょうよ。あの子ら、正義のヒーローごっこが好きみたいだから」
「なるほどな。そいつはご苦労なことだ」
「てーか。あの子らは結構手強いわよー? 悪いこと言わないから火傷する前にやめときなさいな」
「あいにく僕は興味もないんだが、あいつらもプライドだけは無駄に一人前でやられっ放しは癪らしい。あいつらがどうなってもどうでもいいしな、しばらくは放っとく」
「清々しいほど薄情者ねぇー」

 それはそれは、淡々と。面白味も感情も感じさせない口調で言うものだから、美嘉は一つため息をついた。「興味がない」と何度も口にしている彼だが、本当にそうなのだろう。一体この男は何になら興味があるというのか。空っぽだ。全く、嫌になるほど――自分と同じで空っぽだ。

「それより」
「はん?」
「お前こそフラフラしていていいのか? 知らないんだろう、そのお友達とやらは」
「何が」
「僕とお前が……白樺校の奴らとお前が繋がってることを」

 ――それは、暗に「裏切り者」と言っているようで。
 美嘉は薄く笑った。

「知ったことじゃないわ。私は私、あの子らはあの子らだもの」
「……はっ、どちらが薄情なんだか」
「比べて意味ある?」
「どうでもいいな」
「同意見よ」
「……ふん」

 つまらなさそうに呟いた彼はネオンの光を見やり、目を細める。その眼鏡の奥で一体何を考えているのか。
 やがて彼はぽつりと言葉をこぼした。

「真実を知ってもなお、その友達とやらを変わらず友達と呼べるのか……それなら少しは興味があるな」
「あーら、悪趣味ね」

 ピカピカに磨かれた爪にネオンの光が反射する。それを眺めながら美嘉はため息混じりに曇った空を仰いだ。
 ――それもまた、同意見よ。


【真実を知ってもなお】


(別に知らせる気も、ないけれど)


********


基本は平和なわっか日和だけれど。
まあたまには、こういうのがあってもいいじゃないか。
……え、ダメ?
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