【HCS】悪夢【⑤】

【HCS】=春樹ちゃんシリーズ

<設定>
「倭鏡伝の春樹がもしも女の子だったら」
・セガ春ラブコメディ
・高校生
・セーガ擬人化あり

<発端>
唯夜「セーガの擬人化がイケメンすぎてつらい。春樹君を女の子化したらセガ春書けるレベル」
あずさ「書いてください」

<執筆>
・執筆者:唯夜さま
・サイト名:Useal Night Sky
・URL:http://sky.geocities.jp/free_night_sky/UNS/top.html

<執筆者から一言>
唯夜「ごめんなさい


※本編とは直接関係ありませんが、女体化・擬人化等が苦手な方はご覧にならないようご注意ください。
 この注意を無視した文句は受け付けられませんのでご了承ください。



今までのログはこちら↓

♭1
慌しい朝。

♭2
「割と違和感」

♭3
唯夜さんオリキャラ、里桜ちゃん登場。

♭4
甘々セガ春ここに極まり。

#番外1
里桜と日向兄弟。


*****


「さて、里桜さん。お出口はあちらです」

 春樹が部屋の戸を開け放ち、玄関を指差す。にっこり笑みを浮かべた春樹は、大概冗談を言わない。

「え、だって泊めてくれるって」
「では誓いなさい。この先墓に入るまで大樹に手を出さないと」
「一生!?」
「もちろん」
「それは無理ー」
「お出口は」
「折り合いつけようよ! 里桜さん妥協案が欲しいなぁ!」

 春樹の条件を鵜呑みにしなければ首根っこ掴んで放りだされそうな剣幕だ。しかしその条件を鵜呑みにしてはここに来た目的の七割程は達成できない。それでは困る。

「妥協案?」
「せめて今だけとかさ」
「じゃあ今晩限り」
「せめて春樹の目の届く範囲に」
「見張るよ?」
「見逃せよ」

 平行線の会話に、つんと里桜はそっぽを向く。余裕なのか仮面なのか、春樹は微笑みを崩さない。間に挟まれた大樹は、仲良しだなーなどと言い出していた。
 ――あんた巡って言い争ってんのよ。
 ある意味我関せずの姿勢でいる大樹に、里桜は内心苦笑する。だがそんなところも彼の魅力。是が非でもものにすべしと春樹を見据える。

「ねぇ、春樹。こんな夜遅くにか弱い女子高生を放りだすって言うの?」
「……」

 良識ある春樹の性格は、こういう時に役に立つ。言葉に詰まった春樹を、里桜はしたり顔で眺めた。

「と、いうわけでこの話はおしまい」
「はぁ……まぁいいわ、私がしっかり見張ってればいいんだし」

 ――だから見逃してよ。人の恋路を邪魔すると酷いんだからね。
 と言うのは心の中でだけ。後はうまく春樹を出し抜く算段をするだけだ。ちょろい、わけではないが、放りだされるよりハードルは低い。

「さて、ご飯の準備してくるね」
「んじゃ、あたしも手伝うよ」
「オレも手伝うー」
「「あんたはいい」」

 大樹の家事能力は、すでに里桜も知るところだった。



 里桜と並んでキッチンに入り、春樹ははたと動きを止めた。
 ――そういえば、セーガ……。
 先ほどから姿が見えないのだが、どこに行ったのだろう。春樹に黙ってどこかに行くということはないと思うのだが。

「何探してるの?」
「別に、探してなんか」

 傍から見ても分かるほど忙しなかっただろうか。とりあえずセーガのことは気にしないことにして、春樹は冷蔵庫から食材を取りだしていく。

「今日は何作る?」
「え? あぁ、今日は……!?」

 メニューを言う前に、春樹のセリフは中断させられた。どこかから大きな物音が聞こえてきたからだ。

「なに?」
「お風呂、かな。ちょっと見てくる」

 里桜をその場に残して、春樹は足早に風呂場に向かった。するとそこには。

「セーガ?」

 守護獣状態のセーガがいた。バスマットの上に転がったシャワーヘッドと向き合っている。彼は春樹の姿に気がつくと、少し首を振って人型を取った。その眼が少し悲しそうで、春樹の印象に残る。

「渡威だ」
「え?」
「最近は減っていたが、だからといって渡威騒動が無くなったわけじゃない。現に昨晩も渡威を追いかけまわしただろう」
「うん。また、歌月くんの仕業なのかな」
「わからない。ともかく目の前の渡威の封印が先決だ」

 セーガに目で促されるまま、封御を取りだす。狭い風呂場に迷い込んだのがその渡威の運のつき。封印は意外なほどあっけなく済んでしまった。

「わざわざ封印されに来たとしか思えないなぁ」

 思わずそう呟くほどに。

「……騒ぎにならなかったし、玉も手に入った。今回はそれで良しとしよう」
「そうだね」

 セーガの言葉通り、春樹は深く気にとめないことにした。


 それから、四人で騒いで過ごした。明日は休日。寝坊の気兼ねはない。夜遅くまで騒ぎ倒すと、最初に大樹がダウンした。それを契機に、四人は床につくことにした。
 深夜まで遊んだのはいつぶりだろう、とベッドの中で春樹は思う。
 ――最後は……あぁ、あの時も里桜が泊りに来てたっけ。
 下心は見え透いているが、それを差し引いてもやはり里桜は友達なのだ。中学の頃は、何故か親しい友達はできなかった。蛍や隼人はそれなりに親しかったが、やはり男子と女子の垣根がある。こうして泊まり込みで遊ぶなど、到底できないことだ。
 ――なんで、だったんだろう。
 今と昔、性格的にも、日頃の態度もそれほど変わらないはずだ。
 ――なにか大事なことが、あった気がする……。
 中学一年の頃を思い出そうとすると、頭がもやもやした。記憶は鮮明なのに、何か足りないような、何かぼやけているような、そんな気分になる。
 中学二年の頃は、それなりに普通に過ごしていた。思い出しても頭はもやもやしないし、足りない気もしない。ただ、何故かビジョンが暗く見えた。
 中学三年になると、もう完全に違和感のない記憶。高校で積み重ねたものと変わらぬそれがあった。
 ――でも、何か忘れてる。何を?
 考えても答えは出なかった。布団を頭まで被って、春樹は目を閉じる。
 ――寝よう。きっとそのうち思い出す。


 目が覚めると、そこは真白な空間だった。一度瞬くと、白い空間は見慣れた自宅へと変貌する。枕元にある時計を見れば、時刻は朝六時。早く大樹を起こして学校へ行く支度をしなければ。
 起き上って、身支度をする。部屋から出ると、キッチンから食事の匂いが漂ってきた。
 ――誰かが食事を作ってる……まさか大樹が? ありえない。
 キッチンには絶対に入るなと厳命してあるし、第一彼が作ったのならこんなにおいしそうな匂いは漂ってこない。そろそろと、キッチンを覗き込んだ。
 そこには、見えない誰かがいた。見えない誰かが見えない手でフライパンを操り、朝食を作りだしている。

「おはよー……」

 そこへ、大樹が起きてきた。
 ――大樹が……? ありえない、誰に起こしてもらったの?
 呆然と大樹を見つめる春樹がまるで見えていないかのように、大樹はリビングに向かって行く。

「わかってるよ。オレ顔洗ってくる」

 彼は途中で足を止めると、キッチンに向き直ってそういった。どうやら見えない誰かと会話をしているようだが、春樹にはその声が聞こえない。
 大樹がこちらに向かってくる。

「大樹」

 呼びかけるが、彼は気がつかない。先ほどと同じだ。まるで春樹がそこにいないかのように通り過ぎていく。
 すれ違う大樹に手を伸ばして、そこで春樹は気がつかされた。
 ――ここには……。
 伸ばした手が大樹を素通りする。大樹の中に手が吸い込まれていくようだった。
 ――ここには、私がいない。
 見えない誰かが、春樹の代わりに大樹を起こし、朝食を作り、そしておそらくは、彼に牛乳を飲ませようと奮闘するのだろう。
 ――私は、どこ?
 その一念で、春樹は走った。目指す先は学校だ。そこまでの長い道のりを、春樹は一度も立ち止まることなく駆け抜ける。
 学校につくと、すでに授業が始まる時刻だった。だが、今の春樹にはそんなものどうでもいい。
 ――ここに、私はいるの?
 校庭を駆け抜け、昇降口をくぐり、階段を駆け上る。そして『1-A』と表示された教室の引き戸を、勢い良く引き開けた。
 授業は、滞りなく進んでいる。蛍や隼人も、授業を受けている。その間にある春樹の席にいるのは、春樹ではない誰か。
 ――ここにも、私はいないの!?
 里桜はどうしているだろう。彼女は私がいないことに気がついてくれているだろうか。そう思った瞬間、周りの景色が一気に変わった。
 朝の青空が広がっていた窓の外は、橙の夕空に塗り替えられている。教室いっぱいにいた生徒はもはや一人もおらず、教室は閑散としていた。教室に備え付けられた時計を見上げると、時刻は午後五時。
 ――下校時刻? そうだ、里桜!
 里桜を探さなければ。もはや彼女が、春樹の唯一の希望だった。
 教室を飛び出し、階段を駆け下り、昇降口へ一直線に向かう。下駄箱の陰から徐々に里桜の姿が見えてきて――


「里桜っ!」

 叫びながら起き上ると、そこは見慣れた部屋だった。
 ――さっきまでのは、夢? 妙にリアルで、嫌な……。

「何よ」

 思考は横からの一声で中断させられた。見れば、部屋の戸の前で固まった里桜がいる。

「何、してるの?」
「何って、よば……じゃない、トイレよ。そう、トイレ」

 あはは、と笑って顔の前で手を振る里桜に、何故だか春樹はとても安心した。

「……そう」

 あの夢のせいか、安心すると体が震えだす。今まで見た悪夢やホラーよりも、何倍も何十倍も怖かった。
 ――私の居場所が、無くなる夢。
 なんでそんなものを見たのかと思う。しかし所詮は夢で、なんでと問うても答えはくれないのだ。

「春樹……?」

 自らの体を抱いて震える春樹に、里桜は訝しげに声をかける。様子がおかしいと感じたのか、彼女は春樹にそっと近づいてきた。

「怖い夢でも、みた?」

 里桜にやさしく抱きしめられ、頭を撫でられて、一層安心した。ここには自分の居場所がある。里桜は自分のことをちゃんと見てくれる。

「そばにいるよ。一緒に寝よっか?」

 里桜の腕の中で、春樹は一度頷く。優しい声でわかったと里桜が言ってくれた。
 ――いい友達ができたなぁ。
 照れくさくて口には出せないことを、心の中で呟く。こういう里桜なら、大樹のことも許せるかもしれない、と少し思った。

「……でも、この胸は許せない」
「ん?」
「なんでもないっ」

 抱きしめてくれる里桜の胸に深く顔を埋めて、春樹はもう一度眠りについた。


*****


あずさ「ラブコメとは言ったが、シリアスがないとは言っていない(`・ω・´)」
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二つ名:囁(アビス)
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四字熟語:好色生活
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