そんな何か

何となく思いついたものをメモしておくテスト。
まあ、相変わらずの倭鏡伝ネタなんですけどね(笑)

長くなるので追記にポイっ。


*****ちょっぴり未来かもしれない*****


 それが鳴き声だと気付くには時間がかかった。ガラスを思い切り引っかいたような甲高く耳障りな音が鼓膜を絶え間なく刺激する。送られてくる風は激しく、髪や服を遠慮なくかき混ぜていく。

「……っ」

 なぜこんなことに。
 懸命にもっと速くと脳に指令を送るが身体は限界を訴えてくるばかり。がむしゃらに足を動かすがもはやどこが何の筋肉なのか、どこをどう動かしているのか自分でも分からない。ただ前へ。ひたすら前へ。
 一際大きな声が上がる。その声に竦みわずかに背後へ首を巡らせた。本当はそんな時間も惜しくさらに前へ逃げるべきなのだが、相手がどこにいるのかが分からないと余計に恐怖心が煽られる。

 鳥だった。

 あまりにも巨大なそれを単に鳥と称していいのか分からない。毒々しい赤を纏った身に鋭さを併せ持った翼、怒り狂った叫びを上げる嘴に、爛々と奥深くで光る瞳。一般的に知られる可愛らしい鳥ではない。だが、自身にはそれを「鳥」と呼ぶ以外の知識も語彙もない。

「ぅ、わ……!?」

 その鳥が勢いをつけて頭上を過ぎ去り、慌てて頭を下げる。その勢いでバランスを崩して倒れ込んだ。旋回した鳥が再度こちらへ――

(喰われる……!?)


「頭下げてろ!」


 声が響くと同時に何かが勢いよく落ちてきた。落ちてきたソレは鳥の頭めがけて棒状のものを思い切り振るう。鳥の頭がややのけぞる。しかし力が足りなかったのか鳥が倒れるには至らない。
 ソレは、少年だった。茶色がかった髪を揺らし、この場にそぐわない高めの声を張り上げる。

「でっけー! こんなでかいの初めて見た!」
「油断するな。……何か言ってるか?」
「んー、興奮しすぎ。ちょっとよく分かんねーかも」
「仕方ないか……。荒事にはしたくないんだけど、ね」
「何とかなるだろー」

 いつの間にか少年が増えている。こちらもまた小柄で茶髪な少年と同様、棒状のものを持っている。その少年は落ち着いた様子でこちらを振り返った。

「大丈夫ですか?」
「え? あ、ああ……」
「お前なんかやったのか? あいつ、すっげー怒ってるぜ」
「え、と」

 覗き込まれて言葉に詰まる。何かと言われても心当たりがなかった。気付けば追われていたのだ。……気付けば、本当にいつの間にか。

「とりあえず逃げます」

 尋ねたはずの少年はさっくりと質問を切り上げ、「ついてきてください」と声をかけてきた。訳も分からず途方に暮れていると、小柄な少年がぐいと手を引っ張った。

「追ってきてるぞ!」
「!?」

 獲物を取られると思ったのか鳥が狂ったように叫びながら距離を縮めてくる。目の前の少年たちのことは何一つ分からなかったが、そんな中でただ一つ分かることがあるとすれば、このままならば今度こそあの鳥に食べられてしまうということだ。

「春兄、どこまで行くっ?」
「とりあえずさっきのところまで戻る!」
「りょーかいっ。じゃあオレ、そっちに引っ張ってくな!」
「ちょ……大樹、そっちは……っ」

 落ち着きのあった少年の声に焦りが滲み出た。しかし気にした様子もなく大樹と呼ばれた少年は鳥の方に向かって駆けていく。鳥が視界に捉えたのだろう、やや方向が逸れていく。――囮になるつもりだろうか。

「……すいません、少々危ないかもしれませんがついてきてください」
「え?」

 その言葉は申し訳なさそうだった。本当に申し訳なさそうだったのだが――有無を言わせない響きでもあった。


「なあ? おまえ、何怒ってんだよ。どうした? ハラへってんのか?」

 大樹は速度を落とさないまま鳥に向かって声を張り上げている。しかし鳥が答えるはずもなくその距離は徐々に縮まりつつあった。

「むぅ……聞こえてねぇのかな。何かされたのか? ……あ」

 ふいに何かに気付いたような声を上げたとき――唐突に、大樹が姿を消した。

「大樹!」

 春兄と呼ばれていた少年が声を張り上げる。

「春兄、オレ落ちたー! てか落ちてるー!」
「分かってるよ馬鹿!」

 姿が消えたと思ったのは、崖状になっているところから転げ落ちたからだったらしい。

「え、ここ高……」
「すいません!」

 こちらが動揺するのと同時に相手の切羽詰った声が被せられ、さらにはぐっと腕をつかまれ、
 ――気づけば、一緒に落ちていた。

「え……えええええ!?」
「セーガ!」

 思わず目をつぶった瞬間に決して軽くはない衝撃が訪れる。しかし崖下で潰れたにしてはあまりにも軽いに違いない。また早くもあった。

「え……」

 訳も分からず起き上がろうとすると、ふさりと触り心地の良い毛並みに触れる。それは黒く艶やかで、土の硬く冷たい触感とはかけ離れた……

「……!? 大きな犬!?」


「大樹! 大丈夫か!?」
「おう、ダイジョーブ!」
「大丈夫じゃないだろ!」
「聞いたのそっちなのに!?」
「崖になってるの教えただろ!? 何でそっちに行くわけ!?」
「だって覚えてなかったんだよ! それどころじゃなかったし!」
「お前には注意力が足りない!」
「何だよ、気付いたのオレの方なのにー!」

 ……どうやら痴話喧嘩が始まってしまったらしい。
 しかし鳥の鋭い鳴き声が耳に届き、少年二人はパッと言い合いをやめた。

「……セーガ、このまま一度戻ろう」

 当たり前のように宙を飛んでいる大きな犬は、少年の呟きにただ小さなうなずきを返した。


 *


 連れてこられたのは木々の密集した森の中だった。空からは木々が邪魔をして姿が見えることはない。それを認識し、ようやく落ち着きを取り戻すことができた。どっと息をつく。

「あー、ビックリした。でも無事で良かったよな!」
「大樹が変な方向に行かなきゃもっと良かったんだけど」
「セーガで逃げれたし、終わり良ければ何してもいいって言うじゃん」
「何してもいいわけないだろ」

 仏頂面で呟いた少年が、改めてこちらに向き直る。

「……お名前を伺っても構いませんか?」
「え……あ、その」

 言葉が、出てこない。
 黙り込んだ自分に二人は顔を見合わせる。申し訳なくてそんな二人の顔を見ていることもできなかった。
 気まずい空気が流れる中、ふいに明るい声が突き抜ける。

「オレ、日向大樹な!」
「……。僕は日向春樹といいます」

 警戒させないためか、自ら名乗ることにしたらしい。その心遣いは嬉しかった。
 しかし、それでも。自分は答えられないのだ。答えを持ち合わせてなどいないのだ。

「……悪い。その、名前……」
「言えない理由でも……?」
「いや……分からないんだ」
「え?」
「記憶、なくて」

 二人の目がほぼ同時にまん丸になる。

「記憶喪失、ですか」
「多分」
「……あの鳥が怒っていたのは?」
「……さあ。気付いたら追われてた。意味わかんないし、怖いし、喰われそうだしで……あのままだったらやばかったと思う。本当に助かった」
「……」

 呆れたように目を細めた春樹はため息をついた。年下か、よくて同い年であろう彼にそのようなため息をつかれ、何とも居心地が悪くなる。

「お礼なら大樹にどうぞ。声を聞きつけたのはこいつですから」
「声?」

 自分は悲鳴を上げることさえままならなかったのに?
 そう疑問を感じて大樹を見ると、目の合った彼はニッと得意げな笑みを浮かべてみせた。


****とりあえずここまで****


記憶喪失だからと、三人称でも名前が書けなくて、……つらかった(笑

春樹と大樹はパトロール的な何かをしていたんだと思いまぷ。
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