倭鏡伝プチ番外

もそもそとポメラで打ち込んでいる倭鏡伝番外編(予定)。
正直書き終えられるか分からないんで、
ブログにメモ的に残しておきます。

書き終えることができたら、推敲してサイトにも載せるという形でw


というわけで興味のある方がいたら続きからお読みください。
さーてこれから予備校だ!

*****


 放課後になるとやけにテンションが高くなる人種というものがある。

 日向春樹はそれをしみじみと実感しつつ目の前の惨状を遠巻きに見ていた。
 広くもない教室内でクラスメイトの咲夜隼人が箒を振り回している。
 しかもやけに激しい。しかもしかも壇上に乗っている。
 もう何からツッコめば――いや、どこから叱ればいいのか分からない。

 隼人は元から常日頃ハイテンションをかましているタイプだ。
 それが放課後になると輪にかけて高くなる。
 だからといって普段からこんな暴走を――することもあるがそれはさておき――爆走するほど良識がないわけではないはずだった。今日はタイミングが悪かったのだろう。

 というのも長かったテスト期間がようやく終わったのだ。彼だけでなく周りも解放感で浮ついている。
 さらにサービス精神旺盛なのが彼の良くも悪くも特筆できるところで、周りが「何か面白いことやれよ」と煽ったならば、彼はさらりとスマートにそれに対応してしまうのだった。

 ……だからといってこれは調子に乗りすぎだろう。

 春樹はため息をついて教室内を見渡す。
 彼の抑止材となりそうな一人として杉里蛍があげられるが、彼はすでに空手の練習に行ってしまった後だった。
 テスト期間で溜まったストレスを健康的に発散している頃だろう。

 ……仕方ない。

「隼人くん、一応聞くけど何やってるわけ?」
「エアギター?」

 なぜ疑問系なのか。
 思わず疑わしげな目を向けるが、彼は悪びれもなく「楽しければいいじゃないか!」などと無責任なことをのたまった。

「でも今は掃除しないと……」
「Oh,ほとんど終わったろ?」
「……」

 確かにそうなのだけれど。
 ゴミ箱のゴミや使用したバケツの水を捨てに行った人たちが戻ってくればそれで終わりなのだけれど。
 しかし、だからいいという問題でもないと思うのだ。

 春樹がどう言おうか悩んでいると、ふいにバケツの水を捨てに行っていた男子が帰ってきた。
 賑やかな教室内を見て楽しげな様子だとすぐに感づいたのだろう、彼はニヤッと口の端を上げる。
 隼人を注意していた春樹に、それに気付けというのはなんとも酷な話なわけで。

「おーい隼人!」
「What?」
「ピッチャー第一球、投げました!」

 彼は箒を持っていた隼人に向かって思い切り球を――否、雑巾を投げ放った。
 キラリと隼人の眼が光る。
 「春樹クンどいて」とさりげなく注意することを忘れずに――脊髄反射とでも言うべき速さで反応した春樹は自分を褒めてやりたい――素早く構えた。

 睨む。
 とっさに動いたにしてはきれいなフォーム。
 水を絞り切れていなかったのかやや重たげな音と共に箒と接触。

「Hey!」

 軽快なかけ声と同時に振り抜いた。
 飛ぶ雑巾。それは弧を描き――というほど鮮やかなものでもないが――

 びしゃり

 一人の女生徒に被弾した。
 悲しいことに顔面直撃だ。

「……」
「……」

 重力に逆らうことなく、ぼてりと床に落ちる雑巾。それは何とももの寂しげだ。
 クラスがしんと静まり返る中、その静けさにふさわしい佇まいで少女が振り返る。

 怒るか。泣くか。仕方ないなと笑うか、呆れるか。
 みんなが息を呑んだ瞬間、

 ――少女の体はただただゆっくりと傾ぎ、そのまま床に崩れ落ちた。

「きゃああ神田さん! 大丈夫!?」
「どうしたの!?」
「何だ何だ?」

 女性陣からは悲鳴が。男性陣からは戸惑いの声が。
 教室が今までとはまた違った雰囲気で一段と騒がしくなる。

「隼人くん! だから調子に乗っちゃダメだって……!」
「Sorry! だけど今は説教よりすることがあるだろ?」

 言いながら隼人は教壇から飛び降りる。
 春樹はため息をついて共に女生徒の元へ駆け寄った。
 彼の言うことは一理ある。一理あるが、「お前が言うな」と小言を付け加えたくなるのは春樹だけでないだろう。

「神田さん、……神田さん?」

 倒れている女生徒は神田奈緒。

 春樹は彼女とほとんど話したことがない。
 というより彼女が友人と談笑している姿すら見たことがないかもしれなかった。
 だからどう対応していいか若干戸惑ったが、ともかく声をかけてみないことには始まらない。

 身長は春樹より若干低い。
 細身で、言葉は悪いがひ弱そうなイメージの子であった。
 染めたことがないのであろう真っ黒な髪は肩まであり、今雑巾の襲撃を受けたせいかボサボサになっている。

 遠慮がちに肩や頬を軽く叩いてみるが起きる気配はない。
 その頬は真っ白と言ってもいいほどだった。美白というより血色が悪いと言った方が正しい。まるで病人だ。

「頭とか打ったかな」
「見た感じではそんなことなかったと思うけど?」
「だよね……でも起きないし……一応保健室に連れて行った方がいいと思う。僕先生呼んでくるよ」
「Oh,ストップ。直接連れていった方が早いよ」

 軽く言い、隼人は奈緒を抱き上げた。いわゆるお姫様だっこだ。
 心配そうに見ていた女生徒たちから黄色い悲鳴が上がる。

「大丈夫?」
「わぉ。思った以上に軽くてビックリだよ」

 ……ああ、うん、紳士ですね。そうですね。

 特に心配はいらないようだったので軽く流す。
 それから春樹は彼女を保健室に連れていくこと、ゴミ捨てが終わった段階で掃除が終わりであることを改めてクラスメイトに告げた。
 両手が塞がっている隼人を助ける形で、春樹は先導して歩き始める。

「やっぱり紳士といえばお姫様だっこだよね!」
「偏見じゃないかな」


(続)
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